住友商事グループでは、「経営理念」や「行動指針」の理解と実践を通じて、中長期にわたって新たな価値を創造し続け、広く社会に貢献できる人材を戦略的・計画的に確保・育成・活用するための人事施策に、積極的に取り組んでいます。
当社グループが変化の時代を勝ち抜き、持続的に成長していくうえで、グローバル展開に対応する人材の確保・育成・活用は最重要テーマです。当社グループの最大の財産である人材が、「経営理念」と「行動指針」に基づいて、各部門の事業戦略に沿った形で能力を最大限に発揮するにはどうすべきか、これが当社グループの問題意識です。
そこで、当社グループでは、全社を挙げた新入社員の指導・育成、「経営理念」の源流である「住友の事業精神」の浸透、ローテーションを中心としたOJTと事業特性に応じたOFF-JTの組み合わせによる人材育成に、継続的に取り組んでいます。
中期経営計画“Be the Best, Be the One 2014”では、2019年度の創立100周年に向けて、当社グループの目指す姿の基本方針のもと、現場での多様な経験を重視した人材育成を強化するとともに、グローバルベースの人材育成・活用を促進します。
当社が2019年度の創立100周年に向けた目指す姿を実現するには、人材の育成が必要不可欠です。
当社では、次の100年の礎を築くために「求められる人材像」について、資質・行動・能力という切り口から、以下の3要素を掲げています。
これらの人材像は、当社グループの「経営理念」や「行動指針」に謳われている価値観をベースに、全社員が共有・実践すべき9項目の「SC VALUES」を踏まえたものです。
信用・確実 | 法と規則を守り、高潔な倫理を保持する。 |
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総合力 | 組織に壁をつくらず、常に全社的視野をもって行動する。 |
ビジョン | 明確なビジョンを掲げ、それをメンバーに伝え共有する。 |
変革マインド | 多様な価値観と行動様式を受容し、変化をチャンスと捉え行動する。 |
コミットメント・自責 | 組織目標に向かって、責任をもって主体的に行動する。 |
情熱 | 情熱・自信をもって行動し、メンバーに活力を与える。 |
スピード | 迅速に決断し、行動する。 |
人材開発 | メンバーの能力開発を最大限に支援する。 |
プロフェッショナル | 高度な専門性・スキルを有する。 |
「SC VALUES」の実践を通して、明確なビジョンと強いコミットメントのもと、各階層でリーダーシップを発揮する人材、そしてプロフェッショナルとして幅広い知識と高度な専門性を有し、高い成果を生み出すことのできる自責型の人材が求められています。
グローバルにビジネスを展開する当社では、世界中で活躍できる資質と意欲を持った人材を求めています。そこで、性別、学歴や国籍などで選考方法を分けることなく、応募者の適性・能力のみを基準とし、基本的人権を尊重した差別のない公正な採用活動を基本方針としています。
また、新卒採用のみならず、キャリア採用を人事計画における戦略的採用と位置付け、即戦力人材の採用を継続的に行っています。さらに、障がい者の雇用促進にも積極的に取り組み、2013年4月1日現在の障がい者雇用率は2.03%と法定雇用率(2.00%)を上回っています。
当社では、2010年度より「人材育成促進ファンド」を設置し、海外研修生(海外トレーニー・海外語学研修生・海外留学生)制度及び海外エグゼクティブプログラムヘの派遣を通して各部門・本部の戦略的・計画的人材育成をサポートしています。
また、2013年度より新たに「グローバルインターンシップ」を導入しました。これにより、海外、とりわけこれまで派遣数の少なかった新興国でのビジネス経験を通したグローバルマインドセットの醸成と、特殊語学の素養がある人材の育成を目指します。
当社は、奨学金の支給を通じて、開発途上にあるアジア各国の将来を担う次世代人材の育成を支援しています。
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当社は、商事活動50周年にあたる1996年に、その記念事業の一つとして「住友商事奨学金」を創設しました。アジア各国の発展を担う次世代人材の育成をお手伝いしたい、という思いでスタートした本奨学金は、国や地域、大学側のニーズに応えながら、段階的に対象地域及び対象大学を拡大してきました。2013年の奨学生数は10ヵ国41大学の約1,000名で、1996年からの累計は延べ約1万3千名に及び、奨学金を活用して学業を終えた卒業生は各国の様々な分野で活躍しています。本奨学金の運営は、対象となる各国に所在する当社の現地拠点(海外法人・駐在員事務所)との緊密な連携のもとで行っており、グローバルな拠点網を有する当社ならではの取り組みです。今後もそれぞれの国・地域の特性に合わせて、制度の進化を図りながら活動を続けていきます。
