2024年01月11日

サトウキビと木材由来のバイオマスを活用した
新たなバイオ燃料およびバイオケミカル製造の実証実験を開始

住友商事は、ソラリアントキャピタル(ソラリアント)と2023年12月7日に新たなバイオ燃料製造およびサプライチェーンの構築に関する基本合意書を締結し、バガス(※1)とウッドチップから製造したバイオ燃料でディーゼルエンジンを稼働する国内初の実証実験を開始します。

※1 製糖工場でサトウキビを圧搾した後の搾りかす
左:ソラリアントキャピタル Managing Director ダニエル・キム氏 右:住友商事 高村豊グリーンケミカル開発部長

ソラリアントは米国カリフォルニア州に本社を持つ再生可能エネルギーの開発・投資会社で、日本法人ではバイオ燃料の取引も行っています。今回、ソラリアントが開発したバイオ燃料は、現在一般的な廃食油由来のバイオ燃料と異なり、バガスやウッドチップを熱分解して生まれる炭化物を重油と混合したバイオマス比率30%の「バイオマス石油混合燃料」です。今後、炭化物に水を混合したバイオマス比率100%の「バイオマス水混合燃料」の製造も目指していきます。
また、熱分解時に、炭化物と同時に精製される「揮発油」については原油代替活用を目指し、国内の石油精製メーカーなどと協働し、バイオケミカルの製造も視野に入れ、さらなる実証実験を進めていきます。

バイオマス活用の社会課題

今回の実証でバイオ燃料の原料とするのは、製糖工場で処理しきれないバガスと森林資源から供給されるウッドチップです。

世界で年間約1億トン排出されるバガスは、製糖工場のボイラーの燃焼に利用されているものの、ボイラーの燃料効率が向上しているほか、サトウキビの品種改良によりバガス発生量が増え、利用しきれず廃棄されるバガスが年々増えており、その廃棄が社会問題となっています。

日本の森林面積は国土面積の66%である約2,500万haで、その4割の約1,000万haが人工林となっています。人工林は戦後から高度経済成長期に植林されたものが多くを占め、うち半数が50年生を越えて伐期を迎えているものの、伐採や再造林が進まず、資源利用されないままの木材資源が多く存在します。

これらの余剰バガスや木材資源をバイオ燃料やバイオケミカル製造に活用することで、世界や日本における、バイオマス廃棄による環境汚染解決や、脱炭素社会に資する取り組みを目指していきます。

さらに、石油資源のほとんどを輸入に依存している日本にとっては、バイオマス資源を活用することでエネルギー自給にもつながる取り組みとなります。住友商事も参画しているプラチナ構想ネットワーク(※2)が掲げている「プラチナ森林産業イニシアティブ(※3)」によると、現在ある日本の森林資源を最大限に活用できれば、1割のCO2削減と4.7兆円/年の直接効果があるとされています。

※2 プラチナ構想ネットワーク
※3 プラチナ森林産業イニシアティブ

今後の実証実験と事業展開

今回の取り組みでは、サトウキビ生産の北限で杉生育の南限である鹿児島県の種子島で、2024年にソラリアントが実証設備を建設します。原料であるバガスは住友商事の持分法適用会社である新光糖業から、ウッドチップは種子島の森林組合から供給され、実証設備で製造された燃料は2025年から住友商事グループを通じて、主に重油を使用している需要家に対し提供していく予定です。また、実証実験終了後、住友商事とソラリアントは商業プラントを建設し、2027年度から本格的にバイオ燃料およびバイオケミカルの販売を実施する予定です。

住友商事グループは、総合商社として培ってきたさまざまな領域での事業実績、中でもバイオケミカル関連事業の知見や開発実績を生かし、事業化後は、バイオ燃料およびバイオケミカルのマーケティングおよびトレーディングを担います。

これらの一連の取り組みは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)(※4)共創分野(本格型)における東京大学未来ビジョン研究センター「ビヨンド・“ゼロカーボン”を目指す“Co-JUNKAN”プラットフォーム(※5)」研究拠点(プロジェクトリーダー:菊池康紀准教授)の研究開発課題「食品生産と生態系保全を強化するGX技術の実証・社会実装」(課題リーダー:小原聡特任准教授)において、代表機関である東京大学や参画企業のソラリアントや日本触媒、新光糖業などとも緊密に連携し、本事業の実現に向け協力していきます。

※4 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)
※5 ビヨンド・“ゼロカーボン”を目指す“Co-JUNKAN”プラットフォーム

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