社長メッセージ:全てのステークホルダーの皆様へ

代表取締役社長 中村邦晴

2014年度は大規模な減損損失が発生し、最終的に赤字という結果になりました。

当社グループは経営理念の中で「信用・確実」を謳い、
社会から信頼されるような事業活動を行うことを大切にしてきました。

今回の減損損失で、当社グループがこれまで築き上げてきたステークホルダーの皆様からの信頼を
少なからず失ったことを経営者として大変重く受け止めております。

経営改革の実行と業績の回復に取り組み、もう一度当社グループを成長軌道に戻すことにより、
信頼の回復に努める所存です。皆様のご支援を宜しくお願いいたします。

Be the Best, Be the One 2017
(BBBO2017)

2015年度からスタートしたBBBO2017では、経営改革と成長戦略に真摯に取り組んでいきます。

経営計画

経営改革の第一歩として、意思決定プロセスやリスク管理体制の面での改善に取り組みます。経営会議を執行レベルの最高意思決定機関と位置付け、これまで以上に多様な意見や多面的な議論を経て重要事項を決定する体制を整えます。また取締役会についても、経営の執行に対する監督機能を強化し、全社の戦略や基本方針の策定に一層比重をおいて審議する体制とします。

リスク管理体制については、特に大型案件について事業特性や本部戦略との関わり方などさまざまな角度から議論を深めるため、投資の検討段階と実行段階に、それぞれ事業部門レベルと全社レベルでの投融資委員会で複数回の審議を行うプロセスを制度化します。このほかにも投資評価基準の厳格化や投資実行体制の見直しを行うなど、経営改革を着実に実行し、その成果を示すことで、経営に対する信頼を取り戻していきたいと考えています。同時に、管理の重複や意思決定のスピードが遅くなるなどの弊害が出ないよう、権限委譲をはじめとする業務全体の効率化も同時に進めていきます。

成長戦略の推進

BBBO2017においては、当社が強みを有する金属、輸送機、メディア等の各事業において、それぞれの成長戦略を追求するとともに、中長期的なマクロ環境の分析を踏まえ、自動車関連と社会インフラ基盤、生活・情報産業の3つの分野に全社組織横断的に注力していきます。また、成長ポテンシャルの高い特定の分野や地域を指定し、全社で育成する取り組みを引き続き強化していきます。全社育成分野としては、エネルギー周辺分野、アジアのリテール、食料・農業関連を、全社育成地域としては、ブラジル、インド、ミャンマー、トルコ、サブサハラを指定しています。

2014年度の減損損失は資源・エネルギー分野の案件が大宗を占めました。当面はマダガスカルのアンバトビーニッケルプロジェクトなど仕掛かり中の大型案件の立ち上げや既存案件のコスト削減に注力し、資産の質を向上させていきます。また、今回の減損損失から得た教訓をもとに、1件当たりの投資に上限額を設けるなどリスク管理体制を強化するとともに、社内外の市況分析能力や技術評価力に長けた人材からなるエキスパート組織を新設しました。

中長期的には世界の人口増加や新興国の経済成長を背景として、資源・エネルギー需要は拡大するとみています。資源・エネルギー上流ビジネスは、当社グループが今後さらなる成長を目指していくうえで引き続き重要と考えており、体制をしっかり立て直して取り組んでいきたいと思います。

個の力と組織の力の強化

商社の本質は、ビジネスそのものを創り出すことです。ビジネスを創り出すのは人材です。当社は人材の力を高めるため、社員に入社後の早い段階から多様な経験を積ませるなど、人材育成を最重要テーマに取り組んできました。

こうして育った人材が、当社のさまざまなビジネスを創り出しています。今後活発な経済活動による発展が見込まれる新興国においても、現地の顧客や消費者とのコミュニケーションを通じてニーズを理解し、新たな価値を創造していくものと期待しています。

財務健全性の確保

BBBO2017では、コア・リスクバッファーとリスクアセットのバランスの回復を最優先に取り組むこととしています。2014年度の減損損失によって、リスクアセットをコア・リスバッファーの範囲内に収めるという経営の大原則が崩れました。当社グループの経営がこれにより揺らぐことはありませんが、バランスはできるだけ早く回復していきたいと考えています。

同時に、持続的成長のためにキャッシュ・フローをより一層重視した経営を行っていきます。当社グループの連結バランスシートにはグロスで約4兆円の有利子負債があります。現在の日本の金融環境下では金利は低く、借入による投資やレバレッジを効かせた経営が可能です。しかし、持続的成長のためには、営業キャッシュ・フローと資産の入替によって自ら創出したキャッシュの範囲内で投資や株主還元を行うことで、有利子負債に過度に依存しない財務体質にしておくことが大変重要です。そのため、BBBO2017では、3年合計の配当後フリーキャッシュ・フローの黒字確保を基本方針としています。

株主還元

当社は、株主の皆様に長期にわたり安定した配当を行うことを基本方針としつつ、中長期的な利益成長による1株当たりの配当額の増加を目指しています。

BBBO2017の達成に向けた強い決意のもと、BBBO2017では、1株当たり50円を下限とし、連結配当性向25%以上を目安に、基礎収益やキャッシュ・フローの状況などを勘案のうえ、配当額を決定することとします。2015年度の配当は、1株当たり50円とする予定です。

1株当たり配当額

住友の事業精神と長期的な会社の姿

2019年に住友商事はその元となった大阪北港(株)の設立から100周年を迎えます。私は「住友商事グループを50年、100年、さらには永遠に続く会社にしたい」と考えています。そのためにはただ儲ければよいということではなく、住友が事業精神の実践により400年続いてきたように、当社もまた住友の事業精神に基づいた経営理念を実践しながら持続的に成長していくことが必要です。

住友の事業精神を表す言葉の一つに「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」があります。住友の事業は、住友のためだけではなく、広く社会のためになる活動でなければならない、という考えです。社員一人ひとりがそれぞれの仕事を通じて、それぞれのステークホルダーのためにベストを尽くす。これを全社員が実践することで必ず会社は良くなると信じています。

住友の事業精神はまた、「信用・確実」という商売の心得を説いています。住友家の初代政友が晩年、家人に宛てた書状の中にある言葉で、その後400年を経てなお、住友グループに受け継がれています。私は、このビジネスの進め方こそ、住友商事らしさであると考えています。経営改革の確実な実行や利益計画の達成などによって、ステークホルダーの皆様からの信頼回復に努めたいと思います。

振り返れば住友には400年の歴史があり、先を見れば目指す姿の途上に私たちは立っています。過去から信頼を大事にしてきたことと、今後もそれは変わらないということを、もう一度私を含めた全役職員が胸に刻みたいと思います。

最後に

今回、新しい中期経営計画を発表するにあたり、今後当社が信頼を回復するには、何をすべきか、経営陣で徹底的に議論しました。その結果、長い年月をかけて当社が信頼を培ってきたように、経営改革の実行と収益力強化に粘り強く取り組み、ステークホルダーの皆様にその成果を示していくこと以外に近道はないとの結論に達しました。

1日でも早く皆様の信頼を回復するために、全員が心を一つにしてBBBO2017を実行し、速やかに成長軌道への復帰を図っていく所存です。引き続きこれまでと変わらぬご支援とご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

2015年8月
代表取締役社長 中村 邦晴