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インタビュー 重要社会課題 | 地域社会・経済の発展

エチオピア総合通信事業

通信インフラの構築と付加価値サービスを通じて
エチオピアの未来を支える

モバイル通信サービスは、今や電力や水道と同じように、人々の暮らしに欠かすことのできない重要な社会インフラとなりつつあるが、世界にはいまだ通信インフラの整備が遅れ、携帯端末の普及が十分に進んでいない地域も存在する。その一つが、アフリカ・エチオピアだ。同国は、通信サービス普及の遅れが今後の経済成長の足かせとなっており、教育格差、男女格差などの社会課題を解決していく上でも障壁になっている。住友商事は、世界のさまざまな地域で通信サービスをゼロから立ち上げてきたノウハウを活かし、パートナーとともに、いまだ黎明期にあるエチオピアの通信サービス市場に新規参入。同国の中長期的な経済発展と人々のより良い暮らしの実現に貢献するため、豊富な経験と情熱を持った社員たちが、さらなる通信エリアの拡大と多様な付加価値サービスの提供に挑む姿を紹介する。

Interviewee

副島 ゆかり

スマートインフラ事業第二部

副島 ゆかり

2008年入社。2011年より通信事業部(当時)に所属し、現在に至るまで新興国の通信事業投資に携わっている。2013年4月からは2年間モンゴルに駐在、出資先の現地携帯キャリアに出向し、経営企画・マーケティングを担当。2022年1月からエチオピア総合通信事業及びVodafone社との連携を担当し、現地事業会社管理に携わっている。

Why

通信インフラ整備の遅れが、経済成長の足かせに

エチオピアは、アフリカ大陸第2位となる人口約1.2億人を擁する中核国です。年齢中位数約19歳と若年人口も多く、近年はGDPの年間成長率6%〜10%という高い経済成長を続けてきました。その一方で、人口の約80%が農業に従事しており、近年の大規模干ばつや急速な人口増加、低賃金などによって、いまだ世界の最貧困国の一つとなっています。
そんな同国の携帯電話普及率は50%程度にとどまっており、先進国だけでなく多くの新興国が普及率100%超(国民1人当たり1台以上)に達しているのに比べ、大きく後れを取っています。
こうした通信インフラ整備の遅れによる国際的なデジタルデバイド(情報格差)の拡大は、今後、同国が経済成長を果たし、社会を発展させていく上で大きな足かせとなります。そこでエチオピア政府は、デジタル化による雇用拡大や貧困解消など持続可能な経済成長の実現を目的とした経済政策「Digital Ethiopia 2025」を策定し、その一環として2019年より通信市場の自由化に踏み切りました。

What&How

世界の有力プレイヤーと戦略的パートナーシップを組み、ゼロから新しい通信サービスを立ち上げる

一社独占が続いてきたエチオピアの携帯電話市場では、市場競争が存在しないために、技術革新やエリア拡大、サービス改善等へのインセンティブが働かず、携帯電話の普及が伸び悩む要因となっていました。
この状況を打開するべく、エチオピア政府は通信事業の自由化を決定し、新規参入の競争入札を実施。住友商事は、英国に本社を置くVodafone Group Plc社、そのグループ会社であるケニアのSafaricom Plc社、南アフリカのVodacom Group Ltd社、さらに英国政府系投資会社British International Investment社とのコンソーシアムでこれを落札し、エチオピア携帯電話市場への新規参入を果たしました。

住友商事は、総合通信事業において約30年にわたる経験を有しています。1995年、それまで携帯電話サービスが存在しなかったモンゴルにおける事業の立ち上げを皮切りに、その後もロシアやミャンマーなどでの携帯電話サービスを展開する等、多くのプロジェクトを推進。これらの事業を通じて、通信分野の専門人材や、国内外の有力企業とのビジネスネットワーク、現地政府との交渉、リスクマネジメント等を含めたプロジェクトマネジメント能力など、多くの知見を獲得してきました。今回のエチオピアにおいても、アフリカ8カ国を含む世界各地で通信事業を展開するVodafoneグループと、海外通信事業をゼロから立ち上げてきた経験を持つ住友商事とのパートナーシップが、プロジェクトの大きな推進力となっています。

エチオピア総合通信事業の推進体制と出資比率

内戦激化を乗り越えて主要都市でのサービスを開始し、2030年にはエチオピア全土でのサービス展開を目指す

総合通信事業ライセンスを獲得したコンソーシアムは、2021年7月、現地事業会社 Safaricom Telecommunications Ethiopia PLCを設立し、事業化に着手しました。その直後、内戦激化によって操業準備が想定通りに進まない局面もありましたが、2022年10月には首都アディスアベバをはじめ主要11都市でサービス提供を開始しました。その後もサービスエリアを広げ、2023年4月までにエリアを全国主要22都市に拡大。今後は小都市・主要道路へのエリア拡大と販売拠点の拡大を進め、2030年を目標にエチオピアのほぼ全ての人々の携帯電話ネットワークへのアクセスを可能にする計画です。
また、本事業の展開に伴って、直接・間接的な雇用創出にも貢献しており、2023年3月時点ですでに5,000人超の雇用が生まれています。