私は、偉人が偉大な国をつくる、そして偉人をつくるのは教育だと思っています。住友商事奨学金のおかげで、私は大学に進み、世の中を見る視野が広がりました。タイの遠隔地で行う大学のボランティアキャンプに参加したとき、多くの子どもたちが経済的な理由で必要な教育を受けていないことを知りました。
力の及ぶ限り困っている人々を助けることに自身を捧げ、私が住友商事から機会をいただいたのと同様に、彼らにも夢を実現する機会が与えられることを願っています。
日本語学科に入学したことは、私の人生にとって非常に良い選択だったと思います。日本語の勉強を通じて異文化を初めて学び、その中から日中文化の共通点や相違点、そして自分という存在がよりはっきり見えてきました。
今回いただいた奨学金は、今までの努力が認められたものであり、大きな励みとなりました。期待に応えることができるよう、今後さらに頑張り、社会に必要な人材となり、日中友好のためにも微力ながら尽くしたいと考えています。
当社グループの役員が政府関係者と面会した際に、「在学中に、住友商事奨学金の支給を受けていたので、住友商事の社名には大変強い思い入れがあり、感謝している」といわれたそうです。当社の奨学金を受けた方が社会で活躍されていることを知り、奨学金が「活きている」と実感しました。
住友商事奨学金は家族の経済的負担を減らすだけでなく、努力が世間に認められた学生たちの誇りにもなります。彼・彼女らが日本文化や日本の精神に興味を持ち、日越友好のために貢献したいと願っていると聞き、非常に励まされました。この奨学金が、ベトナムの将来を担う学生たちにとってさらに意義のあるものになるよう、ベストを尽くしたいと思います。
バングラデシュのUniversity of Dhakaは、1997年以降、160名の優秀な学生が住友商事から奨学金の支給を受けており、感謝申し上げます。学生のうちで最も評価が高く、住友商事奨学金の奨学生に選ばれることは、学生にとって大変名誉なことであり、彼・彼女らが学業に専念し、より高い成果をあげるための励みになっています。バングラデシュの歴史ある大学として、我々は住友商事の社会貢献プログラムの一翼を担うことを誇りに思います。奨学生が住友商事と日本について理解を深めることで、2国間の結束がさらに強まることを心から望みます。将来、彼・彼女らがそれぞれのフィールドでわが国のリーダーとなり、アジア地域の発展に尽くし、住友商事との関係がいつまでも続くことを願っています。
モンゴルでは、2013年4月に、National University of MongoliaとMongolian University of Science and Technologyの計50名へ奨学金を支給しました。授与式に出席いただいた学長からは、「日本からモンゴルへの様々な支援の中で、このような人材育成支援も非常にありがたい」と、感謝の意が述べられました。また、学生代表からの挨拶では、「我々学生を支援していただくとともに、国の発展につながるサポートであることに感謝します」との、力強いメッセージがありました。
奨学金授与式は、大学主催・当社主催と形は様々ですが、毎年各地で実施され、学生たちとの交流の機会となっています。当社のグローバルな事業展開を紹介し、世界に目を向けてもらい、日本に対する理解を深めてもらえるように努めています。目を輝かせている学生の様子に触れることは、各国拠点の現地採用社員のモチベーションの向上にもつながっています。
中国では、奨学金の運営をきっかけに、中国住友商事のCSR担当者の発案による短期の職場体験プログラムを実施しています。広州住友商事の職場体験プログラムでは、2012年度に大学3・4年生32名が参加。講師は全て社員が務め、企業のIT、物流、税務、人事の講義、リスクマネジメントの演習、それらを活かした貿易実務のケーススタディ、さらにはグループ会社の現場訪問など、3日間の充実したプログラムは学生たちに大好評でした。学生たちは、専門分野の異なる仲間とお互いに刺激し合い、視野を広げています。「進路を考えるうえで参考になる」という学生からの感想もあり、今後は対象を2年生に広げることも検討しています。
東日本大震災被災地の地域再生と、被災者の生活再建のために活動する次世代人材を支援する「住友商事 東日本再生ユースチャレンジ・プログラム」は、当社の方針である「息の長い復興支援」の一環として2012年度に開始した、5年間にわたる取り組みです。
東日本大震災から2年余りが経過しました。時間の経過とともに震災の記憶が風化していくことが懸念されていますが、被災地では依然多くの人々が復興支援活動に取り組んでいます。
