イスラエルのCVC、インベンチャーを通じた出資 ～モビリティのオトピア、サイバーセキュリティのジーケーエイト、ヘルスケアのジノックス～

イスラエルは、スタートアップ大国と称されることもありますが、政府による起業や研究開発への支援プログラムなど、世界トップクラスの起業環境が整備されており、国内で年間700～800社のスタートアップが設立されています。特に人工知能（AI）、サイバーセキュリティや農業、ヘルスケア分野に優れ、多くのグローバル企業が拠点を設け、イノベーションの創出に取り組んでいます。

住友商事と欧州住友商事は、2019年、同国にコーポレートベンチャーキャピタル（CVC）のIN Venture（インベンチャー）を設立。将来、住友商事グループのビジネスの核となりうる新技術への投資を行っています。インベンチャーは、「モビリティ」「環境エネルギー」「ヘルスケア」「IT/サイバーセキュリティ」「アグリテック」を投資対象の注力分野と定め、これまで数百社と面談を行い、2021年6月までに6社に出資しました。イスラエルで勃興する革新的なスタートアップの知見と住友商事グループの事業を掛け合わせ、新たなビジネスの創出に挑戦していきます。

インベンチャーが直近1年に出資したスタートアップのうち、主な3社を紹介します。

(1) モビリティ／Ottopia Technologies（オトピア）
(2) サイバーセキュリティ／GK8（ジーケーエイト）
(3) ヘルスケア／Genoox（ジノックス）

(1) 自動運転車両の遠隔操縦技術を開発するオトピア

(2) ブロックチェーン向けサイバーセキュリティ技術開発のジーケーエイト

1. ホットウォレット：インターネットに常時接続されているウォレット（ブロックチェーン上で扱うデジタル資産を保管する財布のようなもの）。すぐに送金できるなどの利便性がメリット
2. コールドウォレット：インターネットに通常は接続されていないウォレット。セキュリティ面でホットウォレットより堅牢

(3) 世界中のあらゆる病気を対象としたゲノム（※3）データプラットフォームを構築するジノックス

ゲノミクス（※4）市場は年率19.5パーセントで上昇しており、2027年には826億米ドルに達すると言われています。その背景にあるのはゲノム情報を活用した医療の質向上、患者一人一人への最適な個別医療提供への期待です。

ジノックスは、同社が開発したゲノム情報解析プラットフォームを医療機関などに無償開放することで、収集したゲノムデータを実用的な臨床情報に変換して提供するビジネスモデルを確立、世界最大のゲノムデータプラットフォームの構築を目指しています。同社のプラットフォーム上ではさまざまな疾病に関するゲノム分析が可能で、すでに世界で約1500の医療機関などが使用しています。

1. ゲノム：あらゆる生物が持つ遺伝情報のこと
2. ゲノミクス：ゲノムと遺伝子について研究するライフサイエンスの一分野

インベンチャー出資先一覧（2021年6月末時点）