2019年01月04日
住友商事株式会社
2019年社長年頭挨拶
本日、住友商事本社にて行われました、
当社社長兵頭誠之による年頭挨拶を下記の通りご報告いたします。
記
皆さん、明けましておめでとうございます。
ここ東京、大手町新本社から、世界各地の住友商事グループの皆さんへ、新年の挨拶を申し上げます。
皆さん年末年始はどのように過ごされたでしょうか?私は、自宅でゆったりと、穏やかな6連休を過ごしました。元旦は、大陸から寄せる寒波によって非常に冷え込んだ朝を迎えました。美しい初日を受けて紅く染まり、時と共に純白へと輝きが増す雄大な富士山、そして南アルプスまでを一望できました。また日中も晴天に恵まれ、すがすがしい一日となりました。おいしい日本酒とお節料理をつまみながら、過去を振り返り、そして皆さんと共に迎える100周年について考えていた時、10年前にジャカルタでお会いした、当時のアセアン事務局長のスリン・ピッツワンさんの言葉をふと思いだしました。
彼は、次のように私に語りかけました。「今後、世界のグローバル化が進展する。それは、あらゆる面で格差問題を顕在化し、新たな社会課題を生み続ける。大都市への人口集中、貧富格差の拡大、移民問題、自然破壊――。だからこそ、アセアン諸国の連携、2015年から始まるアセアン経済共同体を通じた協力関係は、非常に大切。社会課題解決に向けた、日本との相互協力関係に、大いに期待している」と。情熱的かつ堪能な英語で力説されたのです。
あれから10年、今でも、彼のメッセージには重みを感じます。「アセアン」、「日本」という言葉を「世界」と読み替えるとその意義が際立ちます。とはいうものの、彼が10年前に描いたグローバル化と、今のそれとは大きく異なるように思います。今後も、そのスピードあるいは、内容はどんどん変わっていくでしょう。
展望を語る前に、もう少し時間を巻き戻して私たちの歩みを振り返ってみたいと思います。
1950年代半ばから70年頃までの日本の高度経済成長期、90年代初めのバブル崩壊、97年のアジア通貨危機、その後のITバブルや失われた20年、2008年のリーマンショック、その後の長期にわたる世界的な金融緩和と景気拡大サイクル。この時代の変遷において、今から100年前に誕生した当社は、1952年に住友商事へと社名変更し、その当時の社長・田路さんの「熱心な素人は玄人に勝る」というスローガン、近年では、70年代の「ビックスリー、ベストワン」、80年代の「総合事業会社構想」、その後の銅地金取引事件や大型減損損失といった危機を全社一丸となって乗り越え、成長し、業容を拡大してきました。この間に、本社オフィスは、大阪の淀屋橋、そして東京の竹橋から晴海、更に大手町へと移転し、時代の変遷にふさわしい組織体制の強化や本社機能の拡充を図ってきました。その道のりは山あり谷あり、とてもダイナミックなものです。
そもそも、近代の住友の事業でタブーとされた「商事活動」を戦後になって起業し、その後七十数年にわたり、飽くなき挑戦を断行し続けて現在に至ります。今までに、グループで働く役職員、お取引先、地域社会、株主の皆様など、さまざまなStakeholdersとの間で培った信頼関係とそれに支えられた多くの実業は、当社グループが持つ、最大かつ最高の財産であり今後の成長を支える原動力です。これらは、今なお、昨今のデジタルデータ覇権に浸食されていない経営基盤であり当社の強み、ではありますが、安住してはいられません。
今私たちは、IoT、ビックデータ、AI、ロボットといった新興技術による第四次産業革命の真っ只中にあります。技術革新がもたらすインパクトは、より速く、更に大きく、私たちの日常生活や社会そのものを変えていこうとしています。一方で、国際社会を牽引したG7/G20の枠組みがGゼロになり、社会格差はますます拡大し、人口増大・高齢化問題など社会課題が顕在化する私たちの社会、グローバル化する世界そのものを、革新的新興技術が、根底から変えていきます。データを所有して社会を統治する一部の者と、その他多数に二分されるというデータ覇権主義、それらがもたらす社会構造のフラグメント化などが、今後、ますます加速していくでしょう。21世紀に入って以降、私たちを取り巻く経営環境の変化の加速には、驚くべきものを感じます。
そういった時代背景を念頭に、昨年を振り返り、今年を考えてみたいと思います。
昨年は、国内外でさまざまな出来事がありました。国内では11月に2025年の万国博覧会の開催地が大阪に決まり、卓球、バドミントン、さらにはフィギュアスケートなどスポーツ分野では若いアスリートの目覚ましい活躍が続くなど、明るく、夢が膨らむ話題があった1年でした。
一方で、政治面では、米中の貿易摩擦問題、英国のEU離脱問題、米国の対イラン制裁発動、移民問題、経済面では、国際政治の混迷を受け、年後半には、世界景気動向に懸念を示すがごとく、世界市場全体が動揺し、IMFが2019年、2020年の世界全体のGDP成長率見通しについて引き下げを行いました。また、世界各地で想定外の自然災害が発生しました。被災地の1日も早い復旧、復興を願うとともに、改めて住友商事グループとしても災害への備え、あるいはあらゆる変化への備えが重要であると痛感した年でした。
