2022年07月20日

核融合関連企業・米TAE Technologiesへの出資参画について~脱炭素とエネルギー問題の切り札「核融合エネルギー」の社会実装に向けた取り組みを開始~

住友商事は2022年6月30日、米国の核融合関連企業である、TAE Technologies(以下、TAE)に出資しました。今後TAEとの協業を通じて、脱炭素とエネルギー問題の切り札といわれる核融合分野への知見を深め社会実装に取り組むことで、カーボンニュートラル社会の実現をより一層進めていきます。

核融合反応とは、太陽のエネルギーの源であり、水素のような質量の小さな原子の原子核同士が融合して、ヘリウムのような別の少し大きな原子核となる反応です。この反応が起こると、反応前後で原子核中の陽子、中性子同士の結合エネルギーが変化することにより、わずかに質量が失われるとともに膨大なエネルギーが発生します。

核融合エネルギーの技術開発では、核融合反応を人工的に起こすことで、エネルギーを電気や熱といった形で持続的に取り出せるようにすることを目標としています。太陽で起きている現象を人類の手で生み出し、発電等に使用することを目指していることから、核融合は「地上に太陽をつくる」研究ともいわれています。

核融合反応から発生するエネルギーを使う核融合発電は、二酸化炭素を排出せず安全性の観点で優れた特性を有していることから、次世代のベースロード電源として期待されています。また、万が一事故が発生しても、核融合反応は燃料の入射や電源が止まれば反応も止まるため、原理的に暴走が起こらない仕組みになっています。一方で、核融合反応の長時間維持や中性子に耐えうる材料開発など解決すべき課題も残されています。

近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、核融合の実現に向けた動きが世界で急速に加速しています。日本政府も非炭素電源の一つとして核融合技術の研究開発を推進しており、核融合戦略の策定に向けて動き出しています。民間資金の動きも活発化しており、技術開発が大きく進展しています。最近では、米・コモンウェルス・フュージョン・システムズがビル・ゲイツ氏から、カナダ・ジェネラル・フュージョンがジェフ・ベゾス氏から多額の資金を調達しています。

核融合反応の図(※1)

住友商事が出資したTAEは、米国・カリフォルニア州で1998年に設立され、先進燃料 p-B11(水素とホウ素)を用いることで、中性子が発生せず放射性物質が生成されない、より安全な核融合炉の開発・運転を目標としています。TAEは、20年以上にわたり実験炉の建設・運転実績を持ち、商用化実現に必要な実験データや経験を豊富に保有しています。2014年には米・グーグルとも提携し、資金面だけでなく、核融合炉開発にグーグルの機械学習技術を活用しています。TAEはこれらの経験やパートナーとの連携を生かし、2020年代後半に核融合炉の商用化を目指しています。

住友商事が2021年4月に設立したエネルギーイノベーション・イニシアチブは、「カーボンフリーエネルギーの開発・展開」を戦略のひとつとして掲げています。今般のTAEへの出資参画を通じて、核融合発電の最先端の技術・業界動向への理解を深め、住友商事の知見・経験も生かし、核融合発電の社会実装を目指すとともに、発電以外の用途開発にも幅広く取り組むことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

  1. 出典:文部科学省「核融合エネルギーの実現に向けて」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/fusion/

参考資料

TAE本社と社員
TAE第5世代実験炉(ノーマン)の概念図

会社概要

会社名 TAE Technologies
本社所在地 Foothill Ranch, California, United States
CEO Michl Binderbauer
設立年 1998年
事業概要 核融合炉の設計・開発・定常運転
ホームページ https://tae.com/

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