これまで当社では、取締役会規模の適正化、会長・社長の任期制限、取締役の任期の短縮、諮問機関の設置、監査役体制の強化とその機能の充実、執行役員制の導入、社外アドバイザーの起用などにより、コーポレートガバナンスの強化・充実を図ってきました。
また、当社のコーポレートガバナンスに対する基本的な考え方について、「住友商事コーポレートガバナンス原則」としてまとめ、当社のWebサイトで公表しています。
コーポレートガバナンス原則(204KB/PDF)
2002年の商法改正により委員会等設置会社制度が導入された後も、当社は、従来の監査役設置会社制度を継続し、その監査体制を一層強化・充実させるとともに、社外の多角的な視点からの監査や社外アドバイザーからの意見・提言により、外部の視点を取り入れた経営体制としており、これが、当社のコーポレートガバナンスの実効性をあげるうえで、最も合理的であると考えています。また当社は、住友の事業精神のもと、住友商事グループの「経営理念・行動指針」を制定し、法と規則の遵守など、住友商事グループとして尊重すべき価値観を共有すべく、役職員への徹底を図っています。さらに「経営の健全性」の観点から、コンプライアンス委員会の設置及び「スピーク・アップ制度」の導入など、法と規則を遵守するための体制を整えています。また、経営者自身が高潔な倫理観をもって経営にあたることが大切であるとの観点から、取締役会長及び取締役社長の任期を原則としてそれぞれ最長6年とすることを「住友商事コーポレートガバナンス原則」において明記しています。当社は、日本企業としての経営風土を尊重しつつも、グローバルな潮流や企業法制の動向を踏まえ、また、他国におけるコーポレートガバナンスの優れている点などについてはこれを参考にして、当社にとって最適なコーポレートガバナンス体制のあり方について、今後も引き続き検討していきます。
2003年に取締役の人数を24名から半減させ、2012年7月現在、取締役の人数は12名となっています。これにより、業務執行の監督と重要な経営事項の決定の機能を担う取締役会で、従来にも増して実質的で活発な議論と迅速な意思決定を行える体制となっています。
事業年度ごとの経営責任を明確にし、経営環境の変化に迅速に対応するため、2005年6月に取締役の任期を2年から1年に短縮しました。
相互牽制の観点から、原則として取締役会長及び取締役社長を置くこととし、これらの役位の兼務は行わないこととしています。また、取締役会長及び取締役社長の任期は原則として、それぞれ6年までと定めています。これにより、経営トップが交代しないことでガバナンス上の弊害が発生する可能性を排除しています。
当社の取締役及び執行役員の報酬・賞与の決定プロセスの透明性及び客観性を一層高めるため、取締役会の諮問機関として、半数以上が社外委員で構成される報酬委員会を設置しています。この報酬委員会は、取締役及び執行役員の報酬・賞与に関する検討を行い、その結果を取締役会に答申しています。
外部の視点からの監視体制の強化のため、2003年6月に社外監査役を1名増員しました。これにより、監査役5名のうち3名が社外監査役で、そのうち2名が検事総長や東京高等裁判所長官の経歴を持つ法律家、1名が会計の専門家と、多角的な視点からの監査体制となっています。また、社外監査役3名は、各証券取引所の上場規程に定める独立役員の条件を満たすなど、高い独立性を有しています。
監査役は、監査上不可欠な情報を十分に入手するため、取締役会をはじめとする重要な社内会議に必ず出席するほか、取締役会長・取締役社長と経営方針や監査上の重要課題について毎月意見を交換しています。さらに、監査役を補佐する監査役業務部を置き、監査業務が支障なく行われ、監査役の機能が最大限果たせるようにしています。
社外監査役の選任理由及びプロファイルは次の通りです。
検察官及び弁護士としての長年の経験や幅広い知見を有し、人格、識見のうえで当社監査役として最適任であり、多角的な視点からの監査を実施願うため選任しています。
1999年12月 | 東京高等検察庁検事長 |
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2001年7月 | 検事総長 |
2004年10月 | 弁護士(現職) |
2005年6月 | 当社監査役(現職) |
会計士としての長年の経験や財務・会計を含む幅広い知見を有し、人格、識見のうえで当社監査役として最適任であり、多角的な視点からの監査を実施願うため選任しています。
1993年6月 | 太田昭和監査法人(現・新日本監査法人)代表社員 |
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2000年5月 | 国際会計士連盟(IFAC)会長 |
2004年7月 | 日本公認会計士協会会長 |
2007年7月 | 日本公認会計士協会相談役(現職) |
2008年6月 | 当社監査役(現職) |
裁判官及び弁護士としての長年の経験や幅広い知見を有し、人格、識見のうえで当社監査役として最適任であり、多角的な視点からの監査を実施願うため選任しています。
2004年12月 | 東京高等裁判所長官 |
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2007年4月 | 弁護士(現職) |
2007年10月 | 東京都公安委員会委員(現職) |
2009年6月 | 当社監査役(現職) |
監査役は、効率的な監査を行うため、内部監査部と緊密な連携を保ち、内部監査の計画及び結果について適時に報告を受けています。
また、会計監査人との定期的な打ち合せを通じて、会計監査人の監査活動の把握と情報交換を図るとともに、会計監査人の監査講評会への出席、在庫棚卸監査への立ち会いなどを行い、監査役の監査活動の効率化と質的向上を図っています。さらに、監査役は、内部統制委員会に出席し、また、その他内部統制を所管する部署に対して、内部統制システムの状況についての報告や監査への協力を求めています。