当社は、震災発生直後から「息の長い復興支援」を基本方針に掲げ、義援金・緊急支援物資の提供などに始まり、当社社員を被災地に派遣する震災復興ボランティアプログラムなど、その時々のニーズに沿った形で被災地支援を行ってきました。そして、2012年度からは、当社独自の5年間にわたる復興支援策として、ユース世代*の被災地復興支援活動を応援し、被災地の復興を進め次世代人材を育成する「住友商事 東日本再生ユースチャレンジ・プログラム」に取り組んでいます。
このプログラムは、ユースによる被災地の地域再生及び被災者の生活再建を目指した活動や研究を支援する「活動・研究助成」と、被災地で活動するNPO等でのユースの長期インターンシップを支援する「インターンシップ奨励プログラム」の2つの事業で構成されています。
「活動・研究助成」では、2012年度に34団体の活動を助成しました。2013年度は48団体を助成していますが、単に資金援助を行うだけでなく、年度の中間で全団体による中間活動報告会及び有識者を交えたシンポジウム「住友商事 ユースチャレンジ・フォーラム」を開催しています。このフォーラムは、各団体がそれぞれの活動内容を広く発信し、お互いに共有することで、今後の活動に活かせる新たなヒントを得るだけでなく、団体間のネットワークを形成する機会ともなっています。
一方、「インターンシップ奨励プログラム」では、2012年度は、宮城県の6団体で7名の学生が9ヵ月間にわたるインターン活動に従事しました。7名それぞれの活動内容・場所は異なるものの、独自に立ち上げたブログや交流会を通じて情報交換を行い、試行錯誤を繰り返しながら9ヵ月間の活動をやり遂げました。修了後、「思いを行動に移すことの大切さを学んだ」、「被災者である自分が活動に参加することで前を向くことができた」などの感想が寄せられました。彼・彼女らが大きく成長する姿を目の当たりにし、本プログラムの意義を実感しています。
2013年度は、宮城県、福島県の12団体で19名の学生のインターン活動支援を行うことになりました。被災地のニーズは今後も時間の経過とともに変化していきますが、これからも当社は、ユースの挑戦を信じ、彼・彼女らの成長と被災地の復興を息長く支援していきます。
このプログラムは、端的にいうと、被災地を支援したいという思いと、その中でとりわけ若者の成長を応援したいという思いが融合した、ほかに例のないプログラムです。前者は大前提ですが、その中でも後者に着目し、長期的な人材育成(復興支援の担い手の育成が間違いなく最大のポイントです)とそれを通した被災地の再生、ひいては日本社会そのものの再生を展望したいという、大変野心的なプログラムです。企業による東日本の被災地支援プログラムは多数ありますが、このように「人を育てる」ことにとことん着目したプログラムは非常に珍しい、優れたものだと感じています。助成原資は会社からのお金ですが、当然それを生み出したのは役職員の皆様の活動、株主や取引先の皆様のご理解ご支援があっての賜物であり、感謝申し上げます。多くのユースが活躍し、成長していくこのプログラムにどうぞご期待ください。
私たちは関西の4つの大学が集まってできたグループで、岩手県釜石市の仮設商店街の活性化を応援しています。2012年度は関西の女子大生を募った岩手応援ツアーの実施、商店街における地域活性化イベントの企画、商店街の方とともに釜石の魅力を発信するためのワークショップの開催などを行い、関西の大学生として何ができるかを考えました。私は、厳しい中でも笑顔で前を向く釜石の方の強さに、訪れるたびに魅了されています。「消店街」ではなく「笑店街」にしていくために、これからも釜石市の魅力を関西へと広げ、新しい商店街を一緒につくりたいと思います。
2012年度は、農地のがれき拾いやビニールハウスの引っ越しなど東松島市の農家の皆さんの支援をさせていただいたほか、大曲地区の慰霊祭のお手伝いもさせていただきました。慰霊祭では地域の方々とともにつくり上げた置き灯籠で「祈」という文字やハスの花の模様をつくり、来ていただいた方から感動の声を頂戴しました。活動を通して、被災した地域にはまだ引き出し切れていないニーズがあり、そういったニーズを継続的に収集する努力が必要だと感じました。
私たちは、インターン生の阿部さんを受け入れたことで、様々なことを学びました。
インターン経験を通して、「傾聴する」ことの難しさを感じながらも、相手の心の声をしっかり読み取っていくことが大切だということを学んでいく姿は、ほほえましくさえ思いました。
支援者というより、インターンの方だからこそ感じるその素直な思いは、私たちにシンプルに考えることの大切さを教えてくれました。「ここで得たものを大事にしたい」といってくれた阿部さんの言葉に、今も励まされています。
