グローバル事例

電力を安定的に社会に届け、
人々の生活や企業活動を支える電力小売事業

日本

電力自由化によって生まれた新しい市場

日本で電力自由化の動きが端緒についたのは1990年代半ばのことです。電力小売分野においては、2000年に大規模工場やオフィスビルなど、特別高圧と呼ばれる電力契約をしている大型需要家への小売りが一部事業者に認められるようになりました。

以後、小規模工場など向けの「高圧」、一般家庭など向けの「低圧」、と段階的に自由化が進み、16年4月に電力小売分野の完全自由化となりました。

電力小売自由化によって、法人も一般家庭も、電力会社を選べるようになりました。価格の安い電力会社、サービスの充実した電力会社、あるいは環境に配慮した電力会社など、さまざまな選択肢が提示されたのです。これにより、約7.5兆円相当の新電力市場が生まれたと経済産業省は試算しています。

東日本最大級の酒田バイオマス発電所(2018年8月竣工、出力5万キロワット)

2001年から電力小売ビジネスに参入

住友商事がサミットエナジーを設立し、西日本地域において電力小売を始めたのは、まだ電力自由化が初期段階にあった01年7月のことです。04年には、本格的な全国展開を開始しました。現在、同社が保有する5つの発電所のほか、住友商事グループおよび他社が保有する発電設備に加え、電力自由化によって生まれた卸電力取引市場から電力を調達し、法人・個人の顧客に向けに電力を販売しています。

サミットエナジーは、2つの大きな強みを持っています。一つ目は、自社のオペレーションセンターを活用し、顧客の電力使用の状況に応じて複数の電力調達先から最適な組み合わせで必要な電力を調達することにより、比較的低価格で電力を提供できること。二つ目は、住友商事グループのネットワークを生かし、広範な顧客のニーズをくみ取り、顧客の要望に沿った料金メニューや契約条件で電力を届けられることです。

例えば、一般家庭向けの電力販売では、同じく住友商事グループ傘下のジュピターテレコム(2021年7月よりJCOMへ社名変更。以下、J:COM)と連携しています。ケーブルテレビやインターネットサービスを全国的に展開するJ:COMの営業力と、サミットエナジーが持つ電力ビジネスのノウハウが有機的に融合している好例です。

循環型モデルで電力を安定的に生み出すバイオマス発電所

現在、サミットエナジーグループで運営している発電所は、小名浜発電所(福島県いわき市)、糸魚川バイオマス発電所(新潟県糸魚川市)、千葉みなと発電所(千葉県千葉市)、半田バイオマス発電所(愛知県半田市)、酒田バイオマス発電所(山形県酒田市)の5施設です。

酒田バイオマス発電所を含む3つのバイオマス発電所は、樹木由来の燃料を使って電気をつくる木質バイオマス発電所です。

「樹木は、発電の燃焼過程で発生するCO2を成長過程で光合成の作用によって吸収しているとされ、その樹木を利用して電気を発生させる」という循環型モデルがバイオマス発電所の特徴です。気象変動の影響を受けやすい太陽光発電や風力発電など、他の再生可能エネルギーに比べて安定的な電力供給が可能であるというメリットがあります。近年大きな注目を集めているこの発電方法を、電力小売り用発電所として05年に日本国内で5万キロワットという大規模で先駆的に実現したのが、糸魚川バイオマス発電所です。

17年6月には、7万5,000キロワットの出力を誇る国内最大級のバイオマス発電所、半田バイオマス発電所の商業運転がスタート。主に国内の建築廃材を利用している糸魚川発電所に対し、半田発電所では、木質チップやPKS(ヤシ殻)を海外から輸入し燃料としています。

発電所は大型船の入港が可能な水深の深い国内有数の港に面した場所に建設され、スムーズな燃料輸送、荷揚げ、搬入を実現しています。また、燃料の粉じん飛散を防ぐ完全密封の燃料受入・搬送施設をつくるなど、地域社会との共存を強く意識した工夫が凝らされています。

ペレットは近隣倉庫からトラックで毎日発電所に輸送される。発電所内にはチップ、ペレットそれぞれ3日分保有している(酒田バイオマス発電所)

サミットエナジーにとって3つ目のバイオマス発電所となる酒田バイオマス発電所は、主に山形県内の間伐材を加工した木質チップを燃料に使い、地域林業の活性化に寄与することを目指しています。

また、機械系、電気系の専門知識を持つ社員をはじめ、従業員のほとんどを地元で採用するなど、半田発電所同様、地域密着の姿勢を鮮明にしています。酒田市において直近30年間で最大の新規設備投資である同発電所に、現在、地元から大きな期待が寄せられています。

「木質」には、国内建築廃材、国内間伐材、輸入木質チップ、輸入PKS、輸入ペレット(おがくずを固めた素材)と、多様な種類があります。サミットエナジーでは、3つのバイオマス発電所で利用する燃料の種類を変えることにより、燃料調達リスクをマネジメントし、安定的な発電を実現していきます。

木質チップ(左)と輸入ペレット

変わりゆく市場で確かな社会的価値を生み出していく

2016年の電力全面自由化以降、新電力市場には数多くの企業が参入しました。その数は現在およそ700社に上ります。電力市場全体における新電力のシェアも、16年から順調に拡大し、約2割まで伸びています。

カーボンニュートラルへの対応、新技術の採用等により、参入事業者も市場自体も今後変わっていくことが予想されますが、そんな市場で22年間にわたり生き抜いてきた経験を生かし、安定的に顧客に電力を届けること。それがサミットエナジーの目標です。

循環型資源の活用による地球環境との共生、地域への貢献、人々の快適な生活を支える基盤づくり。サミットエナジーは、これらの社会的役割を今後も大切にしながら、電力市場で確実に存在感を発揮することを目指していきます。

ホイールローダーやショベルといった重機での、木質チップ積み上げ作業(半田バイオマス発電所)

2022年10月掲載

キーワード

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