2024年09月19日
American Bureau of Shipping
Fleet Management Limited
住友商事株式会社
TOTE Services
米国初、アンモニアバンカリング船の基本設計承認を取得~海運業界の脱炭素化に向け、2030年までの商業運転開始を目指す~
American Bureau of Shipping(以下「ABS」)、Fleet Management Limited、住友商事、TOTE Services(以下総称して「4者」)は、ABSより米国初のアンモニアバンカリング船(連結式タグ・バージ船/注1、以下「AB-ATB」)の基本設計承認(Approval in Principle、以下「本AiP」)を取得したことを、米国ヒューストンで開催中の「Gastech 2024」内で発表しました。
本AiPは、ABS、A.P. Moller - Maersk A/S、Fleet Management Limited、Georgia Ports Authority、Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping(MMMCZCS)、住友商事、TOTE Servicesの7社で構成されるRADIUSコンソーシアム(以下「コンソーシアム」)の協力により実現したもので、AB-ATBの図面設計・開発はVARD Marine US, Inc.が担当しました。アンモニアが代替船舶燃料の選択肢の一つとして注目される中、本AiPは海運業界の脱炭素化に向けた重要な一歩です。
プロジェクトについて
コンソーシアムは2023年3月の設立以来、米国東海岸における船舶向け燃料アンモニア供給の実現可能性を研究・調査してきました。主な内容としては、クリーンアンモニアの調達、輸送、貯蔵およびバンカリングを含む、競争力のある包括的サプライチェーンの構築やAB-ATBの設計などに取り組んでいます。
AB-ATBは、ノルウェーの海運会社Höegh Autolinersが運航する最新鋭のPCTC(注2)であるオーロラクラスを含む自動車運搬船およびMMMCZCSが設計開発した15,000 TEU(注3)のアンモニア焚きコンテナ船に整合するよう設計されており、米国東海岸のジャクソンビル港、ブランズウィック港、サバンナ港などでのバンカリングを想定しています。本AiPは、海運業界におけるアンモニア燃料船の開発や発注を後押しすることが期待されると共に、2030年までの米国初のアンモニアバンカリング船の商業運転開始という目標に向けた重要なマイルストーンとなります。
船舶向け燃料アンモニア
アンモニアは、海運業界における温室効果ガス(以下「GHG」)の直接排出を削減する有望な代替燃料の一つと考えられています。アンモニアへの燃料転換は、2030年までに国際海運のGHG排出を2008年比で少なくとも20パーセント削減し、2050年までにライフサイクルベースでネットゼロという国際海事機関(以下「IMO」)の目標達成に大きく寄与することが期待されています。
米国のクリーンアンモニアの生産量は、Bloomberg NEFの予測によると、2030年時点で世界の供給量のうち41パーセントを占める見込みで、世界最大のクリーンアンモニア生産国となるポテンシャルを持っています。4者は、米国において、船舶向け燃料アンモニアの需要と供給をつなぐAB-ATBの導入を通じ、IMOの各種目標達成に貢献することを目指しています。
今後の取り組み
世界最大のバンカリング港であるシンガポールでは、安全・防災対策に関するワークショップや訓練、演習、プルームモデル(注4)の開発といった入念な準備の下、2024年に世界で初めてアンモニアが船舶燃料として使用されました。新たな安全・運用基準の策定には、多くのステークホルダーが連携して取り組む必要があります。コンソーシアムは、2024年7月にABSが発表した業界初のアンモニアバンカリングガイドラインを参考に、米国東海岸でのアンモニアバンカリング開始に向けた次のステップとして、米国の関係当局や専門家とより詳細なリスクアセスメントを進めていく予定です。
コンソーシアム代表コメント
- ABS Vice President, Global Sustainability Panos Koutsourakis
- 「今回の設計承認は、実現可能性調査やプロジェクトに携わる私たちのチームメンバーにとって、非常に喜ばしい節目となります。AB-ATBの基本設計が承認されたことは、アンモニアの船舶燃料としての実用化に向けた着実な進展を示す一歩です。ABSは、低炭素で持続可能な運航を目指す海事産業の取り組みを引き続き支援していきます。また、私たちはアンモニアを船舶燃料として活用する上での豊富な知見を有しており、その知見をチームに提供できることを誇りに思います。」
(注1) 船舶向けに燃料アンモニアを供給するために必要な設備機器類を備えた、タグボートとバージを一体化した船舶
(注2) Pure Car and Truck Carrierの略。自動車・トラック専用運搬船
(注3) 20フィートコンテナを1単位としてコンテナ船の最大積載量を表す単位
(注4) 風が吹いている状態での煙等の拡散の様子をシミュレーションするモデル
- 本内容は参考和訳であり、正文は英文です。英文と翻訳内容に齟齬等がある場合には英文が優先します。
【各社の役割】
パートナー | 役割 |
---|---|
American Bureau of Shipping | 米国でのアンモニアバンカリングのオペレーション・ガイドラインなどの策定を目的としたリスクアセスメント、および関係当局との折衝など |
A.P. Moller - Maersk A/S | コンテナ船のアンモニア燃料の需要計画策定、および運航会社の観点から、アンモニアバンカリングのオペレーションの検討など |
Fleet Management Limited | 船員配乗を行う船舶管理会社の観点から、アンモニアバンカリングのオペレーションの検討など |
Georgia Ports Authority | サバンナ港におけるLNGバンカリング拠点整備の支援の経験と知識を活用して、米国でのアンモニアバンカリングのオペレーション・ガイドラインの策定に向けた関係当局との折衝支援など |
Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping | アンモニア燃料のライフサイクルアセスメント、および米国でのアンモニアバンカリングのオペレーション・ガイドラインなどの策定を目的としたリスクアセスメントなど |
住友商事株式会社 | グリーン/ブルーアンモニアの調達・輸送・貯蔵・バンカリングを含む、競争力のある包括的サプライチェーンの構築に向けた検討など |
TOTE Services | 米国初のLNGバンカリング船の建造・保有・運航の経験と知識を活用して、アンモニアバンカリング船の開発、および米国でのアンモニアバンカリングのオペレーション・ガイドラインの策定など |