2022年11月30日
住友商事
住友商事東北
CO2の新たな吸収源、ブルーエコノミー事業の推進~岩手県洋野町における過去最大量のJブルークレジット® 認証取得~
住友商事グループは、2050年のカーボンニュートラル化を目指し、事業活動によるCO2排出量を削減するとともに、社会の持続可能なエネルギーサイクルの基盤となる事業の構築に注力しています。その一環として、CO2吸収・固定・利活用による気候変動緩和の取り組みも推進しており、新たなCO2吸収源として注目の集まるブルーカーボン事業に着手しました。
過去最大量のJブルークレジット®認証取得
住友商事、住友商事東北、住友商事グループ会社のInsight Edgeおよびナイルワークスは、「岩手県洋野町における増殖溝を活用した藻場の創出・保全活動」によるJブルークレジット®(以下、クレジット)(※1)の認証申請を支援してきましたが、今般、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(以下、JBE)(※2)により、3,106.5tCO2の認証が行われました。
このクレジット量は、Jブルークレジット制度が令和2年度に試行されて以来、最大量となるもので、政府が進めるカーボンオフセット(※3)の推進にも寄与する取り組みです。
今後、住友商事および住友商事東北は、顧客や関係会社への紹介などを通じ、洋野町によるクレジット販売活動を支援していきます。また、洋野町および町内3漁協(種市漁協、洋野町漁協、小子内浜漁協)は、クレジット販売によって得られた資金を更なる気候変動対策に活用すべく、「洋野町ブルーカーボン増殖協議会(以下、協議会)」を設立し、住友商事および住友商事東北は、これに賛助会員として参画しました。
ブルーエコノミー/ブルーカーボンとは
ブルーエコノミーとは、海の豊かさを守りながら、これを活用することで、環境・経済・社会全体を持続可能な形で発展させていこうという概念です。
洋野町では、藻場の創出・保全活動を通じて海の豊かさを守りながら、持続可能な漁業を行っており、ブルーエコノミーの一例と言えます。そのブルーエコノミーを推進する切り札の一つとして注目されるのがブルーカーボンです。ブルーカーボンは、マングローブ、海草・海藻藻場、塩性湿地といった海洋生態系の作用によって、大気中から海中へ吸収され、隔離・貯留されたCO2由来の炭素のことを指し、陸域の森林等により吸収されるCO2由来の「グリーンカーボン」とともに気候変動対策として注目されています。
増殖溝とは
岩手県の東北端に位置する洋野町では、約50年前から、海岸線約20キロメートルに沿って断続的に続く岩盤に溝を掘り、ウニやアワビ漁に利用してきました。それが増殖溝です。
増殖溝の総距離は17.5キロメートル、幅は約4メートル、深さは約1メートルにわたり、干潮時でも波力により新鮮な海水が流れ込む構造にすることで、ワカメや昆布などの大型の海藻が乾燥に耐え、生育しやすい環境を創り出しています。
この増殖溝によって、洋野町では身入りが多く、高品質なキタムラサキウニが豊富に採れるようになりました。また、増殖溝やその周辺で育った海藻類は、潮の干満により流れ藻として海に流出し、CO2を海底に固定することに貢献してきました。
洋野町では、気候変動対策として、ワカメや昆布のCO2固定能力の高さに着目し、増殖溝を活用した藻場の創出・保全活動が行われています。
住友商事グループの取り組み
住友商事、住友商事東北、Insight Edgeおよびナイルワークスは、増殖溝の藻場におけるCO2固定能力に着目し、藻場面積の計測やブルーカーボン量の算定、JBEとの連絡調整を通じ、洋野町によるクレジットの認証取得を支援してきました。
特に藻場の空撮については、農業用ドローンで高い技術力を誇るナイルワークスが、画像解析については、最先端のデータ分析技術を有するInsight Edgeが担当し、認証審査における高い確実性評価を得ることが出来ました。
今後は、協議会への参画を通じて洋野町における気候変動対策の促進に貢献するとともに、これらクレジット申請・認証を通じて得られた技術的知見を国内外のブルーエコノミー事業に活用することで、カーボンニュートラル化に向けた気候変動緩和の取り組みに寄与していきます。
- Jブルークレジット:JBEが独立した第三者委員会による審査・認証を経て発行・管理するボランタリークレジット(※4)。JBEは、ブルーカーボン生態系のCO2吸収源としての役割とその他の沿岸域・海洋における気候変動緩和と気候変動適応へ向けた取組みを加速するため、新たなクレジットとしての「Jブルークレジット®」の審査認証・発行へ向けた制度設計等に関する研究開発に取り組んでいる
- ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE):沿岸域における気候変動対策を促進し、海洋植物によるブルーカーボンの定量的評価、技術開発および資金メカニズムの導入などの試験研究を行うため、2020年7月に設立された国土交通大臣認可の技術研究組合
- カーボンオフセット:市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量などを購入すること、または他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施することなどにより、その排出量の全部または一部を埋め合わせること(環境省 カーボンオフセットの定義)
- ボランタリークレジット:各国・地域における規制や制度に必ずしも基づかない、企業の自主的な活用が前提で運営されている制度に基づくカーボン・クレジット