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住商スクラム LIVE REPORTS Vol.1 地球規模のエネルギーのベストミックスを目指して

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強固なパートナーシップが巨大プロジェクト成功のカギ

力強いパートナーの存在が必要

 太陽光、風力、地熱、バイオマス……世界中で開発が進む再生可能エネルギーの中で、とりわけ欧州で開発が急ピッチで進んでいるのが洋上での風力発電である。海上に設置した風力タービンで電力を起こす発電方法には、土地の制約がある陸上風力発電よりもはるかに広大なエリアを利用できる大きなメリットがある。また、海上ならではの強力な風も発電には好条件となる。
 一方、デメリットもある。事業の規模が巨大になるために、多額の資本と、プロジェクトマネジメントの緻密なノウハウが求められる点だ。 「私たちの洋上風力発電事業を成功させるには、資本力とプロジェクトを成功に導く力をもつ強力なパートナーの存在が必要でした」
 2008年以来、ベルギーで3つの洋上風力発電プロジェクトを進めてきた企業、パークウインドのフランソワ・ヴァン・ルーCEOは、そう話す。

パークウインドCEO フランソワ・ヴァン・ルー氏

ブリュッセルのヴリジェ大学卒業後、同大学の研究機関のリサーチャー、銀行のフィナンシャル・アナリスト、企業のIR担当などを経て、2009年「ベルウインド」プロジェクトにCFOとして関わる。11年には同じく「ノースウインド」プロジェクトのCFOに、15年にはパークウインドのCEOに正式に就任した。

巨大なプロジェクトを支える総合力

 資本力とプロジェクトマネジメント力。それに加えて、長期的なパートナーシップを築ける組織力──。それらを備えた会社としてパークウインドが選んだのは、住友商事だった。
 「当社はそれまでも、国内外の陸上風力発電のプロジェクトを成功させてきた実績がありました。しかし、洋上風力発電事業への参画はこれが初めてでした。今後の拡大が期待される市場であるばかりでなく、住友商事グループがもつ財務、経理、法務、グローバルネットワークといった総合力を巨大なプロジェクトの中で遺憾なく発揮することができる。それが事業参画の決め手でした」
 昨年からこの事業に携わる池田真哉はそう説明する。

海外環境エネルギー事業部 池田 真哉

池田真哉は2002年の入社。物流、環境分野の部署などで働いたのち、社内の留学制度を利用して、2年間米国で学んだ。「今やるべきことは、プロジェクト運営のスキルをしっかり蓄えていくことだと思っています。いずれは、マネジャーの立場でプロジェクトを率いていきたいですね」と力強く話す。

違いがあまりにも大きすぎる

 しかし、パークウインドとのパートナーシップを構築するまでの道は、決して平坦なものではなかった。
「お互いの違いがあまりにも大きすぎる。正直、初めはそう感じましたね」
資本参画協議が始まった12年4月から4年が経った今でこそ、ヴァン・ルー氏はそう笑って話すが、当初は両者の溝を超えるのは極めて困難であるように見えたという。では、その「あまりにも大きな違い」とは何だったのだろうか。
「一番の違いは、リスクマネジメントに対する考え方です」と土井久幸は説明する。現在ベルギーに駐在し、パークウインドとのコミュニケーションの前線に立つ住友商事社員のうちの1人だ。
「住友商事は、検討に検討を重ね、あらゆる事態を想定して準備に万全を尽くす会社です。そのために多少の時間がかかることを厭わない。

それが、私たちが長年にわたって築いてきた文化です。しかし、ヨーロッパの会社で、設立間もない若い企業であるパークウインドの皆さんには、その文化をなかなか理解してもらえませんでした。『なぜ、そこまでやるんだ』『決定が遅れるだけだ』──。プロジェクトの初期段階に関わったメンバーは、そんな言葉を何度となく聞かなければなりませんでした」

