2023年03月09日

グリーン水素普及の加速に向けた取り組み~イスラエルのグリーン水素製造技術スタートアップH2Proとの連携~

住友商事グループの総合力を生かしたグリーン水素の社会実装

住友商事は、イスラエルのグリーン水素製造技術を保有するH2Proとグリーン水素の商用生産を共同で取り組むべく覚書(以下「本覚書」)を締結しました。テクニオン・イスラエル工科大学発のスタートアップであるH2Proは、2019年の会社設立後順調に事業拡大を実現し、2022年に10キロ/日のグリーン水素生産に成功しました。今後、2023年中に、イスラエルの石油化学事業者および再生可能エネルギー事業者と連携して、200キロ/日のグリーン水素生産の実証実験をイスラエルで行い、2024年には欧州・中東地域で約10トン/日のグリーン水素の商用生産を計画しています。住友商事は、H2Proのイスラエル国内での実証実験と、住友商事グループ内外でのH2Proのグリーン水素製造装置導入を支援し、両社は、2020年代後半の数百トン/日のグリーン水素生産を目指します。また、製造装置に必要な各種部品を住友商事グループの広範な取引基盤を活用し、H2Proに供給するとともに、住友商事とH2Proは、将来的にグリーン水素製造装置の共同製造も検討します。

低コストのグリーン水素製造を可能にするH2Proの技術力

脱炭素化社会の実現に向けて、利用時に二酸化炭素を排出せず、かつ貯蔵・運搬が可能な、水素のさらなる活用および普及が期待されています。一方で現在、商用生産される水素は低コストで製造できる石炭や天然ガスなどの化石燃料を用いた方法が主流で、製造過程で二酸化炭素を排出します。二酸化炭素を水素製造時に排出しない方法として、水の電気分解がありますが、製造コストや操業コストの高さが課題となっています。

H2Proは、水の電気分解を活用した新たな水素製造技術「E-TAC」(※1)を開発しています。通常の水の電気分解による水素製造では、酸素と水素が同時に発生し、混ざらないようにする必要があるため、高価な貴金属が必要な隔離膜(※2)を使用しており、高コストに繋がっています。「E-TAC」は、H2Pro社が開発した電極を用いて酸素と水素を別々に発生させる技術で、隔離膜が不要になり、電解効率が大幅に向上します。また、「E-TAC」は装置の構造が既存のものよりシンプルかつ効率的なものになっており、製造装置のコスト低減や水エネルギー効率を高くすることで、低コストでの水素製造が実現可能になります。

「E-TAC」の写真
「E-TAC」の製造工程

住友商事ならではの脱炭素化社会実現への挑戦

住友商事は、1998年に設立した米国・シリコンバレーのPresidio Venturesをはじめ、20年以上にわたり、革新的な技術・事業モデルを保有するスタートアップ企業への投資と、投資先との連携を通じたビジネス創出活動を行っています。2019年には、スタートアップ大国のイスラエルにベンチャーキャピタルのIN Ventureを設立しました。IN Ventureは、2020年にH2Proに出資し、出資後も密に連携することで、本覚書の締結に至っています。他地域においても、住友商事は米州住友商事が出資する米国スタートアップ企業のSyzygyと連携し、光触媒技術を用いた世界初のサステナブル燃料製造のパイロットプロジェクトにも参画しています。

住友商事は、水素を将来の重要なエネルギーのひとつとして考えており、今後もスタートアップ企業との連携を通じた新技術の積極的活用で、脱炭素化社会の構築に挑戦していきます。

  1. E-TAC:Electrochemical, Thermally Activated Chemicalの略
  2. 隔離膜:酸素と水素が同時に発生する通常の水の電気分解において、酸素と水素の混合を防ぐための仕切り

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