特集1 収益の拡大:変化に対応し、顧客のニーズを捉えながら新たな価値を提供

インドネシア電力事業~タンジュン・ジャティBプロジェクト~:環境の変化に対応しながらビジネスモデルを深化

逼迫する電力需要

右肩上がりの経済成長と人口の増加が続くインドネシア。これに伴い、インドネシア国内の電力需給は逼迫した状態が続いています。同国の電力需要は2020年まで年平均で約8%ずつ伸びていくことが予想されており、電源の開発が喫緊の課題となっています。

住友商事は1950年代のインドネシア進出以来、水力、火力、地熱といった多様な発電所の建設と運営に携わることで、高まり続けるインドネシアの電力需要を支えています。

タンジュン・ジャティB石炭火力発電所の拡張工事が完工

インドネシアでは、電力不足の解消を狙って政府主導による電源の開発に取り組んでおり、現在、ジャワ島を中心に発電所の建設ラッシュが続いています。

住友商事は、2006年よりリースを行っているタンジュン・ジャティB石炭火力発電所(以下、TJB)の拡張工事に取り組んでおり、2011年10月に3号機が、そして2012年1月に4号機が完工しました。電力の安定供給を目指して、一日も早い完工を実現すべく日本及びインドネシアの全ての関係者が一丸となって取り組んだ結果、それぞれ予定より約3ヵ月以上の前倒しが実現し、さらに出力・効率とも契約条件を上回る性能を達成しています。

3、4号機の運転開始に伴いTJBの総発電容量は2,640MWとなり、インドネシアのジャワ–バリ電力系統全体の約13%の電力供給を担う重要な発電所となっています。

インドネシアの電力需要推移 インドネシアの電力需要推移 出典: Ministry of Energy and Natural Resources

 

環境の変化により発生した課題を一つひとつ解決

TJB拡張プロジェクトが成功した背景には、1、2号機建設時に確立した新たなビジネスモデル「ファイナンス・リース」の採用と、高品質の製品、そして経験に裏打ちされたプロジェクトコーディネート力・遂行力などがあります。

TJB1、2号機建設プロジェクトの過程は、決して平坦なものではありませんでした。1995年、香港系のIPP*がTJB火力発電所プロジェクトを計画。住友商事はその設計から買い付け・建設までを請け負うEPC*コントラクターとしてプロジェクトに参画しました。ところが建設が順調に進んでいた1997年、アジア通貨危機が発生してインドネシアの通貨ルピアが暴落。プロジェクトに融資していた民間銀行団は一斉に融資を引き上げ、また香港系IPPも撤退を決めるなど、TJBプロジェクトは中断を余儀なくされました。

この時点で土木工事の約7割が完成し、機器や設備も発注済でした。そして何より、インドネシアの人々がこの発電所の完成を待ち望んでいるという思いから、当社は工事を継続すべくインドネシア政府に粘り強く働きかけました。そこで当社が考案したスキームが、「ファイナンス・リース」です。これは、当社が国際協力銀行の融資を受け自らのリスクで発電所を建設し、完成後には現地事業会社のPT Central Java Power(以下、CJP)を通じてPT PLN(Persero)(以下、PLN)にリースするというものでした。

このスキームでは、リース料は現地の実勢電力料金などの変動に応じて半年ごとに徴収することとしたため、PLNは初期投資負担を回避でき、発電による収入でリース料をまかなうことができます。また、IPPのように電力だけを提供するのでなく、発電所自体をリースするため、その保守・運転や燃料調達はCJPの協力のもとにPLNが担うこととなり、現地における発電事業の担い手を育成することにもつながります。そのほかにも、20年間のリース契約終了後の発電所の譲渡など、インドネシアにとっても魅力的なスキームでした。

当社とインドネシアの両者が“Win‐Win”となるこのスキームの提案を受けて、プロジェクト中断後4年が経過した2001年に再開交渉が合意に至りました。その後、当社は法務・会計・税務・財務・リスクマネジメントなどといった多岐にわたる機能を結集させて、複雑な交渉及び手続きを乗り越え、2003年に工事を再開。2006年に完成するに至りました。環境の大きな変化に見舞われながらも、将来を見据えてインドネシアと当社にとって常に最善の答えを導き出し、11年間にわたる長期プロジェクトを成功に導いたのです。

今後も経済成長と人口の増加が見込まれるインドネシア。住友商事はこれまでの取り組みを通して蓄積した技術力、コーディネート力、プロジェクト遂行力、そして現地との信頼関係をさらに発展させながら、インドネシアとともに成長していきたいと考えています。 * IPP(Independent Power Producer):独立発電事業者
* EPC (Engineering, Procurement and Construction):工事込建設請負形態

TJB(タンジュン・ジャティB)プロジェクトの経緯 TJB(タンジュン・ジャティB)プロジェクトの経緯

 

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