グローバル事例

「一気生産」を掲げるモノづくりのプロ集団キリウ

広報パーソン探訪記

報道チーム中村 雅昭

2014年入社。広報部報道チームで輸送機・建機事業部門、資源・化学品事業部門、財務・経理・リスクマネジメント、アジア大洋州を担当。ゴルフに熱中しているものの、我流に限界を感じ、レッスンを受講しようか迷い中。ベトナムにトレーニーとして駐在していたこともあり、友人たちにベトナム旅行を勧めることに腐心している。

住友商事は今年、創立100周年を迎える。一説には、日本で10年続く企業は約6パーセントで、100年続く企業は極めて少ないと言われているが、住友商事グループには、住友商事よりも長い歴史を誇るモノづくりのプロ集団がいる。その名はキリウ。創業は1906年にさかのぼり、栃木県足利市に本社を構える。住友商事グループの自動車部品事業の中核を担う、鋳造・機械加工の専門サプライヤーだ。

筆者は2019年7月にキリウを訪ねた。冷夏と言われていたのが嘘のような晴れ晴れとした日に、足利工場に足を踏み入れた。

住友商事とキリウの出会い

住友商事がキリウに出資したのは2004年7月。高品質な製品を高効率で製造できる圧倒的な技術力が決め手となった。モノを持たない総合商社が自動車部品製造企業に出資したことは、当時、業界で大きな話題になったそうだ。製造の現場を重視し他社を圧倒する技術力を誇るキリウと、時代を先取りするために事業投資に挑戦し始めていた住友商事。両社の思いが一致し、キリウと住友商事は手を組んだ。

創業当初、キリウは織物準備機械の製造販売などを手掛けており、その後、工作機械の製造を経て、現在は自動車部品の製造事業を行っている。住友商事グループのグローバルネットワークを活用することにより海外展開が加速し、拠点が国内4カ所・海外9カ所に広がったほか、住友商事が世界中のネットワークを駆使し、顧客基盤を広げることで、キリウは生産技術の向上や新製品開発に専念できるようになった。その結果、キリウグループの売上高は15年間でほぼ2倍に増加した。

15年ほどで海外拠点を大幅に増やすことに成功した理由には、キリウの生産設備や工程がグローバル共通であることも挙げられる。主要製品であるブレーキディスク・ドラムの専用加工ラインでは、設備・治具の設計規格を統一することでラインの均一化、均質化を図り、操作性、作業性、保安性を追求している。また、海外拠点を含め、工場での課題を解決した事例を社内で発表し合い、優れた取り組みを表彰する制度を設け、全社の一体感を醸成している。キリウは日々グローバルに成長を続けている。

鉄を溶かし、液状にした後、ブレーキディスクの型に流し込む
キリウは省エネ・省資源といった環境改善活動にも積極的に取り組んでおり、足利工場の入り口には認証取得などの実績が掲げられている

一気生産マインドというモノづくりへの熱い思い

キリウの特徴と言えば、「一気生産」だろう。これは「一度手を付けたら完成まで手掛ける」を意味し、モノの流れを切り口に企画・設計から生産・出荷まで、金型・加工設備の内製も含め、工程内の無駄を徹底排除する効率的な生産システムだ。キリウは製造プロセスを一貫して内製する数少ない企業である。また、独自の設計・開発力を生かした、自動車メーカーに対する業界屈指の提案力もキリウの強みだ。現在、キリウは日本のほぼ全ての乗用車メーカーにブレーキディスク・ブレーキドラムを供給している。

全世界の自動車の10台に1台はキリウ製の部品が使われているという事実にも驚いた。キリウの高い技術力が業界内で評価されており、キリウが現代の自動車社会には欠かせない存在であることを示唆する数字だ。

足利工場には、アナログ的な要素があえて残されていたことも興味深かった。前工程である鋳造と後工程である機械加工において、それぞれモニターで生産状況を確認できるようにしている一方、機械加工の計画生産数はホワイトボードに手書きで記載している。各工程の担当者がホワイトボードを見に来ることで会話が生まれ、コミュニケーションの活性化につながっているという。

キリウが何よりも大事にしているのは「安全」である。製造現場で一番避けなければならないのは労働災害だ。キリウは、工場の一角に「安全道場」(※)というスペースを設けている。新人もベテランも定期的に講習を受講することで、危険に対する感受性を養っている。さらに、経営陣による現場診断も定期的に行っており、機械に問題がないか、ルールに基づいた作業が行われているか自ら確認するようにしている。

※ 安全道場:安全作業の重要性を学び、危険に対する感受性を養うための体感教育を受けることができる施設

ドライバーの安全を守る高品質なキリウ製のブレーキディスク
安全の重要性を忘れないために工場内に設置された「安全道場」

地域に根差し、共に未来をつくる

キリウは地域との関係、地域への貢献を重視している。毎月、自主的に近隣道路の清掃活動、年1回の渡良瀬クリーン活動へ参加しているほか、地域で開催される花火大会や祭りへの協賛も行っている。さらに、2019年から栃木県を本拠地としてB.LEAGUEに所属するプロバスケットボールチーム宇都宮ブレックスのスポンサーにもなり、地域を盛り上げるとともに、地域との定期的な意見交換も欠かさない。

MaaSや自動運転など、自動車業界は100年に一度の大変革を迎えている。「止まる」という機能を担い、人々の安全を確保するブレーキは、車にとって今後も欠かせない部品であり、高い技術力が求められる。100年以上にわたり培ってきたキリウの技術力とモノづくりの経験は大きな武器であり、キリウが車の安全を支え続けていくと信じてやまない。

従業員のコミュニケーション活性化のために実施されているソフトボール大会

(おまけ)キリウなのに足利?

読者の中には、キリウの本社は名前の通り群馬県桐生市にあると思っていたのに、実は栃木県足利市にあるのはどうして?と思った方もいるかと思う。「かつては社名のとおり、群馬県桐生市に本社と工場(工機事業部門)があり、栃木県足利市にはもう一つの工場(部品事業部門)があった。その後、栃木県足利市に本社と工場を一本化したため、現在は『名前はキリウ(桐生)だが、場所は足利』となっている」。

そう教えてくれたのは、入社3年目ながらキリウ本社に出向し、現場で奮闘している当社自動車製造事業第一部の関根勇気。彼を含めて3人が住友商事からキリウに出向しており、彼らの現場に懸ける熱い思いを聞く機会があった。「キリウは地元に根差しながら、グローバルにビジネス展開をしている企業。その営業部の一員として、ビジネスのフロントラインに立てる機会は大変貴重だ。現場からさらなるキリウと住友商事の成長に貢献したい」そう語る関根にこれからも期待したい。


2019年09月掲載

キーワード

  • 輸送機・建機事業
  • 日本

関連する事例

Top