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Business Stories

AIを活用した再生可能エネルギーの需給バランシングと運用最適化の高度化

再生可能エネルギーの需給バランシング高度化

再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大が進むなか、発電事業者には発電量の予測や市場取引など、従来の固定価格買取制度とは異なる運用が求められるようになりました。市場価格や需給状況が刻々と変化するなかで、収益を最大化するためには膨大なデータを活用した精緻な予測が欠かせません。

こうした再エネ発電事業者の課題解決を支えているのが、住友商事グループのENEXIA合同会社(以下、ENEXIA)です。今回は、住友商事のデジタル・AI戦略(DAIS)の実装事例として、ENEXIAがデータやAIを活用してどのようにSMFLみらいパートナーズ株式会社(以下、みらいパートナーズ)の課題を解決し、新たな価値を生み出しているのかをご紹介します。

課題:変動する電力市場環境に合わせた発電予測や発電実績データ集計の難しさ

2022年のFIP制度 ※1の導入により、対象となる再エネ発電事業者は、市場での売買や需給管理への対応が求められるようになり、発電量の予測や電力需給量の計画値と実績値の差を最小化するバランシング業務が必要となったのです。ENEXIAの顧客であるみらいパートナーズの須貝氏は、2022年当時をこう振り返ります。

「当社では1,000カ所以上の小規模発電所を抱えており、毎日膨大な数の電力予測を行う必要がありました。大量のバランシング業務を行う経験もノウハウもなく、予測を手助けしてくれる専門家が必要でした」

さらにみらいパートナーズはNon-FIT ※2による売電事業も行っており、需要家への請求に必要な発電実績データの集計や照合作業も負担となっていました。

※1 電力を市場で販売し、売電収入にプレミアム(補助額)を上乗せする制度。
※2 FIT(電力を固定価格で買い取る制度)やFIPなどの支援制度に頼らず、電力を販売する再エネ事業。

解決策 ①:発電・需要・市場情報を統合的に扱う需給バランシングモデルを構築

住友商事グループでは、再エネ発電事業と電力小売り事業の双方に取り組む中で、天候によって変動する発電量の予測、需給計画の作成、市場取引、インバランス管理を一体に行う必要性が高まっていました。そこで、上流である再エネ発電事業者と下流である需要家の間をつなぐ「再エネアグリゲーター」として2024年にENEXIAが設立されました。

アグリゲーターは、複数の再エネ発電設備を束ね、発電事業者と需要家をつなぐ役割を担います。発電量や市場価格を予測し、需給計画を作成し、市場取引を行い、電力の計画値と実績値の乖離を抑制する。従来は人の経験に依存していたこうした運用判断をデジタル化し、統合的に扱う需給バランシングモデルを構築したのがENEXIAです。これにより、変動する再エネを安定的かつ収益性の高い形で運用できるようになりました。

提供機能・サービス : 予測・最適化・市場取引(エンジニアリング ✕ データサイエンス)

ENEXIAのデータサイエンスチーム長の吉野氏は、再エネ発電量や市場価格の予測業務にAIを活用していると話します。

「JEPX(日本卸電力取引所)の市場価格や気象情報に加え、住商グループ内やみらいパートナーズ様が保有する発電データなど、膨大なデータを機械学習などのAIで分析しています。そのうえで、天候・季節などさまざまな条件下での発電予測や収益シミュレーションを行っています」

解決策 ②:住商グループで連携し、システム基盤を構築

システムの立ち上げ時には、住商グループの株式会社Insight EdgeやSCSK株式会社の開発力を活用し、データサイエンティストが作った予測モデルを24時間365日稼働させる自動化の基盤を構築しました。現在は、ENEXIA内でのシステム開発・運用の内製化を進めています。

システム化した予測・分析力を生かし、みらいパートナーズ保有の多数の小規模発電所についても発電所ごとの計画作成と市場取引を支援。オフサイトPPA ※3の需要家決定まで売電を留保していた発電所において、市場売電による収益化を実現しました。

※3 需要家が、離れた場所にある再エネ発電所から電力を調達する仕組み。

みらいパートナーズが発電した電力を需要家につなぐENEXIA

解決策 ③:500通り以上をシミュレーションした蓄電池運用

みらいパートナーズは、太陽光発電所への蓄電池の併設にも取り組んでいます。太陽光発電は太陽が昇っている間しか発電できませんが、蓄電池を活用することで、日中に発電した電力を蓄え、電力需要が高い朝晩の売電が可能になります。市場価格が低い時間帯に電気を蓄え、高い時間帯に放電する最適な運用方法を探るため、ENEXIAは500通り以上の運用パターンをシミュレーションしています。

須貝氏は「ENEXIAのソリューションによって、複雑な運用判断をデータに基づいて行えるようになり、収益拡大の可能性が広がっています。また、電力市場や再エネ事業に関する深い知見を持ちながら事業者目線で伴走してくれることにも安心感があります」と評価します。

ENEXIAの永易氏は蓄電池を併用した運用も進めることで、発電事業者の収益性向上だけでなく、日本全体の電力需給の安定化や再エネの有効活用にもつながると考えています。

「再エネ電力の供給を需要に合わせて最適化していけば、発電事業者の収益性を高めながら、より有効に再エネを活用できます。事業としての経済合理性と電力システム全体の安定性を両立させることが、結果として再エネの持続的な拡大につながると考えています」

再エネ発電事業者の収益性向上と運用負荷の軽減を支えながら、電力を必要な場所へ、必要なタイミングで届ける。住友商事とENEXIAは、事業現場の課題に向き合い、データやAIを活用した価値創出を通じて、持続可能なエネルギー社会の実現と産業・社会の変革をリードしていきます。

Interviewee

本記事のインタビューを受けてくれた方

  • ENEXIA
    社長
    永易 大知
    1995年住友商事入社。再生可能エネルギーを含めた発電事業への投資業務から、需要家への小売りまで幅広く経験。2024年より現職。
  • ENEXIA
    データサイエンスチーム長
    吉野 一慶
    銀行業でのクオンツ業務、電力小売のリスク管理・再エネバランシング構築を経てENEXIAへ。データサイエンスチームを率い、発電・需要・市場価格の予測と市場取引の最適化を通じたバランシング運用の高度化、ならびに住友商事グループと連携した再エネ案件の定量評価・収益シミュレーションなどのビジネス支援に従事。
  • SMFLみらいパートナーズ
    環境エネルギー開発部長
    須貝 幸太郎
    2002年三井住友ファイナンス&リースに入社。リース営業として大手メーカーを担当し、風力発電事業へのファイナンスを経験。現在はSMFLみらいパートナーズにて太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業に関与。2024年より現職。