欧州インフラ事業部門(ベルギー) 土井 久幸

「パートナーとの契約提携の瞬間の喜びを味わえるのがこの仕事の醍醐味」。そう話す土井久幸は、92年入社だ。米国での陸上発電プロジェクトにもかかわってきた。「ベルギーにはビールの種類が700種類あるとも800種類あるとも言われています。駐在中に全銘柄を飲むのが今の目標です」と頬を緩める。

粘り強いコミュニケーションが作り上げた確かな信頼関係

私たちが学ばなければならないことはたくさんある

 もっとも、これは「とても歓迎すべき違い」(ヴァン・ルー氏)でもあった。
 「洋上風力発電所の建設は、当然ながら洋上で進められます。厳しい環境の中で多くの人々が作業を行うわけですから、適切かつ安全な方法で働けるように保証しなければなりません。また、海上で長期にわたって稼働する施設なので、非常に高い品質が求められます。住友商事のプロジェクトのノウハウと、リスクマネジメントの考え方から私たちが学ばなければならないことはたくさんありました」
ヴァン・ルー氏はそう話す。これまで世界中のさまざまなプロジェクトに関わってきたグローバル企業である住友商事と、未来に向けて大きく成長していこうとしているパークウインド。強みも背景も異なるその2社の間で互いに学び合えるような関係を生み出し、パートナーシップを強固にしていくことができるかどうか。それがこのプロジェクトの成否を左右する最大のポイントであった。

結果的に最良といっていい形でパートナーシップを構築できたのは、粘り強いコミュニケーションによるものだった。住友商事のスタッフは、リスクマネジメントの重要性を説き続け、「住商品質」のマネジメントの在り方を伝え、このプロジェクトにかける思いをぶつけた。もちろん、自分たちの主張だけを通そうとしたわけではない。土井は言う。
「こちらの言うことを聞いてもらうためには、相手の言葉にも真剣に耳を傾けなければなりません。自分たちの考え方をローカライズする、つまり現地の人たちに合わせることも重要でした」

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相手を尊重し、決して逃げないこと

 現在、洋上風力発電事業のチームリーダーを務める水無瀬淳。彼は過去に、火力発電事業でサウジアラビアやアラブ首長国連邦に駐在した経験を持つ。水無瀬によれば、異なる文化を持つ人たちとのコミュニケーションの基盤となるのは「相手をリスペクトすること」だという。
 「自分たちが関わる国を好きになって、自分たちのパートナーをリスペクトすること。その上で言うべき事を言うこと。それがコミュニケーションの順番だと私は思っています。相手を尊重する姿勢なくして、こちらのやり方を押し通そうとしても、決してうまくいきません」(水無瀬)

水無瀬の直属の部下である池田もまた、かつて中国に4年間駐在したことがある。彼のコミュニケーションの流儀は「逃げないこと」だ。
「互いに立場が異なるわけですから、問題が起きたり、意見の調整が必要だったりすることは必ずあります。どんな場面に立たされても、決して逃げずに、相手の立場を考えながら誠心誠意対応することが大切です。そういう姿勢を見せることで、相手もこちらを信頼してくれます」

海外環境エネルギー事業部 水無瀬 淳

洋上風力発電事業を日本側でまとめるチームリーダーの水無瀬淳。1994年の入社以降、火力発電事業などに長く携わってきた。「大きなプロジェクトには、職域も国籍も多様な人たちが関わります。それを適切にコーディネートしていく役割が、これからの総合商社には求められると考えています」