私はNPO法人Switchで心の病気を抱える利用者の皆さんの就労移行支援に携わりました。参加したきっかけは「自分自身が被災して支援を受けたので、今度は自分が支援を行い、恩返しをしたい」と強く感じたからです。心の病気を一から学ぶことから始め、事業所で行われるメンタルヘルスプログラムの運営をサポートしました。文献から学ぶこともありましたが、利用者の皆さんとの交流やスタッフの皆さん、様々な方からお話を聞き、学ぶことがたくさんありました。私は人との関わりを今後も大切にし、社会の役に立ちたいと思います。
当社は、次世代を担う人材の育成を支援するため、2006年から中国屈指の総合大学である南開大学(天津市)と清華大学(北京市)で、当社の社名を付けた講座(冠講座)の運営に取り組んでいます。清華大学では、2013年4月に当社相談役の岡素之が「良い組織とは」というテーマで講演を行いました。約150名の大学生や学院生が参加し、講演後にも密度の濃いディスカッションが行われました。当社は、冠講座を通じて、数多くの中国の学生が日本の企業やビジネスについての理解を深め、将来、日本との経済交流の懸け橋として活躍されることを期待しています。
当社は、ベトナムの子どもたちに、日本語の学習を通じて日本の文化に触れ、日本への理解を深めてもらうため、2006年から同国中部のダナン市で、中学生を対象にした日本語教室を運営しています。
教室では、日本語教師の資格を持つ当社社員が教壇に立ち、8クラス約100名の中学生に日本語を教えています。卒業生の中には日本語能力試験を受験し、見事合格する生徒も数多くいます。また、日本語学習のみならず、日本の四季折々の行事や生活様式、あやとりや折り紙といった伝統的な日本の遊びも紹介しています。そのほか、社会体験学習として、ダナン市郊外にある日系企業の協力を得て工場見学を行うなど、様々な活動を通じて、子どもたちに日本への理解を深めてもらっています。
住友商事と韓国住友商事は、韓国南部の麗水市で開催された2012年麗水国際博覧会で、「おもてなし」の精神で館内をバリアフリー対応にした日本館の音声ガイド制作に協力しました。2004年から映画のバリアフリー化に取り組んでいる当社が協力し、館内で放映される映像に音声ガイドを付けたことで、目の不自由な来場者も展示を楽しむことができました。
また、期間中に開催された佐賀県主催の「ユニバーサルデザインシンポジウム」には、麗水市の障がい者25名を含む250名が参加し、人気漫画「ドラえもん」のバリアフリー版を鑑賞しました。会場では、韓国住友商事の社員がボランティアスタッフとして障がい者の誘導や通訳として運営に協力しました。「ドラえもん」は韓国でも有名ですが、字幕や音声ガイドが付き、視聴覚に障がいがあっても一緒に楽しめる上映は今回が初めてのこと。佐賀県知事の古川康氏は、「こうした映画が増えれば社会も暮らしやすく変わっていく。住友商事グループの取り組みをもっと広めていく必要がある」と、バリアフリー映画普及の意義を強調されました。
今後も誰もが暮らしやすい社会の実現に向けて、映画のバリアフリー化に取り組んでいきます。
2011年3月11日に発生した東日本大震災において、住友商事グループは、地震発生直後からグループ一体となって緊急支援物資の調達・配送を進めるとともに、義援金を拠出しました。その後も、様々な分野・地域で多様なビジネス基盤を持つ総合商社の強みを活かし、震災からの復興に向けて何ができるかを考え、産業復興支援と人道支援の両面から、息の長い支援に取り組んでいます。
宮城県気仙沼市の基幹産業である水産加工業は、津波と大火災により壊滅的な被害を受けました。工場が集積していた湾岸部では、建物の被害に加え地盤が沈下したため工場再建が遅れており、販路の喪失、雇用問題などの課題と合わせ、産業復興が急務となっています。
当社及び住友商事東北(株)は、三井物産(株)と共同で商社連合を組み、宮城県や気仙沼市、商工会議所と協調体制を取りながら、同産業の早期創造的復興に貢献すべく取り組んでいます。地元の事業者が結束して、震災後に設立された「気仙沼鹿折加工協同組合」の共同事業活動に対し、商社連合が実務支援を行うことで、同産業の復興のためのビジネスモデル構築をサポートしています。
当社は、従来から継続的に取り組む社会貢献活動のパートナーシップやノウハウを活かして、「住友商事 東日本再生ユースチャレンジ・プログラム」をはじめ、様々な人道支援に取り組んでいます。
当社は、ホームページ内の「社会貢献活動レポート」を通じて、当社グループが世界中で展開している社会貢献活動について、随時情報を発信しています。本レポートに記載している活動のみならず、世界各国での幅広い活動の様子がご覧いただけます。