特集1 収益の拡大:変化に対応し、顧客のニーズを捉えながら新たな価値を提供

リテイル事業の海外展開:商社機能を発揮して様々なビジネスを育成

住友商事のリテイル戦略

高成長を続ける新興国と比較して成熟化が指摘される日本の消費市場。しかし、その規模は約135兆円と依然世界トップレベルの水準にあり、底堅く安定した市場といえます。

住友商事は肥沃なこの国内市場において、リテイル分野を戦略的事業分野と位置づけ、これまで食品スーパー事業、ドラッグストア事業、ブランド事業、テレビ通販事業、ケーブルテレビ事業、携帯端末販売事業、日用品のインターネット通販(EC)事業など、幅広くビジネスを手掛け育成してきました。

当社のリテイル事業は、個々の消費者に対し、店舗、テレビ、インターネット、モバイルといった様々なチャンネルを通じて商品・サービスを提供し、収益機会を最大化する「マルチチャンネル・リテイル戦略」を掲げ推進しています。そして、この当社独自の戦略のもと、メディア・IT・リテイルの各分野で業界トップレベルのビジネスを展開する事業会社各社が、分野の垣根を越え連携・融合することで新たな価値を創造・提供していくという、総合商社の中でも極めて特徴的なビジネスを展開しています。

今後は、引き続き国内市場での事業の拡大を図ると同時に、将来の収益基盤拡充のため、国内で成功したビジネスモデルを海外へ展開する試みも進めています。

国内における事業育成例 テレビ通販事業のジュピターショップチャンネル

国内テレビ通販市場でトップシェアを占めるジュピターショップチャンネル(株)(SHOP)は、このマルチチャンネル・リテイル戦略の核となる事業会社です。テレビ通販という米国発のビジネスモデルを日本で展開するべく、当社は、米国企業をパートナーにSHOPを一から立上げ、その後も資金面・人材面でのリソース投入に加え、物流・メディア・ITなど当社グループが有する様々な機能を積極的に活用し、SHOPをサポートしてきました。

今では業界トップのポジションを確立しているSHOPも、立ち上げ段階では試行錯誤の連続でした。そうした中、「お客様に喜んでいただける面白い商品、楽しい番組企画への飽くなき探求心」を原動力に、紹介する商品を国内の消費者の嗜好に合わせ独自化し、ライブ放送時間を拡大するなど、様々な施策に取り組みました。さらには、自社スタジオや専用コールセンター開設を機に、商品の売れ行きなどに応じた場面・商品の入れ替えや、番組の司会進行役とお客様を電話でつなぎ双方向コミュニケーションを取りながらの番組づくりを実現させました。

これらの取り組みによりSHOPは成長軌道に乗り、その後も完全24時間ライブ放送の実施やコールセンターの増設、新たな顧客対応システムの導入、最新鋭の物流センターの稼働、商品企画や品質管理の強化、そしてインターネット販売の開始など、お客様のニーズを捉えサービスを進化させています。

SHOPの例のように、当社はビジネスを成長に導くため、事業のオペレーションに深く関わり、商品企画力、マーケティング力、ブランド構築力といった当社が幅広く展開するリテイル事業を通じて培ってきたノウハウと、商品調達・在庫管理や物流のオペレーション能力などの商社機能を最大限に発揮します。そうすることで商社機能そのものが強化され、そこで得たノウハウはさらなる強みとして当社に蓄積されていきます。ビジネスを通じて培った機能や強みが、次なる事業を育成する力となり、当社のリテイル事業の根幹を作っています。

成長するテレビ通販市場(販売金額) 成長するテレビ通販市場(販売金額) ※1 テレビ通販市場の数値は富士経済「通販e-コマースビジネスの実態と今後 2011–2012 市場編」より
※2 ジュピターショップチャンネルの数値はテレビ通販の他、ネット通販などを含む

 

ビジネスを育成する力を新興国に横展開

経済発展が著しい中国・アジアなどの新興国においては、中間所得層が厚みを増し、それに伴って消費市場も急速に拡大しています。当社は、将来の収益基盤確立に向け、国内リテイル事業で培った「ビジネスを育成する力」をこれら新興国へと横展開し、さらなる成長を目指しています。

テレビ通販事業では、人口増加や所得水準の向上、消費活動の多様化といった新興国マーケットの動向を捉え、現地の有力企業をパートナー候補に、事業化に向けた具体的な協議を進めています。

日用品EC事業では、2011年度に中国とインドネシアにおけるビジネスの展開を目指して、住商電子商務(上海)有限公司とPT Sumisho E-commerce Indonesiaを設立しました。ネットワーク技術ITの知識に加え、商社機能や日本におけるEC事業で培ったノウハウを駆使し、将来的にはアジアを中心としたその他の地域においてもEC事業展開を図り、グローバルベースでの収益基盤拡大を目指します。

また、ドラッグストア事業では、台湾の有力企業である三商行股份有限公司と合弁会社を設立し、台北市内にドラッグストアを出店することに合意しました。三商行は百貨店、スーパーマーケットなどのリテイル事業を台湾及び中国において幅広く展開しています。パートナーが有する現地における物流機能及び商品調達力と、当社が国内で培ったドラッグストア『Tomod's』の商品構成や店舗レイアウト、販売促進ノウハウなどの強みを結集することで、競合他社との差別化を図ります。

今後はさらに、その他の事業分野でも海外事業化の検討を進め、中期的な成長に向けた将来の収益基盤づくりに取り組んでいきます。

リテイル事業の海外展開 リテイル事業の海外展開 展開検討中の国

 

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