最適はお互いの「間」にある

こんなエピソードがある。
住友商事がベルギーの洋上風力発電事業に関わり始めてしばらく経った頃、パークウインドの社員たちとともに現地の日本食レストランでちょっとした会合をもったことがあった。ひとしきり和食に舌鼓を打った後で、最後に住友商事スタッフがみんなでカツ丼を食べることを提案した。プロジェクトの成功、つまり事業で「勝つ」ことを祈願したゲン担ぎであるとパークウインドの社員たちには説明した。するとパークウインドのメンバーは、すでに腹は十分に満たされているにも関わらず、嫌な顔一つせず、その日本的風習に付き合って一緒にカツ丼を食べてくれたという。
「ベルギーでも浪花節は通用するんですよ。そのためには、時間をかけて根気強く交流を重ねることが必要です。双方の努力によって信頼関係が生まれたと実感できたときの喜びは言葉にできませんね」(土井)
「答えはいつもお互いの“間”にある」──。ヴァン・ルー氏はそう言う。
「私たちも住友商事の皆さんも、相手を理解するためにかなりの力を注いできました。両社が歩み寄ることで、それぞれの“間”に最適な場所を発見した。そんな風に感じています。私たちは住友商事のおかげでプロジェクトのレベルを高めることができたし、私たちからは若い会社ならではの情熱や志を住友商事側に伝えることができました。現在、私たちのパートナーシップは、たいへん効率的に機能しています」

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風に乗って事業を未来へ運ぶ

ノウハウを蓄え、事業を拡大していく">

 現在進行している3つの洋上風力発電プロジェクト「ベルウインド」「ノースウインド」「ノーベルウインド」のうち、最初のプロジェクトであったベルウインドは、住友商事が参画した時点ですでに操業のフェーズに入っており、2つめのノースウインドは、開発の段階を終え、建設のフェーズを迎えていた。一方、17年中の稼働を目指している3つめのノーベルウインドは、洋上風力発電の開発、建設、操業の全てのフェーズを住友商事が経験する初めてのプロジェクトとなる。
 今後、これら3つのプロジェクトを通じて、フェーズごとのノウハウを蓄え、英国、ドイツ、オランダなどの欧州各国、さらにはアジアへと事業を拡大していくこと。それが住友商事の洋上風力発電ビジネスのビジョンだ。
 「欧州での事業はパークウインドにリードしてもらい、アジアの市場は我々が先導していく。そのような形で現在のパートナーシップを生かしていくことが理想です」(水無瀬)

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全世界を視野に入れたエネルギー事業戦略

 さらにその先にあるのは、「地球規模のエネルギーのベストミックス」を目指すという壮大なビジョンである。
 「当社は、全世界でエネルギー事業に関わっています。その中には石炭やガスなどの化石燃料を使った発電事業もあります。今後、地球全体のCO2の排出総量を抑制するには、再生可能エネルギー事業を拡大していく必要があります。再生可能エネルギーのみで全世界の人々の生活を支えていくことは無理でも、その割合は増やしていかなければなりません。そのために、当社のエネルギー事業全体の15パーセントから20パーセントを再生可能エネルギーにしていくこと。それが私たちが描いているイメージです」
 水無瀬はそう語る。グローバルなビジネスネットワークをもつ総合商社のみが描けるビジョン──。そう言っていいだろう。

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洋上風力発電市場には「風」が吹いている

事業投資のプロジェクトが常に成功するわけではない。過去には、苦労してプロジェクトのスタート直前までこぎ着けたにも関わらず、リーマンショックの影響で頓挫してしまった中東での発電プロジェクトもあった。水無瀬は振り返る。
「あれほど悔しい思いをしたことはありませんでしたね。あの時の悔しい思いが新たな案件に取り組む力になっていると思います」
中東で味わったその悔しさは、ベルギーで喜びへと変わった。変えたのはパートナーシップの力だ。
「一層のパートナーシップの発展を目指したい。私たちの未来は明るい」とヴァン・ルー氏は瞳を輝かせる。欧州における洋上風力発電事業は着実に成長している。今後、拡大の一途をたどるだろう。洋上風力発電市場には、文字通り「風が吹いている」のだ、と。
 その「風」に乗って、この事業をどこまで遠くまで運んでいけるか。住友商事の挑戦はこれからも続く。

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「スクラム」の力で、未来へパートナーシップへの熱い思いを込めた贈り物

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