グローバル事例
グループの総合力を生かし、
LNG輸出プロジェクトを推進する
米国
石油、石炭といった化石燃料と比べて燃焼時のCO2排出量が少ない資源である、天然ガスの需要が高まっています。住友商事グループは2000年代に入ってから、国内外のさまざまなプレーヤーと連携し、LNG(液化天然ガス)の安定供給に注力してきました。環境負荷の少ない資源によって「気候変動緩和」に貢献しながら、「地域社会・経済の発展」や人々の「生活水準の向上」に寄与すること。それが住友商事グループのLNG事業のミッションです。
「産地が分散している」というメリット
天然ガスは、石油、石炭といった化石燃料と比べて燃焼時のCO2排出量が相対的に少ないために、近年世界中で需要が高まっている燃料資源です。この資源にはまた、「産地が分散している」という大きなメリットがあります。オーストラリア、ロシア、東南アジア、アフリカ、中東、米国など、世界中のさまざまな国から産出されるために、消費する立場から見ると調達のリスクを分散することが可能になる。それが天然ガスの特徴の一つです。
この天然ガスをマイナス162度に冷却して液化し、輸送と貯蔵に適した状態にしたのがLNG(液化天然ガス)です。米国メリーランド州にLNGの輸入基地が建設されたのは1970年代のことでした。その後、2000年代後半のいわゆる「シェール革命」によって米国がLNGの輸入国から輸出国に転じたことを受けて、大手エネルギー会社、バークシャーハサウェイエナジーのグループ企業であるコーブポイントLNGが、天然ガスを液化して海外に輸出するプラントの建設を始めました。
子会社を通じ、プラントの利用契約を締結
その液化プラントの利用契約を住友商事グループが締結したのは2012年のことです。当社100%子会社のパシフィック・サミット・エナジーを通じての契約でした。さらに14年には、東京ガスと共に共同事業会社エスティーコーブポイントを設立し、その利用契約を同社が引き継ぐことになりました。共同事業会社設立の目的は、基地からLNGを輸出するまでのオペレーション体制を整備する点にありました。
このプロジェクトでは18年4月にLNGの商業生産を開始し、現在、東京ガス向けに年間140万トン、関西電力向けに年間80万トンのLNGを安定的かつ継続的に出荷しています。
基地で液化されたLNGを購入するのではなく、天然ガスの液化を基地に委託する──。それがこの契約の大きな特徴です。トーリング形式とよばれるこの取引では、委託する天然ガスを自ら調達する力が求められることになります。そこで発揮されるのが、パシフィック・サミット・エナジーの調達力です。
総合力が「LNG安定供給」という価値を生む
2004年から天然ガスのトレーディングビジネスを手掛けてきたパシフィック・サミット・エナジーは、米国内に広範な取引のネットワークをもっています。このネットワークを生かして、市場から最適な価格で安定的に天然ガスを調達する契約を締結し、それをエスティーコーブポイントに販売する。エスティーコーブポイントは、その天然ガスをコーブポイントLNGに委託し、液化して日本向けに継続的に出荷する。このプロジェクトはそのようなモデルになっています。
もう一点、このプロジェクトには、取引内容が非常に柔軟であるという特徴があります。エスティーコーブポイントがこの設備で液化するLNGは、年間およそ230万トン。その全量を、米国エネルギー省から取得した輸出許可に基づき、日本をはじめ米国と自由貿易協定を締結していない国にも輸出することが可能です。
このような柔軟な契約において求められるのは、状況に合わせた臨機応変な判断力と適切なオペレーション力です。パシフィック・サミット・エナジーが長年の事業によって培った力を生かして天然ガスを調達する。エスティーコーブポイントが契約に基づいてコーブポイントLNGに液化を依頼し、一連のバリューチェーンを通じて市況に応じた柔軟な販売オペレーションを行う。このようにグループとしての総合力を発揮しているのが、この事業の大きな特徴です。その総合力が「LNGの安定供給」という確かな価値を生み出しています。
人々の生活に欠かせない資源
発電燃料や都市ガスなどに使われる天然ガスは、電力・ガスの安定供給のために欠かせない資源です。天然ガスは、日本ではほとんど産出されないため、日本のような国々は、ほぼ全てをLNG輸入に頼らなければなりません。LNGを継続的に適正な価格で輸入し、日本を含む資源のない国々のエネルギーの安定化に寄与し、人々の生活を支える。それこそがこのプロジェクトの意義であり、そこで発揮されているのが住友商事グループの総合力なのです。
当社グループは米国天然ガス生産者やLNG買主など、国内外のさまざまなプレーヤーと連携しながら、このプロジェクトの安定的な運用に尽力し、米国から日本をはじめとするエネルギー需要国へと確実にLNGを届けていきます。
2023年03月掲載
キーワード
- 米州
- 電力・エネルギー
- エネルギートランスフォーメーショングループ