2025年05月14日
住友商事株式会社
CO2とシリコン系廃棄物を活用し次世代半導体の原料を合成、商用化に向け東北大学と共同実証~NEDOから受託、カーボンリサイクルとシリコン系産廃のリサイクルを実現~
住友商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:上野 真吾、以下「住友商事」)は、国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市、総長:冨永 悌二、以下「東北大学」)と、CO2とシリコン系産業廃棄物(注1)を活用した炭化ケイ素(注2)合成技術開発の実証事業を開始します。本実証事業では、カーボンリサイクル(注3)と産業廃棄物の再資源化を同時に実現し、半導体などの材料として用いられる炭化ケイ素の一部国産化に寄与します。本実証事業は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの委託事業として、実施するものです。

本実証事業の背景
太陽光発電は、2030年には日本の電源構成のうち14~16パーセントを占めることが予想されており、普及が進む一方で、太陽光パネルの処分が課題となっています。太陽光パネルの寿命は一般的に20~30年とされており、2030年代には年間80万トン(約4,000万枚分)の廃棄が見込まれています。そのうち、シリコンセル(注4)の廃棄は約2~3万トンを占めます。太陽光パネルのうち、ガラス、アルミ、銅についてはリサイクル技術が確立されていますが、シリコン部分はリサイクルが難しく、多くが廃棄されてきました。また、半導体製造においても、基板の切削工程でリサイクルが困難なシリコン系産業廃棄物が発生します。
一方、EVやデータセンターで用いられるパワー半導体材料や、研磨材、耐火材などに利用される炭化ケイ素は、日本の半導体や製鉄産業を支える資源ですが、8割を海外からの輸入に依存しています。従来の製造方法では、製造過程で大量の電気を消費し、高いエネルギー負荷やCO2排出量の多さ、廃棄物の処理に課題がありました。
本実証事業の概要
住友商事は、東北大学と共同で、CO2とシリコン系産業廃棄物を利用した「カーボンリサイクル型炭化ケイ素合成技術」の事業開発に取り組みます。本実証事業を通し、CO2を原料として利用するのみならず、これまで廃棄されてきたシリコン系産業廃棄物を有効活用する技術の開発と、商用化に向けた製造コストの削減および国内サプライチェーン構築の検証に取り組みます。
本実証事業はNEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発/研究拠点におけるCO2有効利用技術開発・実証事業」(基礎研究エリア)で委託事業として採択され、中国電力大崎発電所内にNEDOが整備したカーボンリサイクル実証研究拠点にて実証を進める予定です。期間は2025年4月から2028年3月までの約3年間を予定しています。
各社の役割
住友商事
- 原料となるCO2とシリコン系産業廃棄物の安定調達ルートの調査研究
- 国内外の市場開発および販路構築
東北大学
- 炭化ケイ素製造における反応条件の最適化や高純度化プロセスの検証
- カーボンリサイクルに関する技術・特許および学術的知見の提供

今後の展開
本実証事業では、シリコン系廃棄物の処理に課題を抱える半導体産業や太陽光パネル産業、そして材料として炭化ケイ素を必要とする半導体産業やセラミック産業、耐火物産業など、半導体産業だけに留まらない幅広い産業のサプライチェーン課題の解決に向け、高純度の炭化ケイ素の製造を実現するとともに、安定的に炭化ケイ素を供給できる体制の構築を目指します。2028年度以降、早期の実用化に向け、両者の連携をさらに深め、共同研究やスケールアップ試験を進めます。
住友商事の資源リサイクルにおける取り組み
住友商事は、2023年から東北大学と共同で、半導体原料である黄燐をリサイクル原料を用いて製造する研究を進めています。2024年には太陽光パネルのリユース・リサイクル事業の実証実験を開始しました。今回の実証事業では、住友商事の強固な流通ネットワークを生かし、サーキュラーエコノミー(注5)の確立に寄与すると同時に、炭化ケイ素の一部国産化の実現により、国内サプライチェーンを強化できると期待されます。住友商事は、全ての産業を支える化学素材において、循環経済の確立に向けたサプライチェーン構築に取り組んでいきます。
関連リリース:
太陽光パネルのリユース・リサイクル事業の実現に向けて、実証実験を開始
リサイクル黄燐の国内製造に向けた東北大学との共同研究契約締結
- シリコン系産業廃棄物(シリコンスラッジ)
太陽光パネルのリサイクル工程や半導体製造工程など、シリコンを加工する過程で生じる微細な粉末や切削くずなどを指す。 - 炭化ケイ素(SiC)
シリコン(Si)と炭素(C)からなる化合物で、高耐圧・高温特性に優れた次世代パワー半導体材料として使用される他、耐火物、セラミックス、研磨剤などの原料として使用される。SiCパワー半導体は、EVなどの省エネルギー化に寄与し、需要が急速に拡大している。 - カーボンリサイクル
CO2を資源としてとらえ、分離・回収してさまざまな製品や燃料に再利用することで、CO2の排出を抑制する取り組み。 - シリコンセル
シリコンの持つ半導体の特性を利用し、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光パネルの心臓部。太陽光セルとも称される。 - サーキュラーエコノミー
資源をできる限り循環させ、廃棄物を最小限に抑えつつ新たな付加価値を生み出す経済モデル。再利用やリサイクルに重きを置き、持続可能な社会を実現する考え方。