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CSRの取り組みに対する第三者意見

髙橋 陽子氏 公益社団法人 日本フィランソロピー協会 理事長
公益社団法人
日本フィランソロピー協会
理事長
髙橋 陽子氏
プロフィール
 高校教師を経て、1985年に上智大学カウンセリング研究所専門カウンセラー養成課程修了、専門カウンセラーの認定を受ける。1985年〜1991年、関東学院中学・高校の心理カウンセラーとして、生徒・教師・父母のカウンセリングに従事。1991年に日本フィランソロピー協会入職。常務理事・事務局長を経て2001年より理事長。
 主に、企業の社会貢献を中心としたCSRの推進に従事。NPOや行政との協働事業の提案や、各セクター間の橋渡しを行い、「民間の果たす公益」の促進に寄与することを目指している。主な編・著書は『フィランソロピー入門』、『社会貢献へようこそ』など。
1.「アニュアルレポート」と「社会と環境に関するレポート」の統合の意義

2013年度のレポートの大きな特徴は、CSRの取り組みを報告する従来の「社会と環境に関するレポート」を「アニュアルレポート」に統合して発行したことである。企業の現状と方向性の全体像を伝えるものとして統合レポートは重要な媒体である。また、作成プロセスでの腐心や議論がさらに重要な意味を持つと思う。セグメントごとに、「事業活動を通じたCSRへの取り組み」が掲載されており、事業遂行においてCSR的観点を入れながら、その実行に注力しておられることを評価したい。ただ、初年度ということもあり、まだまだ結合というレベルを脱しきれていない。「住友の事業精神」を具現化するための真なる統合に向けて、自由闊達な議論や創発的な実験を経て、より進化したレポートになることを期待したい。

2. 水資源問題への包括的な取り組みを期待

持続可能な社会の実現に向けて、環境保全におけるグローバル企業に対する期待はますます大きくなってきているが、社員の意識向上に向けた研修の積極的な開催などは、風土づくりに大いに役立っていると思う。そうした積み重ねが、環境マネジメント・環境会計に関して一定の成果を上げることにつながっているのではないだろうか。
水資源問題は、世界的な重要課題になっており、水ビジネスを積極的に展開しているからこそ、地域貢献としての活動も期待したい。両面からの支援が、社会の課題解決への包括的な貢献につながると思う。

3. 社会に対する取り組みへの期待

「人材は経営の最重要リソース」という指針のもとに、多様な側面からの記述がなされていて、理解促進に役立っている。
社会貢献活動に関しては、グローバル企業らしく、世界各地での多彩な取り組みが伝わり頼もしい。また、参加者・受益者の声や写真などの掲載は温もりや躍動感が伝わり興味深い。ただ、総花的な感は否めないので、人材育成・環境保全を核に、企業市民としての取り組みも再定義し、ジャンル別に整理してみたらどうだろう。その過程で、事業や地域の特性などとの関連性が浮き彫りになり、次のステップへの道筋が掴めると思う。
東日本大震災の復興支援は、人材育成・人道支援・産業復興支援という柱を明確に打ち出しており、企業への期待と信頼感が増す。こうした気概ある支援を参考に、各地での日常的な支援に広げてほしい。
本レポート発行を足掛かりに、「住友の事業精神」を基点として、より包括的に高いレベルのCSR経営を目指していかれることを期待している。

 

第三者意見をいただいて

「アニュアルレポート2013」の発行にあたり、髙橋様には貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます。
当社は、2012年度まで「社会と環境に関するレポート」を発行してきましたが、2013年度より「アニュアルレポート」におけるCSRの取り組みに関する情報を拡充する形で両レポートを統合いたしました。ご指摘いただきました通り、まずは両レポートを一本化することから着手したものであり、統合報告に関する国際的フレームワーク策定の動きをフォローしつつ、2014年度以降、一層の質の向上を目指したいと考えています。

「次世代人材の育成支援」と「内外地域社会への貢献」を軸に推進している社会貢献活動につきましては、今後は「次世代人材育成」に一層注力していきたいと考えています。現在、「住友商事奨学金」と「住友商事 東日本再生ユースチャレンジ・プログラム」の一層の拡充を図っており、本レポートを通じて、取り組みの現状をご報告しています。当社グループは世界各地において様々な社会貢献活動を展開していますので、髙橋様からいただいたご助言を踏まえ、活動内容をより分かりやすく整理し、「事業や地域の特性などとの関連性」が浮き彫りになるよう、報告の仕方を工夫していきたいと思います。

特筆いただいた水資源問題につきましては、当社グループの水ビジネスをご評価いただき、ありがとうございます。当社も水資源問題を重要な社会的課題として認識しております。グローバルな企業グループとして、事業活動を通じて課題解決に向けて取り組むことが基本ですが、社会貢献活動を通じた支援につきましても、事業活動の場で接するステークホルダーの方々との対話を通じて、機会を捉えていきたいと考えています。

CSR委員長
取締役 専務執行役員
コーポレート・コーディネーショングループ長
阿部 康行