2024年01月04日
住友商事株式会社
2024年社長年頭挨拶
本日、住友商事本社にて行われました、当社社長の兵頭誠之による年頭挨拶を下記の通りお知らせいたします。
記

元日早々、日本では能登半島地震が発生しました。被災された方々、また、被災地にご家族やご友人をお持ちの方々に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。世界中で戦禍・災害に見舞われ困難な状況にある方が多くいること、また多くの命が失われる事態が続いていることに大変心が痛みます。一日も早い事態の収束・改善を願って止みません。
【取り巻く環境】
昨年の世界情勢を振り返ると、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、イスラエルを中心とした中東情勢など非常に不安定な状況が続き、グローバルサプライチェーンの変化や、世界貿易の鈍化を招きました。昨年の世界の平均気温は観測史上最高を記録し、COP28では気候変動緩和のため「2050年ネットゼロに向けた化石燃料からの移行の加速」に合意するなど、国際的なルール策定や議論が進展しました。
一方で、エネルギー価格の高騰や金利高の影響で産業界・消費者の負担が増えている状況も踏まえ、EUや英国で内燃機関自動車の将来的な販売禁止の方針を見直すなど一部脱炭素シナリオ実現を減速させる動きも見られました。また、Chat GPTに代表される生成AIは自然言語理解と対話の能力が顕著に向上し、多様な業界や日常生活での活用が進んだ一方で、プライバシー侵害のリスクなど、倫理的・社会的な危険性の議論も活発になりました。
今年の世界情勢・経済見通しについて、住友商事グローバルリサーチは、「転換点を迎える世界」と表現しています。今年は米国大統領選挙、欧州議会選挙をはじめとする各国選挙も予定されています。大国間の覇権争いやグローバルサウスの存在感が示す国際秩序の変化には注意が必要です。また、全世界的な経済の低成長、金利の引下げとそれに伴うショックイベントの発生の可能性もあり、様々なシナリオへの転換点を迎えていると言えます。我々がこのような環境下で勝ち抜くためには、こうした世の中の動きの本質を理解し、それぞれの事業で取れるリスク、取れないリスクを冷静に分析し、判断しながら戦略的に取り組むことが大切です。
もちろん、先行きが読みづらく、様々なシナリオを想定しながらビジネスを行っていくことは簡単なことではないですが、顧客と社会に真摯に向き合い、一歩先の社会が必要とする価値を創造することは、様々な荒波を乗り越えてきた当社グループの歩みそのものです。我々にはその歩みの歴史を繋いでいける実力と仲間が備わっています。目下の歴史的な転換点を当社グループの飛躍の好機と捉え、新たなニーズをくみ取り、自らも社会も利し、常に社会から必要な存在であり続ける「自利利他公私一如」の精神を体現していきましょう。
【当社にとっての2024年】
「事業ポートフォリオのシフト」「仕組みのシフト」「経営基盤のシフト」の3つのシフトを掲げた中期経営計画「SHIFT 2023」も残すところ3か月となりました。SBU単位での戦略遂行とPDCAサイクルを徹底し、全社一丸で構造改革に取り組んだ結果、⾼い収益性と下⽅耐性を兼ね備えたポートフォリオへのシフトが進み、当社の実力は着実にあがっています。成長に向けたゴールを設定し、戦略を立て、やるべきことを明らかにしてやりきる。これが「SHIFT 2023」の根幹です。COVID-19や地政学リスクの顕在化の影響を受け、仕事はおろか日々の生活にさえ不安を持つ時期もあったかと思いますが、それぞれのコミットメントを世界各地の現場で弛まぬ努力を積み重ね、奮闘し、成果を出して頂いた皆さんに敬意を示すと共に心より感謝申し上げます。我々のこれからの成長を為すのは、約8万人の当社グループ社員の皆さんです。そのなかでも、グループ900社の発展を支え、変革を推進し、総合力を発揮し、3強経営をドライブする約8,000人のグローバル本社の皆さんが、私たちの明日を創ります。
これまで、日本、米州、東アジア、アジア大洋州、中東アフリカ、欧州、CISの主要7拠点に分け、商品部門本部制を敷いた東京本社と地域(独法)組織との位置づけの下でグループ経営を行ってきましたが、歴史的転換点を迎えた今、そして「SHIFT 2023」をやり終えようとしている今、ポスト「SHIFT 2023」に向け、今後の変化のスピードに即したグローバルな成長を目指すにふさわしい新体制、これからの市場の変化を先取りしアジャイルにスピード感をもって戦略を推進できる新体制に切り替えたいと思います。7拠点が相互に連携し、不可分一体を成す機能を高いレベルで発揮し、当社グローバルグループの要として、単体、事業会社、グループ全体のそれぞれの成長を創る「3強経営」を実践する。皆さん一人ひとりが、それぞれのマーケットで、競争力・強みを磨き、SBU戦略を常に強化・推進し、当社グループをNo.1事業群を擁する企業集団へと変化させる。それを実践するにふさわしいこの新体制・コンセプトを私は、「グローバル本社」と呼びたいと思います。
〇グローバル本社は、激変する世界において、現場力の更なる強化を牽引します。世界各地7拠点に展開する私たちのグローバル本社が、各市場の前線を担い、全53 SBUがそれぞれの戦略を着実に実行すると同時に、常に市場の変化を先取りしてSBU戦略を改革し続けます。
