2023年09月04日
CCUSや地熱発電の課題を解決し、カーボンニュートラルを促進~超電導センサテクノロジー株式会社へ出資~
CCUSや地熱発電が抱える課題
CCUSや地熱発電には、コストと環境負荷の面で課題があります。CCUSでは、CO2の貯留状況を長期にわたりモニタリングする必要がありますが、一般的なモニタリング方法である地震波探査(※3)では一回あたり数億円の費用がかかり、生態系への影響も懸念されています。地熱発電の開発においても、一本の井戸の掘削には数億円の費用と環境負荷が生じる一方で、得られた資源が想定よりも少量であるケースが散見されています。SUSTECの技術とは
SUSTECは、国際超電導産業技術研究センターの一部署が独立して設立された会社で、30年以上にわたる研究の成果を持っています。SUSTECが開発した高温超電導磁気センサは、広い周波数帯の磁場を高感度で検知できるため、地下数十メートルといった浅部から3,000メートル以上の深部までを対象にした精緻な探査が可能です。これにより、CCUSにおいては従来の方法に比べてコストを大幅に削減した上で、CO2が地下に十分に貯留されているかをモニタリングできます。また、地熱開発においても、SUSTECの技術を活用して地下の状態をより正確に把握し、井戸の掘削回数を減らすことで、コスト削減・環境負荷の低減が期待できます。当社とSUSTECのシナジー
SUSTECの探査装置は、当社がインドネシアで行っている地熱発電の地下探査や、北海道・苫小牧でのCCUSの大規模実証実験現場でのモニタリング試験で既に活用されています。さらにSUSTECは、当社が2020年に出資した石油・ガス開発における地下データの収集・分析を手掛けるEARTH SCIENCE ANALYTICS AS(アース・サイエンス・アナリティクス、以下「ESA」)や、22年に出資したCO2 鉱物化を手掛けるProtostar(プロトスター、以下「44.01」)との技術的な協業が見込まれます。
当社とSUSTECは、当社が有するグローバルなネットワークを活用することで、今後、世界各地でますます活発になることが予想されるCCUSモニタリングや地熱発電、鉱物探査など、地下探査に関連する事業開発に共同で取り組んでいきます。
住友商事グループのカーボンニュートラルに向けた取り組み
当社グループは、気候変動緩和を重要社会課題と位置づけ、2050年までに事業活動をカーボンニュートラル化し、持続可能なエネルギーサイクルを実現することを目指しています。
当社はこれまで、地下掘削の効率化やカーボンニュートラル化に貢献する技術を持った企業に投資を行ってきました。2019年に石油・ガス開発における掘削を効率化・最適化するSekal(セカール)に出資したのを皮切りに、20年には石油・ガス開発手順をデジタル化・最適化するEXEBENUS(エグゼべナス)とESAに、22年に44.01に出資しました。当社は、一連の投資と今般のSUSTECへの出資を通じ、地下探査・掘削に関する顧客の課題を解決する手段を多様化し、事業活動におけるCO2排出量の削減を図ります。
当社グループは、今後もスタートアップ企業との連携を通じて新技術を積極的に活用し、カーボンニュートラル社会の実現に挑戦していきます。
- 高温超電導磁気センサ:液体窒素温度(-196℃)で物質の電気抵抗がゼロになる高温超電導現象の量子効果を利用した、高感度な磁気センサ。超電導量子干渉素子(SQUID: Superconducting QUantum Interference Device)と呼ばれる。
- CCUS:二酸化炭素の回収・利用・貯留
- 地震波探査:人工的に発生させた弾性波動を利用して地下構造を調査する技術。石油・ガスの探査に広く使用されている