グローバル事例

自動車用の先端バッテリー技術を賢く使い、
次世代のエネルギーインフラに貢献する

日本

「蓄電」の機能が電力インフラを安定させる

今や、電気自動車(EV)用バッテリーの本命といわれているリチウムイオン電池の開発は、1990年代に入ってから本格的に始まりました。住友商事は当時から、正・負極材、電解質といった原材料や製造機械などを幅広く取り扱ってきました。

 原材料の事業に大きな転機が訪れたのは2008年頃。従来のガソリンエンジン車に代わって、EVやハイブリッドカーが普及する世の中が訪れることを予測し、当社はリチウムイオン電池を使った新しい事業の可能性を探り始めました。EVで使用されたリチウムイオン電池を再利用するビジネスモデルです。

リチウムイオン電池は、充放電を繰り返す中で次第に性能が劣化します。それによりEVの走行可能距離は徐々に短くなるので、ある時点でバッテリーを交換しなければなりませんが、ほかの用途で使用する場合は、まだ十分に性能を発揮することができるのです。その用途の一つが「蓄電」です。

リチウムイオン電池を活用した蓄電事業には、主に2つの可能性があります。1つは、再生可能エネルギーの安定化です。太陽光や風力発電は、気象に大きく影響されるために出力が不安定にならざるを得ないという弱点があります。しかし、そこに蓄電の機能を加えれば、気象が好条件のときに電気をため、条件が悪くなったときはそのためた電気を利用することで、需要に合わせて安定的に電力を供給することが可能になります。

もう一つは、電力会社が供給する電力の安定化です。電力系統に蓄電の機能を加えることによって、電気の周波数を安定させ、電気の品質を高めることができます。大規模な電力系統を安定化させるこの仕組みを「アンシラリー(補助的な)サービス」と呼びます。

甑島のコンテナ。バッテリーは全国各地から集められ、それぞれの横に出身県が記載されている

バッテリーが主役になる「蓄電」サービス事業への挑戦

EVで使い終わったリチウムイオン電池を二次利用することで、「人々の生活や産業を支える循環型社会を作りたい」。当社は日産自動車と共に、EV用バッテリーのリユースに取り組む新会社フォーアールエナジー(4R)を2010年に設立しました。国内でEVの量産が始まったのとほぼ同じタイミングでした。

さらに当社は、4Rのリユース電池を使った「蓄電」をサービスにする事業への挑戦を始めました。

13年には大阪市夢洲で世界初のリユース電池を使った蓄電事業の技術開発に着手。その成果を活かして、15年には鹿児島県薩摩川内市の甑島(こしきしま))という離島に、バッテリーを主役にした事業(蓄電センター)のモデルケースを日本で初めて構築しました。薩摩川内市と協力して、できるだけ多くの再生可能エネルギーを呼び込むための環境を整備する事業です。国内には前例のない事業なので、引き続き法律や制度面の整理に取り組んでいますが、これが完了すれば、本土側でも本格的に蓄電センター事業を始めることができます。

さらに当社は17年末、長崎県諫早市などで「バーチャルパワープラント(VPP)」構築の実証試験も開始しました。VPPとは、エリア内に点在する発電設備や蓄電設備と、工場、オフィス、家庭などの電力需要施設をIoT活用によってネットワーク化し、電気の需給を最適化する仕組みです。VPPは「低炭素化スマートシティ」を実現する仕組みとして、大きな注目を集めています。

夢洲に設置されたコンテナ(左)と隣接するひかりの森メガソーラー10メガワット)

グループ内連携で新しい電力サービスを実現させる

住友商事における蓄電関連事業の今後の方向性は大きく2つあります。1つは、甑島で確立した「地域のエネルギー活用(地産地消)モデル」を日本全国で展開していくことです。このモデルでは蓄電センターやVPPが拠点となって、ミニ電力会社のように需給調整をしていくことを想定しています。

そして、もう1つが、送配電事業者や電力取引市場に当社がアンシラリーサービスを提供する蓄電アンシラリー事業です。

現在、再生可能エネルギーは国の固定価格買取(FIT)制度によって普及拡大していますが、その制度が役割を終えれば、市場での完全自由競争に移行します。また、2020年までに、電力会社の発電部門と送配電部門が分離する電力システム改革が進み、電力市場はいよいよ本格的に自由化されることになります。来るべき新たな電気の時代に向けて、確かな蓄電事業モデルを構築することが当社の目標です。

住友商事は、グループ内で太陽光、風力、バイオマス発電所を保有・運用しているだけでなく、電力小売を手掛けるサミットエナジー、EVの普及を推進するモビリティサービス事業、街づくりの専門組織である不動産事業を展開しています。各事業との連携によって、地球環境と共生しながら地域コミュニティにも貢献できる事業をつくり上げるために、これからも蓄電事業への取り組みを続けていきます。

「Charge Our Dreams」には、事業に携わる関係者の思いが込められている

2018年05月掲載

キーワード

  • インフラ事業
  • 日本
  • 電力・エネルギー
  • 環境

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