〇グローバル本社は、常に、ローカル視点とグローバル視点を駆使して、短期、中期、長期の思考を巡らせ、迅速に行動し、当社グループ全体の選択と集中を推進します。全てのSBUがNo.1事業群となり、当社グループの総合力を高め続ける。その為に、世界7拠点に展開するグローバル本社自身が、常に自らの機能を強化し続けます。
そうした総合力に満ちたグローバル本社へ、当社の世界7拠点網を変貌させ、私たちは「3強経営」を実践し、各事業の現場は、市場や顧客のニーズを常に先取りしながら、アジャイルかつ自律的に戦略遂行できる体制を共に築いてゆきたいと思います。8,000人のグローバル本社を構成する営業とコーポレートの全員が一丸となり、今日からそのスタートを切りましょう。足下、「SHIFT 2023」でやり残したことに対処しつつ、構造改革によって整えた事業基盤をベースに、積極的な投下資本拡大による飛躍的な成長を目指し、グローバル本社への変革により機動力を強化し、No.1事業集団に向かって力強く歩み始める年としましょう。
【役職員へのメッセージ】
さて、新たな一年のスタートにあたり、皆さんに是非意識し実践いただきたい点を二つお伝えします。
商いの基本
まず、一つ目は「商いの基本」です。
「基本」と言うと初歩的なイメージも想起されますが、誰もが理解している「商いの基本」を完璧にやり切ることはとても難しいことだと思います。私自身もこの基本をしっかり守れているか、日々自問自答しながら業務に臨んでいます。顧客の課題解決に真摯に向き合い、常に複数の解決策・アイデアを持ちながら、誰よりも迅速に且つ粘り強く行動する。対面業界に刺さり、情報の鮮度と確度で競合を凌駕(りょうが)する。自らが取っているリスクを十分に把握し見合いのリターンやリスクヘッジの対応を入念に検討する。こうした現場に立つ一人ひとりの基本動作と成果の積み重ねが当社グループ全体の実力そのものです。
「SHIFT 2023」を通じ、時勢の変遷、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、そしてサステナビリティの強化にふさわしいSBU単位での戦略策定・遂行プロセスが確立し、各SBU戦略における皆さん個々人の役割は、より明確になっていると思います。大局観は持ちながらも、やるべきことを商いの基本に則りしっかりと行い、一つ一つ成果の積み重ねを当社グループの成長に繋げて、住友の事業精神を体現していきましょう。
企画の遠大性
二つ目は「企画の遠大性」です。
住友の事業精神の一つである「企画の遠大性」は、創業時の住友の事業が長期的・継続的な取り組みを要する銅山経営を根幹にしていたことに由来するもので、目先の現実は重んじつつも、その先に何を目指すのか、どのように業界を変えていくのか、また社会に対してどのような価値や変革を如何に持続的にもたらすのか、長期的な視点を持って深く広く思考していくという考え方です。
先ほど申し上げましたように、我々は歴史的な転換点を迎えています。脱炭素の文脈では、CO2の排出はコストの負担無く、無制限にできるという産業革命以降の前提が今や崩れ去りました。今後の競争力を左右するのは、いかに、GHG(温室効果ガス)フリーかつS+3E(Safety + Energy Security, Efficiency & Environment)を満たした総合効率の高いエネルギーを手にするかです。この点に着目し、我々の価値観自身も再定義しながら、将来を見据え長期的な視点で持続可能な社会を追求していく必要があり、まさに「企画の遠大性」が求められています。
単に仕入れ先と販売先を繋げることを考えるのではなく、バリューチェーン全体を俯瞰した価値創造と成長の仕組みを、コアリションを組成し、バンカブルになるまで突き詰めていく。発想はローカル視点から始めるものの、常にグローバルに拡大展開し、No.1事業に育てる基本構想を描いた上で、我々の強みである「ビジネスエンジニアリング」の機能を発揮し、各市場・業界で実力とプレゼンスを上げ、変化を先取りした新たな価値を提供し、次世代に残っていく、当社らしい事業を育てていきましょう。
また、大きな構想に向け、深く・広く思考していくために、社内外の様々な知見や意見を活用するのは当然として、一見自らの考えとは異なる意見にも真摯に向き合い、それらを貪欲に自らの構想に取り込んでほしいと思います。また、力強いグローバル本社を築くためにもDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)の実践が欠かせません。世代、立場、国籍、価値観などの違いを越え意見をぶつけ合い、新たな価値創造とビジネスモデル、また、それをドライブするより良き人の集いを作り上げ、かつての我々の先人がそうであったように、夢と志を胸に100年先を見据え「Enriching lives and the world」の実現に向けた歩みを進めていきましょう。
結びにあたり、2024年が、当社グループの益々の発展、そして皆さんと皆さんのご家族にとって、幸せな1年となることを祈念して、年頭の挨拶といたします。
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- 住友商事株式会社 広報部 コミュニケーションチーム
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