当社では、業務執行の責任と権限の明確化と取締役会の監督機能強化を目的として、執行役員制を導入しています。この制度のもと、取締役会で選任された執行役員42名(2012年7月末時点)のうち、執行の責任者である事業部門長7名を含む11名の執行役員が取締役を兼任することで、取締役会での意思決定と業務執行のギャップを防ぎ、効率的な経営を目指しています。
社外の方々の考え方を経営に取り入れるため、社外の有識者数名を社外アドバイザーに起用し、経営会議メンバーとの会議を行っています。経営課題に関する様々なテーマについて、幅広い視点から助言・提言を得ているほか、リーダーシップやキャリアデベロップメントなど、各アドバイザーの専門分野について社内各層向けに講演・講義をしていただいています。
私は40年もの間、裁判と裁判所を支える司法行政に従事してきました。住友商事の社外監査役に就任したのは2009年なのですが、就任当初は「過去の事象を証拠と法に照らして認定し、判断する」という裁判官の仕事と、「常に変化を先取りしながら新たな価値を生み出す」という住友商事の仕事は対極にあるように感じていました。しかし、住友商事の経営理念や、その基盤にある400年にわたる「住友の事業精神」への理解を深めるにつれ、「物事をしっかり見て判断する」という点では、これまでの私の経験と共通項が多いことに気づきました。住友商事ではこれら「住友の事業精神」や「経営理念」が全ての基盤、価値判断の軸となって組織に根付いており、これがコーポレートガバナンスを支えていると思います。
一方、コーポレートガバナンスの実効性を高める仕組みの一つについてお話をしますと、例えば毎月、社外監査役と会長・社長とで時事の話題から重要案件の取り進めまで率直に話ができる機会があります。毎回、変化する事業環境をどう捉えているか、また重要案件のバックグラウンドやその進捗といった事柄について会長・社長より詳細な説明があり、それに対して私たちが、外部の視点で様々な質問をしたり、意見を言ったりしています。このように住友商事のコーポレートガバナンスは、「住友の事業精神」といった価値判断のベースと、実質的な仕組みが両輪となって効果的に機能しているものと私は見ています。
裁判所は「人で支えられている組織」という点でも総合商社と同じであり、そういう意味で、私はƒ(x)の4つのキーアクションの中で「人材マネジメントの強化」に高い関心があります。矩をこえず、最大の価値を生み出す人材をどう育てていくか。難しい課題ではあるものの取り組みは着実に進んでおり、このことが住友商事の持続的な成長につながるものと確信しています。
私はかつて大手シンクタンクで消費者行動分析を行っていましたが、マーケットを動かしているのは人であるということに着目するようになってからは、一貫して「組織における人」をテーマとし、最近はミドルマネジメントの活性化とその組織作りを中心に研究を続けています。
社外アドバイザーとなって1年余りが過ぎましたが、住友商事では「住友の事業精神」に立脚してビジネスを考えること、すなわち信用を大事にして誠実・健全を心掛ける文化が根付いているということを感じています。同時に、住友商事においては社内コミュニケーションをより一層深めてもらいたいとも感じています。社内の様々な価値観を持つ社員たちがどんどん交流し、もとの事業領域から飛び出すことで新たな価値創造につながることを期待します。
日本の総合商社という業態は、極めて多岐にわたる事業を抱えているため、もともと多様な価値観を持ち合わせています。今年からは私がファシリテーターとして、意図的にシニア・マネジメントの方々に部門を越えて語り合う場を提供し、人と人をつないでいます。それがより広く、深く、遠くを考えてもらうきっかけとなって、新たな価値創造に挑戦する潮流が起こってくることを目指しています。
今、世界は大構造転換期です。日本では、明治から現代までほとんどの産業構造転換を官主導によって非常にうまく成し遂げてきましたが、これからは、民主導の産業構造転換をなさねばなりません。今の日本でその役割を担うことができるのは、私は商社であると考えており、住友商事には期待すること、きわめて大です。
当社は、当社の経営方針と営業活動を全てのステークホルダーに正しく理解いただくため、法定の情報開示にとどまらず、任意の情報開示を積極的に行うとともに、開示内容の充実に努めています。
当社は、定時株主総会の3週間前に招集通知を発送するとともに英訳版も作成し、当社のWebサイトに掲載しています。2004年からはインターネットによる議決権行使、2005年からは携帯電話からのインターネットによる行使もできるようにしました。さらに、2007年からは(株)東京証券取引所等により設立された(株)ICJが運営する機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームを利用し、機関投資家のために議案内容の十分な検討時間を確保しています。
当社のWebサイト上には、決算情報・有価証券報告書・適時開示資料・会社説明会資料など、投資判断に資する資料を掲載しているほか、当社がグローバルに展開するプロジェクトの特集を組み紹介するなどグループ全体のトピックスを幅広く発信しています。さらに、アニュアルレポートや社会と環境に関するレポート、広報誌「SC NEWS」を発行し、積極的な情報開示を行っています。
当社はWebサイトでの情報開示の充実に努めているほか、株主・投資家の皆様とのダイレクト・コミュニケーションの場として、国内のアナリスト・機関投資家向けに経営トップの出席のもと、年4回、定期的な決算説明会を行っています。海外投資家に対しては、米国・英国をはじめ、欧州・アジア方面を訪問し、継続的に個別ミーティングを実施しています。また、個人投資家向けには、2004年度以降、継続して会社説明会を開催しており、2011年度は5都市で6回開催し、合計で約1,500名の個人投資家が参加しました。
今後も、経営の「透明性」を高めつつ、株主・投資家の皆様との信頼関係の強化に努めていきます。
当社は、コーポレートガバナンス体制の強化・充実を行うとともに、「経営の効率性の向上」及び「経営の健全性の維持」の観点から、内部統制の実効性の維持・向上のため、内部監査、リスクマネジメント、コンプライアンスの一層の徹底・強化に努めています。