2021年01月04日
住友商事株式会社
2021年社長年頭挨拶
本日、住友商事本社にて行われました、
当社社長兵頭誠之による年頭挨拶を下記の通りお知らせいたします。
記

全世界の住友商事グループの役職員の皆さん、明けましておめでとうございます。
社長の兵頭です。東京より、新年の挨拶を申し上げます。
これより3つのパートに分けてお話しし、新年の挨拶にしたいと考えます。
先ずは、私が全役職員の皆さんと共に大切にしたい思い、これをお伝えします。そして次に、昨年の世界情勢を振り返りながら全グループ一丸となって取り組みたいことを改めてお話しし、最後に、皆さんと共にそれらを実践躬行するときに大切にしたいこと3点を、キーワードと共にお伝えしたいと思います。
【COVID-19対応の心構え】
さて、申し上げるまでもありませんが、昨年は、COVID-19に世界中が大きく動かされた一年でした。
この感染症は、瞬く間に世界中に広がり、未だに、多くの国、多くの地域で猛威を振るっています。移動や経済活動の制限など、世界中で多くの人々がその影響を受けています。皆さんのご家庭や職場においても同様でしょう。ここ東京本社においても、多くの恒例行事の自粛や在宅勤務など、3密を回避するあらゆる手段を講じながら、新年のスタートを切ることとなりました。ワクチンが普及し、集団免疫効果が出てくるのはまだ先になると思われます。それまでは今の状況は続くと覚悟を決めて、感染防止対策、 自衛他衛の実践を継続してまいりましょう。換言すれば、時と共に必ず状況は良くなる、ということです。その時まで、私たち自身が何をすべきかを確認し、私たち自身の手で実践してまいりましょう。
また、このような厳しい状況においても、事業の現場で奮闘し、年を越された多くの仲間がいることを忘れてはなりません。皆さんと共にそういった方々に思いを巡らせ心から敬意を表すると共に、我々一人ひとりが、自らの業務を通じて支えあう事を、改めて、相互に決意したいと思います。
【2020年の振り返りと、2021年に取り組むこと】
昨年は感染拡大を防ぐために、世界の隅々まで、テレワークや時差出勤、web会議などの密を回避するための新しい行動様式が浸透しました。人類がこれまでに開発してきたテクノロジーが、危機への対応手段として急速に活用され、私たちの社会、生活を大きく変容させていることを実感しています。というよりもむしろ、もともとあった変化のスピードを加速させていると表現すべきでしょうか。Withコロナ/Afterコロナの新たな生活様式、変化する社会のニーズへの対応など、今後も難しい舵取りが求められますが、慎重かつ大胆に必要とされる対策を立案し実行してまいりましょう。
世界情勢に目を向けますと、多くの国が未だCOVID-19への対応に追われる中、一方では中国やベトナムはいち早くこの苦難を克服し、各種支援政策も奏功して経済回復を果たしています。昨年11月には米国で大統領選挙が実施されました。バイデン氏の大統領就任後は、トランプ政権とは異なる、国際協調路線への復帰や気候変動問題への対応も含めた経済対策など、新たな政策を打ち出すことが期待されますが、残念ながら、米中両国の関係改善による情勢の安定化については悲観的な見方が大勢です。また、今年、EU地域では、ドイツやオランダを始め、新たな政治体制を決める選挙が続きます。ここ日本でも、衆議院議員総選挙が予定されており、主要各国における政治動向にも注視が必要です。
大国による覇権争いや反グローバリゼーションなどの世界情勢下においても、昨年末にかけて、アジア太平洋地域における自由貿易圏の構築を目指し、日本、中国、韓国やASEAN各国など15の国々が地域的な包括的経済連携協定(RCEP)に署名、またEUと英国間のFTA締結といった大変明るいニュースもありました。連携や協調に向けた地経学的な動きにも注目してゆきたいと思います。
また、各国が、官民をあげて取り組みの姿勢を一つにするとみられるのが、地球環境問題です。先行する欧州に続く形で、日本を含む数多くの国が2050年のカーボンニュートラル化を宣言し、中国も2060年のカーボンニュートラル化を目指す姿勢を打ち出しました。米国もバイデン政権に代わることで、パリ協定への復帰を通じて世界協調に舵を切るものと思われますが、今後は各国が主導権を争いながら、目標達成に向けたルール作りが進むでしょう。私たちも、自ら、昨年6月に宣言した2050年カーボンニュートラル達成を目指して、ビジネスモデルの変革と強靭化に取り組んでまいりましょう。
世界情勢、事業環境が激変する中で、当社は、2020年度の業績予想が1,500億円の赤字となることを昨年8月に発表しました。これは、当社グループが広く展開する事業ポートフォリオの中で、元々弱みを内包していた懸念案件・不採算事業を中心に、COVID-19や景気悪化の影響を大きく受けることを想定するとともに、不採算事業の整理という構造改革第一フェーズを完遂する決意を踏まえ、必要なコストを見込んだものです。そして、2020年度を危機対応モードの一年と位置付け、キャッシュフローマネジメントに取り組み、手元流動性、財務健全性を維持してまいりました。さらに、厳しい状況下でも、トップラインの引き上げとコスト削減の両輪をしっかりと回して、事業環境の緩やかな回復を確実に取り込むことで、一過性を除く当社業績は改善の兆しを見せています。更に、大型事業の再生プランに目途をつけたことを含めまして、不採算事業の整理に向け着実に歩みを進めました。しかし、いまだ道半ばです。今一度、危機対応モードの基本に立ち返り、手元流動性の維持を堅持しながら、不採算事業の整理と業績回復に向けて努力を続けてまいりましょう。
2021年について住友商事グローバルリサーチは、「つかの間の回復、かりそめの安定」の年と表現しています。足元の感染再拡大、COVID-19ウイルスの変異など懸念はありますが、大局的には、ワクチンの普及により感染拡大に、いずれは歯止めがかかり、今年の後半から、世界経済は回復に向かうことを期待します。しかし、各国政府は感染拡大の防止や経済回復に向け、既に様々な形で資金を拠出し、財政状態は綱渡りという国も多く、また世界の景気に影を落とす米中貿易摩擦の改善が見通せないことからも、先行きを楽観できない状況が続くと言わざるを得ません。
