2025年04月09日
住友商事株式会社

フュージョンエネルギー派生技術および医療用アイソトープの日本を含むアジア展開に向け、米SHINE Technologies社と戦略的業務提携を締結~がん治療・診断向け医療用アイソトープのサプライチェーン構築を目指し、事業性調査を実施~

住友商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:上野 真吾、以下「住友商事」)は米州住友商事(以下、総称して「当社グループ」)を通じて、フュージョン(核融合)エネルギー(注1)の開発・商用化を推進する米国のSHINE Technologies(本社:米国ウィスコンシン州、CEO:Greg Piefer、以下「SHINE社」)との間で、同社が保有するフュージョンエネルギーおよび派生技術、医療用アイソトープ(注2)の日本を含むアジア地域における流通・事業展開に向けた戦略的業務提携(以下「本提携」)に関する覚書を締結しました。

本提携は、SHINE社にとって全事業ポートフォリオを包含する初の戦略的業務提携となり、同社が保有するフュージョンエネルギー派生技術や医療用アイソトープの事業性調査、物流および法的要件の検討を含む、安定的なサプライチェーンの構築を目的としています。当社グループはSHINE社の製品・サービスに関する市場調査を実施し、事業性が認められる場合には、日本を含むアジア地域における販売代理店としての役割を担う予定です。

SHINE社との戦略的業務提携の背景

近年、カーボンニュートラル社会の実現に向け、持続可能なエネルギー供給源としてフュージョンエネルギー技術の開発が急速に加速する中、その派生技術が医療や産業の分野でも注目を集めています。

2005年に設立されたSHINE社は、これまでに累計8億ドル以上を調達し、フュージョン業界で資金調達額第3位の実績を持つ企業です(2024年7月時点/注3)。派生技術においてすでに商用化実績を有し、同社の中性子イメージング技術(注4)は、製造、航空宇宙、防衛の各分野における品質管理や非破壊検査に用いられています。核医学分野では、キャリア非添加Lu(ルテチウム)-177を含む重要な医療用アイソトープを製造しており、各医療用アイソトープの安定供給が可能であることから、迅速かつ安定的な供給体制の確立が課題とされる同分野において革新的なソリューションであると期待されています。

なお、Lu-177を含む医薬品は、日本国内ではソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍を対象に承認されており、米国ではこれに加え、前立腺がんも適応対象とされています。また、核医学分野の世界市場規模(注5)は2021年の60億ドルから、2031年には350億ドルまで成長する見込みです。

当社グループでは、医療用アイソトープの流通・事業展開にとどまらず、中性子イメージング技術の活用、放射性廃棄物のリサイクリング、フュージョンエネルギーの開発といったSHINE社の多様な事業ポートフォリオに対応する形で、グローバルかつ横断的な事業開発に取り組んでいきます。

当社グループのフュージョン分野における取り組み

当社グループは、カーボンニュートラル化実現へ向けたフュージョンエネルギーおよび派生技術の社会実装を見据え、国内外で先進的な取り組みを進めています。2022年には米国・TAE Technologies社への出資を実施し、2023年には英国・Tokamak Energy社との協業を開始しました。TAE Technologies社においては、先進燃料p-B11(水素とホウ素)を用いたフュージョン装置(注6)に向けた開発を進めながら、同社の事業会社であるTAE Power Solutions社とTAE Life Sciences社が保有するフュージョン派生技術の社会実装に取り組んでいます。また、Tokamak Energy社においては、同社が保有するフュージョン技術の幅広い産業応用に向けた取り組みを行っています。
今後もパートナー企業各社の技術普及と商用化を支援すべく、当社グループの知見とネットワークを生かし、サプライチェーンの調査・確立や日系メーカー・省庁とのリレーション構築を推進していきます。

核融合関連企業・米TAE Technologiesへの出資参画について

フュージョンエネルギーの社会実装に向けた英Tokamak Energyとの協業について

フュージョン反応のイメージ図
前立腺がんに対するLu-177治療後の寛解を示す例(左:治療前、中央:1クール目治療完了後、右:2クール目治療完了後)
航空用タービンブレードへの中性子イメージングの活用例(左:低エネルギーのレントゲン写真、中央:高エネルギーのレントゲン写真、右:中性子イメージング)

(注1)水素などの軽い原子核同士を融合させ、ヘリウムのような別の少し大きな原子核となる際に、大量のエネルギーを放出する反応をフュージョン反応という。熱エネルギーを用いた発電技術は、温室効果ガスを排出せず、燃料供給も安定していることから、原子力や火力に代わる基幹エネルギー源として期待されている
(注2)病気の診断や治療といった医療分野で用いられる放射性同位元素のこと
(注3)「FIA Launches 2024 Global Fusion Industry Report - Fusion Industry Association」より
(注4)物体に中性子を照射することで内部構造を可視化する非破壊検査技術。X線とは異なる透過特性を持ち、金属内部や液体の観察が可能
(注5) MEDraysintell が提供する「Nuclear Medicine Report & Directory Edition 2023」より
(注6)内閣府の「フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方(素案)」に記載されている「軽い原子核同士が融合して別の原子核に変わる際に放出されるエネルギー(フュージョンエネルギー)を使用する装置」

住友商事について
住友商事(TYO: 8053)は64の国と地域に125の拠点を有し、グローバルに強固なネットワークを持つ総合商社です。住友商事グループ全体では約900社、連結ベースで約8万人の社員を擁しており、鉄鋼、自動車、輸送機・建機、都市総合開発、メディア・デジタル、ライフスタイル、資源、化学品・エレクトロニクス・農業、エネルギートランスフォーメーションという9つのグループで事業活動を行っています。400年以上にわたり受け継がれてきた住友の事業精神を核としている住友商事は、コーポレートメッセージとして「Enriching lives and the world」を掲げ、社会により高い価値を創出していきます。
住友商事
SHINE社について
SHINE Technologiesは、米ウィスコンシン州に本社を置く、次世代型フュージョンエネルギーの分野におけるリーディングカンパニーです。安全性・コスト効率・環境配慮を兼ね備えた革新的なフュージョンエネルギーおよび派生技術の事業化を展開しています。医療用アイソトープ分野においては、独自技術によりキャリア非添加Lu-177を製造するほか、心疾患やがんの診断に用いられるMo(モリブデン)-99の商業生産も視野に入れています。フュージョンエネルギー技術に関する知見を活かし、エネルギー分野における課題の一つである放射性廃棄物のリサイクルにも取り組むなど、包括的かつ先見性あるアプローチにより、テクノロジー、医療、持続可能なエネルギーといった多岐にわたる領域で変革を推進し、確かな存在感を示しています。
www.shinefusion.com

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