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グローバル事例

長崎で始まる「みらいの工場」

~EVのリユース蓄電池で創る“みらい”~

広報パーソン探訪記

報道チーム深田 麻衣

2012年入社の7年目。メディア・ICT事業部門の報道対応や事業紹介動画を担当。お酒が好きそうに見られがちだが下戸で、グラス1杯のカクテルで酔える燃費が良いタイプ。いつか言ってみたい言葉は「とりあえず生」

近年、急速に普及が進む電気自動車(EV)。全世界におけるEVとプラグインハイブリッド自動車(PHV)の累計販売台数は200万台を超え、日本においても、政府は2030年に新車販売台数の20~30パーセントをEVおよびPHVとする目標を掲げている。住友商事は、EVが普及した未来の先を見据え、EVの使用済み電池を蓄電池システムとして活用する試みを2013年に開始し、国内2カ所で実証事業を行ってきた。18年4月、事業の第3弾として、日産自動車製EV、LEAF(リーフ)のリユース蓄電池を搭載した蓄電池システムが、長崎県諫早市の日本ベネックスの敷地内で稼働を開始した。

リユース蓄電池システムの「実証」から「実装」へ

日本ベネックスは、板金加工や産業・電気機器の製造事業を手掛ける企業で、2012年からは太陽光発電事業に参画。自社工場の屋上に太陽光パネルを設置して工場の電源としているほか、FIT制度(※)を活用した売電も行っている。

今回、日本ベネックスに導入された蓄電池システムは、20フィートのコンテナにリーフ24台分のリユース蓄電池を格納したもので、容量は約400キロワット時と、一般家庭40世帯が1日で使用する電気を蓄えることができる。蓄電池システムは、工場の電力需要ピーク時の補助電源としての活用や、工場の屋上にある太陽光パネルの余剰電力の有効活用に利用される。蓄電池システムを導入することで、契約電力を低く抑えられるため電気代の削減が見込め、さらには、再生可能エネルギーの導入拡大が可能になる。

 

リユース蓄電池システムとEV、e-NV200。コンテナのサイズはおよそ6メートル×2.5メートル×3メートル

リユース蓄電池というと、品質や安全性を懸念する人もいるかもしれない。住友商事は、13年に大阪市の夢洲(ゆめしま)において、世界で初めてEVのリユース蓄電池を用いた蓄電池システムを開発した。また、鹿児島県薩摩川内市の甑島(こしきしま)では、民間事業者として日本で初めて蓄電池システムを電力系統に接続し、運用した実績がある。これまで実証事業として検証してきた安全性と経済性を土台に、いよいよ産業用システムとして実装する段階を迎えた形だ。

なお、夢洲と甑島では、同じ20フィートのコンテナにリーフ12台分のリユース蓄電池を格納していた。今回、日本ベネックスおよび富士電機と共同で新型コンテナを開発し、従来の2倍である24台分のリユース蓄電池の格納を実現している。

 

※FIT制度:固定価格買い取り制度

24台分のEVリユース蓄電池を格納したコンテナ。使われているのは、主に九州から集められたもの

始まる、「みらいの工場」プロジェクト

住友商事と日本ベネックスは、この蓄電池システムと太陽光発電設備、そして日産自動車が日本ベネックスへ提供したEV、e-NV200 10台という次世代のエネルギーリソースを備えた、「みらいの工場」プロジェクトを始動する。これは、環境との共生と、工場内外におけるエネルギーの効率利用を実現するスマート工場モデルの確立を目指す取り組みである。

EVは、従業員の通勤や外出時に利用し、日中は工場で充電する。蓄電池システムとEVは、2020年に実用化が期待されるVPP(※)に対応したシステムになっており、周辺地域の電力需要の変動にあわせて充放電のタイミングを変えることで、地域全体の電力需給を調整し、エネルギー利用を効率化する機能も担う。また、使用済みのバッテリーを蓄電池システムで再利用し、バッテリーのリユースモデル構築にも取り組む考えだ。

日本ベネックスの工場の屋上に設置された太陽光パネル。出力は596キロワット時

4月17日、蓄電池システムの完工式典が開催され、報道関係者を含む約80人が参加した。日本ベネックスの小林洋平社長は、「自ら電気をつくり、工場を動かし、EVで移動し、EVのリユース蓄電池の制御によって電力需要の変動に対応する、まさにスマート工場ができたと思います。日本を探しても、これだけの設備を揃えているのは日本ベネックスだけです。このスマート工場を、長崎発祥のみらいの工場として全国に展開すべく努力していきます」とあいさつした。

蓄電池システムは、富士電機が商品化し、18年6月より産業システムとして販売を開始する。

 

※VPP:点在する蓄電池や需要設備などのエネルギーリソースを、IoTを活用して統合し、充放電や節電を制御することで、電力の需給を調整する取り組み

e-NV200は車内にコンセントがついている点が特徴。完工式典では、マイクの電源にe-NV200を活用した

ドリームチームの目指す“みらい”

住友商事で本事業に取り組んでいるのは、通称ドリームチーム。最初に実証事業を行った「夢洲」からもじっている。ドリームチームを率いる国内インフラ事業部の藤田康弘は、事業について、「EVのリユースバッテリーで行うことに意味がある」と語る。EVバッテリーのリユースモデル構築は、EVや蓄電池システムの普及を促進する。それは再生可能エネルギーの導入拡大や地域のエネルギー利用の効率化につながり、低炭素社会の実現に貢献できる。その夢を胸にドリームチームは、蓄電池システムやEVのリユースバッテリーに関する法律が整備される以前から実証事業を続け、実装の段階にたどり着いた。これからは蓄電池システムの普及を進めるために、商品の競争力強化などに取り組んでいく。

今後、ドリームチームが目指すのは、蓄電池システムの普及と、それらを統合して制御する新しいエネルギー・マネジメント事業の実現だ。ドリームチームの、“みらい”を切り開く挑戦は続く。

日本ベネックスの小林社長(左)と国内インフラ事業部の藤田。「みらいの工場」モデルの横展開を目指す

(おまけ)広報パーソン諫早探訪記

眼鏡橋は長崎市観光の定番スポットとして有名だが、同じ名前の橋が諫早市にも存在する。日本で初めて重要文化財に指定された石橋で、橋の両側は階段になっており、きれいなアーチ形にするために、階段を上るほど段差が低くなっている。筆者が訪れた際は、赤やピンクのつつじが美しい花を咲かせていた。また、出張の楽しみの一つは、現地のおいしいものが食べられる確率が高いことである。今回は、帰りのフライト前にウナギをいただく機会に恵まれた。ウナギのかば焼きは諫早市の名物料理だそうで、二重底になった器を使い、焼いた後に蒸されているとのこと。ふわふわしていて非常においしく、幸せなひとときとなった。

眼鏡橋の長さは約50メートル。「願い事を念じながら橋を渡れば、叶うかもしれない」という看板に釣られて渡る筆者
ウナギが盛られた二重底の器。ふたを開けた中身は、ぜひ現地でご確認いただきたい

2018年07月掲載

キーワード

  • インフラ事業
  • 日本
  • 電力・エネルギー
  • 環境

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