生物多様性


基本的な考え方

住友商事グループの事業活動は、地球上の多様な生物とそれらの繋がりにより生み出される生物多様性がもたらす恵みに大きく依存しています。従って、当社グループの環境方針で明示しているとおり、自然生態系などの環境保全ならびに生物多様性の維持・保全に十分配慮することは当社グループにとって重要な課題であると認識しています。生物多様性に重大な影響を与え得る事業活動に関して、どのように生物多様性に依存しているのか、また、どのような影響を与えているのかを把握した上で、生態系への影響を最小化し、回復にも寄与することに努めます。新規事業の審査過程や既存事業のモニタリングにおいても、生態系への影響を含む社会・環境に関するリスクの評価や管理・改善状況の確認を行っています。

生物多様性に関するイニシアチブへの参画についてはこちらをご覧ください。

イニシアチブへの参画

取り組み

当社では、生物多様性に重大な影響を与え得る事業案件の取り進めにあたり、当該事業活動が自然生態系ならびに生物多様性に与える影響を把握し、影響軽減に努めています。その中でも、特に多くの固有の生き物たちが息づくマダガスカル島は群を抜いた多様性を誇る地域です。Business and Biodiversity Offsets Program(BBOP:ビジネスと生物多様性オフセットプログラム)は、企業や政府、NGOを含む専門家などが参画し、生物多様性オフセットに関する国際基準を作成しようというイニシアチブです。BBOPは、生物多様性条約においても参照されるなど、生物多様性オフセットに関する国際基準となりつつあり、当社は日本企業として、マダガスカルのアンバトビー・プロジェクトを通じて参加しています。

マダガスカルの持続可能な発展に貢献するアンバトビー・プロジェクト

BBOPが日本企業と協力して生物多様性オフセットを実施した事例として、当社が資本参加するマダガスカル・アンバトビーのニッケル鉱山の開発事業があります。ニッケル、コバルトなどの供給拡大に向けて、2007年から建設を進めてきた世界最大級の鉱山開発事業。それがマダガスカル共和国の「アンバトビー・プロジェクト」です。

アンバトビー・プロジェクトは、採掘場や精錬工場、パイプラインなどの多くの施設を新たに建設・運営するため、周辺の環境に与える影響も少なくありません。特にマダガスカルには、1,000種もの希少動物が生息する世界的にも貴重な自然環境が残されています。そのため、アンバトビー・プロジェクトでは、こうした自然環境に対する十分な配慮のもとに開発・運営が進められています。プロジェクトの計画・実行に際しては、マダガスカルの国内法の遵守はもちろん「世界銀行セーフガード・ポリシー」をはじめ「国際金融公社(IFC)パフォーマンス・スタンダード」 「世界保健機構(WHO)基準」「赤道原則」など、さまざまなガイドラインに準拠した環境マネジメントを実施しています。

マダカスカルにのみ生息する希少種シファカ

プロジェクトでは、これらの各種基準を遵守した上で、生物多様性の維持をはじめとする徹底した環境保全に取り組んでいます。例えば、鉱区の開発にあたっては、約1,600haの鉱山サイトの周辺に、生息動物の保全先としてバッファーゾーン(緩衝地帯)を設けました。鉱山開発のために木を伐採した際には、切り倒した木をしばらく放置するなどして、樹木に棲み着いた生物がバッファーゾーンに移動できるよう配慮しています。さらに国際環境NGOなどと共同で実施した生態調査の結果、保護が必要と判断された絶滅危惧種などについては、保護区内に移植したり、養魚システムで飼育したりするなど、さまざまなプログラムを実施して生態系への負荷低減を図っています。また、パイプラインの建設開始後、建設予定ルート上に希少動物の生息地が発見されたことなどを受け、これらを迂回するために合計24カ所のルート変更を行いました。さらに、”No Net Loss, Net Gain”のコンセプトのもと、大規模な「生物多様性オフセットプログラム」を推進しています。これは開発による生態系への影響を、別の生態系を復元・創造するなどし、緩和しようというアプローチであり、具体的には開発地域に類似した生態系を持つアンケラナ地区で森林6,800haの保全を行っているほか、採掘場近隣エリアの保全やパイプライン埋設後の再植林、閉山後に向けた採掘場の再植林なども含め、4カ所の保全エリアで、インパクトを受けたエリア面積の約9倍の総面積(14,000ha以上)の保全によりNet Lossをオフセットする計画です。

アンバトビー・プロジェクトの環境・CSR活動についての紹介資料はこちら(PDF/5.5MB)

(参考)世界最大規模のニッケル生産事業「アンバトビー・プロジェクト」

バードフレンドリー®コーヒー事業

当社グループは、生物多様性に配慮し、農家の安定収入にもつながる取り組みとして、2004年からバードフレンドリー®認証コーヒー(以下、BF®認証コーヒー)の輸入・販売を手掛け、2014年度からは住商フーズにてBF®認証コーヒーを取り扱っています。BF®認証コーヒーは、自然林と同様のシェード(木陰)を保ちながら栽培することで、環境保全やそこで羽を休める渡り鳥の保護につながる取り組みです。米国スミソニアン渡り鳥センターがその認証基準を設定し、現在、全世界で12カ国(※1)53農園・農協(2022年7月現在)が認証を受け、収益の一部は、同センターの渡り鳥の研究・調査・保護活動に使われています。

本事業は、2019年、国際自然保護連合日本委員会が認定する「国連生物多様性の10年日本委員会(※2)(UNDB-J)認定連携事業」に認定されました。UNDB-Jの認定連携事業になったということは、生物多様性保全活動として重要な活動であり、また、「愛知目標(※3)」の達成に向けて成果を上げてきた活動であることを意味します。今後も本事業を通して、世界中の渡り鳥保護・生態系保護に貢献していきます。

  1. 12カ国:エチオピア、ペルー、エルサルバドル、コロンビア、グアテマラ、ニカラグア、ボリビア、ホンジュラス、インド、タイ、メキシコ、ベネズエラ
  2. 国内のあらゆるセクターの参画と連携を促進し、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する取り組みを推進するために2011年9月に設立された委員会
  3. 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された、生物多様性保全のための新たな世界目標

風力発電事業におけるバードストライク対策

南アフリカEastern Cape地方の山間部で約130km2の土地を利用して行っているDorper風力発電事業では、付近に生息する鳥やコウモリなどの飛翔生物が風車に衝突する事故(バードストライク)の対策に取り組んでいます。

風車は放牧地に建設されており、家畜などの死骸に鳥が集まることがバードストライクの原因であるため、発電所内の動物の死骸処理を徹底すると共に、絶滅危惧種と思われる鳥類が風車付近を迂回していないかの目視確認、発見した場合の風車の非常停止通知の発信などを地元住民を雇用して行っており、野生生物保全と風力発電事業の両立を目指しています。

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