2023年01月30日
光触媒を用いた世界初のサステナブル燃料製造のプロジェクトについて~Syzygyの最先端技術を生かした脱炭素の取り組みを加速~
住友商事グループは、エネルギー大手のEquinorのコーポレートベンチャーキャピタルであるEquinor Venturesとともに、米国のスタートアップであるSyzygyが、同国の著名な研究機関であるRTIインターナショナルと行う、光触媒技術を用いた世界初のサステナブル燃料製造のプロジェクトに参画します。
世界の脱炭素化を進めるためには、水素やアンモニアなどのCO2を排出しないクリーンエネルギーの普及が必要不可欠です。しかし、これらのエネルギーは太陽光・水力・石炭・天然ガスなど、自然そのままの状態で使用できる一次エネルギーとは異なり、化学反応を用いてそれらのエネルギーを転換したうえで使用する必要があります。例えば、クリーンエネルギーとして近年大きな注目を集めている水素の製造プロセスでは、水の電気分解、水蒸気や天然ガスの改質、アンモニアの分解など、さまざまな化学反応が必要になります。
この一次エネルギーの転換にあたり、これまでは化石燃料を燃やすことで熱エネルギーを発生させ、化学反応を促進することが主流でした。しかし、この熱エネルギーを使った化学反応は、大量のCO2が発生してしまうことに加え、コストやエネルギー効率などの点で課題があります。
Syzygyは、2017年に米国ライス大学にて設立された、光触媒を利用してさまざまな化学反応を電化する世界最先端の技術を持つスタートアップです。光触媒は、光を照射することにより、さまざまな化学反応を促進したり、化学物質のエネルギーを増加させたりすることができる物質です。Syzygyが独自に開発した光触媒を用いることで、これまで熱エネルギーによって高温高圧下で引き起こしていたさまざまな化学反応を電化することができ、CO2排出量の削減だけでなく、低コストでエネルギー効率を高めることができるようになります。Syzygyは、この技術をクリーンエネルギーの普及にあたり必要となるさまざまな化学反応に適用することで、日本全体の排出量以上に相当する年間10億トンのCO2排出削減を目指しています。
本プロジェクトでは、Syzygyが持つ最先端の技術により、メタンとCO2から合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)を製造した後、RTIインターナショナルの設備を用いて従来のジェット燃料、ディーゼル、ガソリンの代替になり得るSAF(持続可能な航空燃料)やメタノールなどのさまざまな低炭素燃料を製造します。また、原料となるメタンにバイオガスを使用することで、より低炭素の燃料の製造も狙います。これらの製造過程では、CO2を原料とし、化学反応を起こす際に再生可能エネルギー由来の電源を使用するため、カーボンニュートラル社会の構築に大きく寄与することができます。本プロジェクトを通して得られたデータを基に装置の最適化などを行い、住友商事グループは、SAFやディーゼル、メタノールなど、各地の需要に応じた低炭素燃料の商業生産を、地産地消型で行うことを目指します。
住友商事グループは、2019年にSyzygyへの出資を行って以降、計2回の増資に応じるとともに、同社の技術を活用した水素・アンモニア関連事業の開発に取り組んできました。本年8月からは、Syzygyおよび韓国最大手の化学メーカーであるLOTTE Chemicalと共同で、世界初の光触媒を用いたアンモニア分解による水素製造の実証試験を韓国にて行います。本プロジェクトを通してSyzygyとの取り組みをさらに加速させ、同社が持つ世界最先端の技術の商用化をサポートするとともに、当該技術を活用した水素やアンモニアなどの低炭素燃料の製造事業への参画も検討していきます。
住友商事グループでは、水素・アンモニア・合成メタンなどの低炭素エネルギーの供給により、気候変動の緩和、産業や地域社会の脱炭素化推進をリードすることをビジョンに掲げており、本プロジェクトへの参加やSyzygyとの取り組みは、その実現に向けた大きな一歩です。今後も関連事業の推進により、持続可能なエネルギーサイクルを実現し、脱炭素化社会の構築および気候変動緩和に大きく貢献すべく、さまざまな取り組みを加速させていきます。