今年は、国内では、5月に平成から新元号へ移行する節目を迎え、ラグビーのワールドカップや、日本が議長国を務めるG20など、大きなイベントも予定されています。来年2020年には東京オリンピックが開催されます。また、さらなる構造改革に向けたさまざまな政策に期待したいと思います。
住友商事グローバルリサーチでは、今年の経済見通しを、「世界情勢、経済両面で“高まる緊張”」と表しています。米中通商問題には緊張緩和を期待したいところですが、予断を許さない状況がしばらくは続く、との見立てです。多くの国々の思惑も複雑に絡んでおり、これまでの国際社会が培ってきたルールに見直しが入り、新たな国際秩序や枠組みへの模索が続く、と思われます。
足元、好調を持続してきた米国経済において、短期と長期の金利が逆転する逆イールドが発生しようとしています。これは経験則上、近い将来の景気後退を示唆する事象とされています。株や債券、為替レート、コモディティに至るまで市場価格の不安定な動きは、政治・経済両面での緊張の高まりを反映したものと言えるでしょう。
しかし、そういった一切の事象を全く意に介さない流れがあります。先ほど申し上げた第四次産業革命の進展です。新興技術が全てのビジネスの仕組みに大きな影響を及ぼし、新たなマーケットやニーズを生み出します。また、COP24の採択にあるように、地球温暖化阻止に向けた取り組みが、ビジネスそのものに変革を迫ります。この潮流の中で、勝者と敗者、淘汰が加速していきます。この潮流は変わりません。
そういった年を迎えるにあたり、私からお伝えしたい事が3つあります。
キーワードは、1つ目が「初心と基本」、2つ目が「変革」、そして3つ目が「リーダーシップ」です。
まず、「初心と基本」です。守りましょう。
これからの100年には、多くの挑戦が待っています。困難が伴います。しかし常に基本を大切にしていれば、それらが、過去の100年がそうであったようにこれからも成長を続ける礎となります。我々の基本は、住友の事業精神、当社グループの経営理念、そしてマテリアリティです。それらを実践するために、「Diversity & Inclusion」の推進とコミュニケーション。 組織間連携、共同責任コンセプト、グループ総合力。グループガバナンス、コンプライアンス、これら基本を大切にしましょう。
2つ目は、「変革」です。突き進みましょう。
ますます進む技術革新への対応を含め、あらゆる変化への対応を進めていきましょう。私たちの周りには、まだまだ工夫の余地があり、組織間連携などを通じて、新たなアイデア、新たな価値創造につながるものが無限にあります。従来の常識にとらわれることなく、広い視野で、スケールの大きな発想で、私たちの未来設計図を描き、顧客との関係を再定義し、失敗を恐れず夢の実現に向けて挑戦する。ますます進むデジタル化によるビジネスの再定義を好機と捉え、私たちのビジネスをさまざまな発想で変革し続けましょう。Digital Transformation (DX)によりその価値を最大化する挑戦も続けましょう。
今日の常識は明日の非常識。私たちの事業を通じて、変わりゆく社会を、もっともっと魅力あふれるものにしたい、という夢に向かい、大きな絵を描き、飽くなき挑戦を続けていこうではありませんか。
3つ目は、「リーダーシップ」です。全員で発揮しましょう。
当社グループの役職員一人ひとりが、それぞれの立場で自分に期待された役割と職責を再確認しましょう。自ら担っている責任を全うする為に求められる「リーダーシップ」があります。私にもあります。皆さんにもあります。先ずは、全員で、自分が発揮すべきリーダーシップを自認しましょう。そして、全員で実践していきましょう。
当社グループでは6万人を超す仲間が原動力になり、各組織が掲げた戦略や施策を推進しています。社内外の相手を知り、受け入れ、従来の枠を超えた組織間連携を実践していきます。当社グループ一人ひとりが、真摯な姿勢で、さまざまな事業とそれらの戦略に興味を持ち、コミュニケーションを通じその理解に努め、そこから学び、自らの組織や戦略を変革し、高度化し、新たな価値創造に尽力する。正に、住友商事、そして当社グループそのものが、オープンイノベーションを推進する強力なエコシステムなのです。
私たちが今実践すべきことは、昨年発表した中期経営計画2020(新たな価値創造への飽くなき挑戦)にしっかり織り込んでいます。今年は3カ年中計の2年目、まさに始めた取り組みを形にする、中核の年です。新年のスタートにあたり、改めて、具体的プランを再確認し、実践していきましょう。そして、今年のスタートを新たな100年への第一歩とし、更に一歩、二歩と着実に、皆さんとともに進んでいきたいと思います。
今年2019年が、住友商事グループの新たな100年のスタートに相応しく、また皆さんと皆さんのご家族にとって、充実した幸せな一年となることを祈念して、年頭の挨拶とさせていただきます。
今日がまさにスタートです。明るく、楽しく、前向きに実践躬行しましょう。
以 上
※これは、2019年1月4日に、住友商事グループ役職員向けに行われた年頭挨拶です。
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- 住友商事株式会社 広報部 報道チーム
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