2025年10月06日
住友商事株式会社
シンガポール政府より船舶用アンモニア燃料供給事業における政府補助金を獲得~参画のコンソーシアム、アンモニアバリューチェーン構築における事業開発者に選定~
住友商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:上野 真吾、以下「住友商事」)は、シンガポール海事港湾庁(以下「MPA」)より、シンガポール港における船舶用アンモニア燃料供給事業に関する政府補助金「Maritime Innovation and Technology Fund(以下「MINT基金」)」の受領権を獲得しました。本補助金は、アンモニア燃料供給の安全性・効率性向上に焦点を当てた研究開発を支援するものです。住友商事は、2027年から同国でアンモニア燃料の供給実証を行い、MPAと緊密に連携して安全基準やオペレーションガイドライン、緊急時の対応を制定していきます。
また、シンガポールの現地パートナーであるKeppel Ltd(以下「Keppel」)とAdvario Asia Pacific Pte Ltd(以下「Advario」)とともに参画するコンソーシアムは、MPAおよびシンガポールエネルギー市場監督庁(以下「EMA」)より、同国のジュロン島における発電および船舶燃料向けのアンモニアバリューチェーン構築(以下、本事業)の事業開発者に選定されました。コンソーシアムは今後、基本設計(FEED)を進めていきます。
供給実証を通して、住友商事は、海運業界の脱炭素化に貢献すると同時に、今中期経営計画において成長分野と位置付けるエネルギートランスフォーメーションへの取り組みを推進します。
本事業について
MPAとEMAは、低炭素アンモニアを用いた発電事業と船舶燃料供給事業における包括的なサプライチェーン構築(調達・輸送・貯蔵・最終需要家への供給)を目指し、2022年末に共同入札を実施し、事業提案を募集していました。住友商事は、Pre-FEED(注1)を実施した複数の提案者の中から選定され、船舶用アンモニア燃料供給の実証開始に向けた次段階のFEEDおよびシンガポール港における供給実証の準備を進めることとなりました。併せて、住友商事は、提案者の中で唯一、MINT基金を受領することとなります。MINT基金は、海事分野の新技術導入を対象とした補助金で、シンガポール港でのアンモニア燃料補給における研究開発と、安全性および運用効率の向上に資するイノベーションを支援するものです。
船舶向けアンモニア燃料
アンモニアは、海運業界における温室効果ガス(以下「GHG」)の直接排出を削減する有望な代替燃料の一つと考えられています。アンモニアへの燃料転換は、2030年までに国際海運のGHG排出を2008年比で少なくとも20パーセント削減し、2050年までにライフサイクルベースでネットゼロという国際海事機関(以下「IMO」)の目標達成に大きく寄与することが期待されています。
シンガポール港は、港湾戦略の一環として、次世代船舶燃料の供給体制を構築することで、海運業界の脱炭素化を目指しています。
住友商事のシンガポールにおけるアンモニア燃料供給事業
住友商事は、2021年より、シンガポールにおけるアンモニア燃料供給事業の開発に取り組んできました。2023年には、アンモニア燃料の需要家であり、大手海運会社のHöegh Autolinersとシンガポールおよび米国における自動車運搬船向けアンモニア燃料供給について基本合意を結びました。今後、住友商事は、シンガポール港におけるアンモニア燃料供給の実証に段階的に取り組む方針です。MPAや主要需要家と緊密に協議し、実証事業で得られた知見を生かしながら、2030年までの本格的な商業化を目指します。
シンガポール政府によるコンソーシアム選定
住友商事は、MPAとEMAが募集した事業提案において、シンガポールの現地パートナーであるKeppel、Advarioとコンソーシアムを組んでおり、この度、コンソーシアムが次のFEEDフェーズに進むことが決定しました。本コンソーシアムはFEEDの結果を持って、55-65 MWのアンモニア発電所の建設と、アンモニア貯蔵ターミナル構築、および船舶用アンモニア燃料供給を進め、同国の脱炭素化を支援します。Keppelはアンモニア発電事業者として、Advarioはアンモニア貯蔵ターミナル事業者として、そして住友商事は船舶用アンモニア燃料供給事業者としてコンソーシアムに参画しており、住友商事は今後もKeppelおよびAdvarioと密に連携しながら、低炭素アンモニアのサプライチェーン構築において重要な役割を担うアンモニア燃料供給事業を推進していきます。
- 住友商事 海洋・海運エネルギーソリューションSBU長 山口一喜
- 今回、政府補助金受領者として選定されたことは、住友商事にとって重要な節目です。住友商事は、2021年からアンモニア燃料供給の事業化を検討し、シンガポールの規制当局と緊密に連携しながら事業の基盤を築いてきました。持続可能な海運の未来を形作る戦略的パートナーとしてMPAが当社に寄せた信頼に深く感謝します。真の規模拡大と商業化の実現には、単独企業の枠を超えた、海事バリューチェーン全体にわたる連携が不可欠です。この連携の重要性をコンソーシアムパートナーであるKeppelおよびAdvarioと分かち合い、地域や世界のモデルとなるクリーンアンモニアのサプライチェーン構築に向けて共同で取り組んでいることを誇りに思います。
- Keppelインフラ部門 CEO Cindy Lim
- 低炭素エネルギーの未来への道を開く先駆的な事業をリードできることを光栄に思います。Pre-FEEDフェーズでの成果に基づき、パートナーの住友商事、Advarioと緊密に連携し、Keppelの豊富なエンジニアリング知識とオペレーション実績を活用して、低炭素発電および船舶燃料供給に向けたコスト競争力のある拡張可能なアンモニアバリューチェーンを実現します。本アンモニア発電事業が実現すれば、世界初のアンモニア燃焼発電所の 1つとなり、クリーン燃料ソリューションと世界的な脱炭素化の新たなベンチマークとなるでしょう。
- Advario CEO Bas Verkooijen
- コンソーシアムのパートナーであるKeppelおよび住友商事とともに、EMA・MPAからシンガポールにおける低炭素アンモニアソリューションの提供事業者に選定されたことを誇りに思います。これはパートナーシップの力の好例であると同時に、エネルギー転換において先駆的役割を果たすというAdvarioの決意を示すものです。
- Pre-FEED
Preliminary-FEED(Front End Engineering and Design)の略。FEED(Front End Engineering Design)の前段階の概念設計/概算費用検討のこと。
関連情報:
シンガポールにおけるアンモニア燃料事業の共同開発に関する覚書を締結
COP28にてシンガポールおよび米国における自動車運搬船向け燃料アンモニア供給に関する基本合意を発表
米国初、アンモニアバンカリング船の基本設計承認を取得
北米東海岸における船舶向けアンモニア燃料供給の事業化に向けた共同検討を開始
米国西海岸における船舶向けアンモニア燃料供給の事業化に向けた共同検討を開始
- 本件に関する問い合わせ先
- 住友商事株式会社 広報部 コミュニケーションチーム
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