このような状況下、冒頭申し上げた通り、COVID-19対策の維持・強化に万全を期すことは言うに及びませんが、私たちが今までやってきたこと、また今後も継続しなければならないことは、変わりません。それは、掲げた危機対応モードの実践と構造改革を私たち一人ひとりがしっかりとやり切ることです。その上で、4月からスタートする新たな中期経営計画の実行に繋げます。次期中計では、一段ギアを上げて、構造改革第二フェーズに取り組みます。その詳細は今後発表しますが、私たちの強みを活かして大きく伸ばせる事業に経営資源を投下すべく、全てのSBUの事業戦略を徹底的に議論し、KPIやKAIを設定してPDCAサイクルをしっかり回していく、そのための新たな制度や施策を打ち出していきます。必要な組織改編も行います。2021年は、成長軌道への回帰に向け、全役職員で、力強く次の一歩を踏み出す、そういった年にしましょう。
昨年、当社として経営基盤を強化する多くの新たな取り組みにも着手しました。昨年6月には、サステナビリティ経営高度化の一環として、6つの重要社会課題と長期目標を設定すると共に、気候変動問題への新たなコミットメントを公表しました。今後、長期的な社会課題の動向を捉えた戦略的な経営資源配分により事業ポートフォリオを強化し、社会とともに持続的成長を実現する、そういった経営を進めてまいります。
また、商社業界の中で、いち早くデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に力をいれ、ビジネスモデル変革へのチャレンジなど新たな成長・競争力強化へ取り組んできたことが評価されまして、昨年8月には経済産業省と東京証券取引所が選定するDX銘柄2020に選出されました。
サステナビリティ経営の高度化とDXの更なる推進は社会の常識となっており、当社グループの持続的な成長に欠かせないことを意味しています。この二つの大きな潮流をしっかりと捉え、SBUの事業戦略に落とし込み、手綱を緩めることなく推進していきましょう。
【3つの大切にしたいこと】
さて、新年にあたり、大切にしたい心構えを、3つのキーワードと共に皆さんにお伝えしたいと思います。
1.初心と基本
まず一つ目は「初心と基本」です。2年前の年頭挨拶でも掲げていますが、今年4月の次期中計スタートに向け改めて意識していきましょう。世界情勢や事業環境が目まぐるしく変わる中、当社グループは構造改革をやり遂げ、早期の成長軌道への回帰を目指します。その中で見失ってはいけないものは何でしょうか。それは住友グループに脈々と流れている自利利他公私一如を始めとする住友の事業精神、当社グループの経営理念と行動指針、この重要な考え方であることは言うまでもありません。様々な場面で様々な判断・行動が求められますが、我々が常に立ち返る価値観、基準として、これらを改めて再確認して頂きたいと思います。また、コンプライアンスの遵守も、重要な基本の一つとして付け加えておきます。
2.挑戦
二つ目のキーワード、「挑戦」です。先に申し上げたように世界は急速に変化、いや進化しています。
このニューノーマルへの動きをチャンスと捉え、私たち一人ひとりも、新たな価値創造や業務効率の改善に改めて挑戦しましょう。人はつい挑戦して失敗するリスクを考えがちですが、今や挑戦しないことこそがリスクです。経験がないことを言い訳にしない。今のままでは何も生まれません。変われません。ありたい姿を目指す上で、我々に足りないモノを理解し、それを獲得する方法を見つけ、実践することが重要です。私たち一人ひとりがチャレンジすると共に、ぜひ周囲の皆さんの挑戦も後押しして下さい。宜しくお願いします。
3.稼ぐことに拘る
最後のキーワードは「稼ぐことに拘る」です。現在進めている構造改革、検討を進めている次期中期経営計画のあらゆる制度や施策、これらを実行することで当社グループは稼ぐ力を回復し、成長軌道に回帰することができます。新たな価値を創造し、顧客や社会に提供した対価として私たちに利益がもたらされます。変化・進化し続ける世界、社会のニーズに対応し、当社グループの事業ポートフォリオをトランスフォームしながら、稼ぐこと、価値創造にとことん拘って、貪欲に取り組んでいきましょう。それぞれのSBUが事業戦略を徹底議論し、磨き、そして実践躬行してください。またお互いに切磋琢磨して下さい。競争です、これは。営業部門だけではありません。その活動を支えていくコーポレート、全世界の地域組織を含めた総力戦です。
今申し上げた「初心と基本」、「挑戦」、「稼ぐことに拘る」、この3つのキーワードで2021年をスタートしたいと思います。そして、「Enriching lives and the world.」この言葉を胸に、当社グループの総力を結集して、新たな成長に向けて力強く歩みを進める一年としましょう。
最後になりますが、COVID-19に罹患された方々、並びにご家族にお見舞い申し上げると共に、私たち一人ひとりが、しっかりと感染防止策を実行することで、2021年が皆さんそしてご家族にとって、また当社にとって、我々のグループにとって良き一年になりますよう祈念して、年頭の挨拶と致します。
以上
※これは、2021年1月4日に、住友商事グループ役職員向けに行われた年頭挨拶です。
尚、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として、密を回避した上で実施しております。
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- 住友商事株式会社 広報部 コミュニケーションチーム
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