ローンチセレモニーでのSIM販売

エチオピア社会の経済活動を支える金融サービスを提供

このエチオピア総合通信事業では、通信ネットワークを活用したさまざまな付加価値サービスの提供も目指しています。その最初のステップとして、2023年度中にモバイルマネーサービスM-PESAの提供を開始します。パートナーであるSafaricom Plc社が、2007年3月にケニアで開始したM-PESAは、携帯電話を使って相手の携帯電話番号宛にモバイルマネーを送金できるサービスです。店舗でのモバイル決済に使用できるだけでなく、現金が必要なら最寄りの店舗やキオスク等でお金を受け取ることもできます。銀行口座がなくとも携帯の操作だけで金融取引が可能になる利便性の高さから、銀行口座を持たない人が多いケニアで急速に普及が進み、近年では他のアフリカ諸国や東欧等でも利用者が増えています。
エチオピアもいまだ銀行口座を持たない人が大半のため、M-PESAの導入・普及は、人々の暮らしや経済活動を大きく変える社会的なインパクトがあると考えます。

 

日々の買い物や公共料金などの支払いをキャッシュレス化できるのはもちろん、給与の振込・受け取りや、都市部で働く人が地方の家族に仕送りする際等の安全・確実な送金手段となるはずです。また、将来的にはM-PESAを用いて個人や中小企業向けの少額ローンなどの金融サービスを提供することで、事業拡大や起業を促進し、現地の経済活性化、雇用拡大にも貢献していくことを目指します。
さらに今後、ネットワーク基盤を活用してオンライン教育やコンテンツ配信等のサービスを事業化する場合にも手軽で確実な課金・支払い手段が必要であり、M-PESAの展開は将来の付加価値サービスの実現に向けた基盤整備にもなります。
住友商事には、教育やエンターテインメント、農業、ヘルスケアなどさまざまな実業を展開する部門が社内に存在する強みがあり、さらに、この基盤の活用機会を社外へと広げていくネットワークも有しています。こうした総合商社としてのシナジーも活かしつつ、エチオピアの基盤整備や、それをもとにした発展に役立つ多彩な付加価値サービスを提供し、経済発展と人材育成に寄与しながら、Enriching lives and the worldを追求していきます。

Going forward

エチオピアの全ての人にネットワークアクセスを

モバイル通信サービスの立ち上げでは、ネットワーク建設が大きな比重を占めます。ただし、海外事業では治安の影響を受けたり、土地使用の認可がなかなか出なかったりと、その国や地域ならではの問題が発生します。その都度、計画を練り直したり、粘り強く交渉を続けたりすることで一つひとつ課題をクリアしていかなければなりません。そんな時、心強かったのはモンゴルやミャンマーなどの案件で経験を積んだ人が社内に多数在籍していることです。
私自身も以前、モンゴルに駐在し、現地の携帯電話会社の運営に携わった経験が役立っています。
数ある商社のビジネスの中でも、通信事業は人々の暮らしにダイレクトに関わる仕事です。私も実際にエチオピアに行きましたが、特に地方ではまだまだ携帯を持っていない人が多く、通信以外のインフラも整備途上です。そんな現地の暮らしを肌で感じ、私たちが提供する通信インフラや金融サービスなどを通じて、この状況を変えたいと決意を新たにしました。
近い将来、エチオピアのどこに行っても誰もがスマホを使ってSNSでつながったり、ショッピングを楽しんだりしている——そんな様子をこの目で見ることができるように、これからもネットワーク拡大や付加価値サービスの提供にチャレンジしていきます。

Safaricom Ethiopia ESGマネージャーからのメッセージ

「Transforming the Lives of our society for a Digital Future」を企業理念とする会社の一員であることは非常にエキサイティングです。サファリコムエチオピアのESGプログラムは、私たちの全ての事業において、サプライヤーやベンダー、そして事業を行う地域社会との協力を一気通貫で確実に実施するための確固たるポリシーと手順に支えられています。
ESGの責任者として、直接・間接の雇用機会、ビジネス機会、ネットワークアクセシビリティ、高速インターネット接続などを通じて私たちの会社が社会にもたらした変化を目の当たりにすることは非常に励みになります。そして、モバイルマネーの導入は多くのエチオピア人に必要とされる金融とデジタルインクルージョンをもたらし、生活の向上に大いに寄与するでしょう。
サファリコムエチオピアは「Transforming the Lives of our society for a Digital Future」の企業理念の元、既に5,321人の人々に直接・間接の雇用機会を提供しています。(うち150人は新卒であり、その半数以上は女性と農村部出身者です。)
エチオピア全土にサービスを届けるために活動を更に拡大しつつ、毎年15,000人の女性が参加するWomen First 5Kランや、毎年全国で実施される植樹などの環境保護プロジェクトなど、人気のあるコミュニティイベントにも注目し、支援をしています。

Safaricom Ethiopia ESG Manager

Tewodros Getachew

Tewodros Getachew