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インタビュー 重要社会課題 | 気候変動緩和

自動車産業のCO2排出量削減

自動車鋳造部品メーカー「キリウ」が挑む、
モノづくりの現場でのカーボンニュートラル化

気候変動問題の深刻化やCASEをはじめとした技術革新を背景として、自動車産業は今、100年に一度とも言われる大きな転換点にある。自動車がこれからも社会に必要な存在であるために、脱炭素化への取り組みは自動車産業全体のチャレンジであり、同産業の川上から川下まで幅広く事業を展開する住友商事グループでも、積極的な取り組みを進めている。
事業群のうちの一つ、住友商事完全子会社の自動車鋳造部品メーカー「キリウ」がつくるブレーキ部品は、これからの電動化や自動運転という新しいクルマ社会においても必要とされ続ける部品である。「キリウのモノづくりを通して、お客様に安全性と快適性を提供するとともに、豊かなクルマ社会の実現に貢献する。」このミッションを掲げるキリウが直面している課題とは何か、現場とともに課題を乗り越え、新たな価値を提供するための挑戦とは――。キリウのカーボンニュートラル化プロジェクトをリードする担当者の想いを紹介する。

Interviewee

畑中 孝介

自動車製造事業第一部

畑中 孝介

2013年入社。完成車の中東向けトレードや自動車ディーラーの管理業務、バッテリーを用いた次世代ビジネスの創出等を担当。上海住友商事への駐在を経て、2021年11月より自動車鋳造事業チームに所属。キリウのカーボンニュートラル化プロジェクトにおいて中心的な役割を担っている。

Why

グローバルな成長の一方で大きな環境負荷が課題に

1906年の創業以来100年以上の歴史を持つ「キリウ」は、ブレーキディスクに代表されるブレーキ関連の重要保安部品を製造・販売する自動車鋳造部品メーカーです。当社は2004年にキリウへ出資参画し、当社の海外ネットワーク・経営人材・資金調達力を強みにキリウのグローバル化を推進。今ではアジアや北米など国内外8ヵ国に製造拠点を持つグローバル企業へと成長を遂げました。
こうした成長の一方で、高温で鉄を溶かし、固めて、加工する鋳造事業は環境負荷が大きいモノづくりです。当社がグループ全体で気候変動緩和への取り組みを推進し、2050年のカーボンニュートラル化に向けた目標を掲げる中、2022年実績でキリウはグループ単体・子会社(火力発電事業・化石エネルギー権益事業を除く)の中でScope1/2排出量の最上位となっています。キリウがこれからもサステナブルな成長を重ねていくためには、環境負荷の小さいモノづくりへと転換し、脱炭素社会へ対応することが喫緊の課題となっています。

会社情報と沿革
供給体制

What&How

キリウが挑む「脱炭素」への道筋

製造業においてはこれまでQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を並べたQCDが競争力の源泉でしたが、脱炭素社会への対応が求められる中で、Environment(環境)を加えた、QCDEが新たな価値創造に不可欠となっています。
キリウでも、2023年4月に「2050年カーボンニュートラル化」に向けたロードマップを策定し、①省エネ化・②電化・③再エネ化という3つのステップで構成されるカーボンニュートラル戦略を打ち出しました。
着手している取り組みとしては、①省エネ化ではグループ企業の住友商事マシネックスの支援を得て生産工程における一層の改善余地の発掘、②電化では足利本社工場の生産工程で排出されるCO2を大幅に削減する電炉の導入、③再エネ化では再生可能エネルギー由来の電力への置換や、REC※1・I-REC※2の購入に向けた相談をEII(エネルギーイノベーション・イニシアチブ※3)や三井住友ファイナンス&リース(SMFL)・サミットエナジーと進めています。将来的には水素やCCUS(CO2の回収・利用・貯留)といった新たな技術革新の実装にもチャレンジすべく、社内関連部署の担当者とコミュニケーションを図っています。

※1 Renewable Energy Certificateの略語。北米で標準的に使われている電力証書
※2 International Renewable Energy Certificateの略語。グローバルで広く流通している電力証書
※3 脱炭素・次世代エネルギー分野での次世代事業開発に取り組む、部門の枠組みを越えた営業組織

CO2排出量削減に向けたロードマップ

足利本社工場の電炉設備(23年4月竣工)

キューポラから電炉へのシフト

キリウのカーボンニュートラル戦略における大きな目玉が足利本社工場への「電炉の導入」です。鋳造工程では「溶解炉」で原材料の鉄スクラップを溶解しますが、従来使われてきた「キューポラ」はコークスを熱源として鉄を溶解させるため、製造時に多くのCO2を排出するという課題がありました。そこで、環境負荷の小さい「電炉」への転換を決めました。
すでに海外の生産拠点においては電炉の実装が進んでおり、国内では大分工場に続き、2工場目の導入となります。電炉導入によるメリットはCO2排出量の削減だけでなく、製品品質の安定や作業員の労働環境の改善にもつながっており、キリウのサステナブルな成長のためにプラスの要素が多い施策です。

キューポラと電炉の違い

再生可能エネルギーの利用と戦略のネクストフェーズへ

電炉へ転換することで工場からの直接排出(Scope1)を削減できますが、電力利用による間接的な排出(Scope2)は残るため、使用電力を再生エネルギー由来に置き換えていくことが次のチャレンジになります。具体的には、再生可能エネルギー由来の電力調達やオン・オフサイトでの太陽光PPAの導入、非化石証書・REC/I-RECの購入に向けた取り組みです。国や地域によって再生可能エネルギーへのアクセシビリティが異なるため、地域の特性に沿った脱炭素化施策を推進しており、例えばインド・メキシコでは再生可能エネルギー由来電力への切り替えを、タイではオンサイト太陽光PPAの導入を進めています。

Going forward

商社パーソンとして環境負荷の小さいモノづくりにチャレンジしたい

私は2013年の入社以来、一貫して自動車関連ビジネスに携わってきました。商社パーソンとして、メーカーではないものの、「製造」に深く関わる一員として、環境負荷の小さいモノづくりへのシフトにチャレンジしています。
自動車がこれからも社会に必要な存在であり続けるために、自動車産業はどう変化していくのか。自動車産業は今、気候変動問題を背景に大きな転換点を迎えていますが、その対応は自動車メーカーだけで実現できるものではなく、バリューチェーン全体のチャレンジだと思っています。キリウという製造現場を持つ私たちが、市場と現場の間に立ち、いかなる価値・変革を生み出していけるのか。業界に先駆けたサステナビリティ経営の進化を通じ、総合商社がモノづくりを行う独自の価値を発揮していきたいと思います。
カーボンニュートラルへの取り組みはいまだ答えのない問いへのチャレンジですが、当社グループのさまざまな部門・事業会社から支援をいただいています。当社グループが持つ脱炭素・低炭素化のソリューションをキリウの製造現場に注入していく活動を通じ、担当部門だけではつくることができない大きな渦を起こす。私は、その渦が広がっていく規模やスピードを見て、今、改めて総合商社で働く面白さを感じています。

インタビュー

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