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2024.1.10

旅行はもっとエコになる。旅先での衣料シェアリング「Any Wear, Anywhere」とは

2023年7月、住友商事(以下、住商)は、日本航空(以下、JAL)と協業して、インバウンド向け衣料レンタルサービス「Any Wear, Anywhere(エニウェア、エニウェア)」の実証実験を開始しました。訪日客に衣服をレンタルし、少ない荷物での便利な旅を実現するだけではなく、CO2排出量の削減など環境価値を創出する本サービス。発案者の守谷美帆に、サービス誕生の背景や今後の展望を聞きました。

  • 輸送機・建機事業部門 Beyond Mobility事業部

    守谷 美帆

    2008年に入社し、金属事業部門の経理に従事。13年よりメキシコに駐在し、現地のコーポレート全般を担当。16年からは輸送機・建機事業部門の経理担当となり、産休・育休を経て、22年よりBeyond Mobility事業部で複数の新規事業を担当。

移動は人だけ。旅行の新常識をつくる「Any Wear, Anywhere」とは

「移動は人だけの世の中へ」をコンセプトに掲げる旅行者・出張者向け衣料レンタルサービスです。トライアルサービスの対象者は、JAL運航便を利用する訪日客。旅行先で必要な衣服を事前にオンラインで予約し、宿泊するホテルで受け取ることができます。

また、預け入れ荷物の軽量化による飛行機のCO2排出量削減効果を測定し、環境負荷の低減効果を検証します。レンタルする衣服はアパレルの余剰在庫や古着を活用するため、サーキュラーエコノミーにも貢献。新型コロナによる移動制限が解除され、世界中で旅行者が増加する中、サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)を実現するプロジェクトで、トライアルサービスは2024年8月末まで実施しています。

<利用の流れ>

1.サービスサイトでレンタルしたい衣服のセットを選択し(性別や季節などから絞り込みも可能)、決済。決済完了メールとともに届くフォームに、飛行機の予約番号、受取日・返却日、滞在先情報等の必要事項を入力して予約完了。衣服を受け取りたい日の2週間前までに決済、1週間前までに予約完了が必要。

2.洗濯・アイロン掛けが済んだ衣服が、利用者の宿泊ホテルに送られる。衣服は、アパレルの余剰在庫や古着のEC販売で知られるウィファブリックが調達。洗濯は白洋舍が協力している。

3.利用者は、宿泊するホテルのカウンターでレンタルした衣服を受け取る。性別・季節・着数・用途別に36パターンのワードローブがS〜XLサイズで用意されていて、子ども服や2XL以上のサイズも順次拡大中。

4.チェックアウトの際に、レンタルした衣服をホテルに返却。実証実験では、服の枚数などに応じて1回あたり4000〜7000円で利用できる。利用期間は、2週間が基本で、追加料金を払えば最大4週間まで延長できる。

  • 利用者のコメント

    友人の紹介を通じて、「Any Wear, Anywhere」を知りました。少ない荷物で済むので地球にやさしいサービスだと思い、利用を決めました。環境問題については、次世代のために普段から意識しています。今回は2週間の長期旅行でしたが、実際に荷物がいつもの半分くらいに減りました。レンタルした洋服はとてもいい感じです。地球のために、このサービスが日本だけでなく、世界中に広まるといいですね。
    (カナダから日本に旅行中の女性/東京・湯島のホテルにて)

自身が感じた「わずらわしさ」をサービスに反映

「Any Wear, Anywhere」を構想した背景を教えてください。

世界40カ国、90都市を旅するなど大の旅好きである私は、旅行のたびに荷物のパッキングや帰宅後の洗濯にわずらわしさを感じていました。旅先でも日常生活と同様の「衣食住」が必要であり、「食」は現地のレストラン、「住」はホテルがあるのに、「衣」は自宅から持参しなければいけない。その常識を変えるサービスを提供できたら、社会に大きなインパクトをもたらせるのでは、と考えました。

どのようにサービスのリリースを実現したのですか?

18年に開始した、新規事業のアイデアを募る社内起業制度「0→1(ゼロワン)チャレンジ」がきっかけです。入社時からいつかは自身で事業をつくりたいと考えていた私には格好のチャンスでした。初年度は落選してしまいましたが、翌年も諦めずに挑み、最終選考を突破しました。

しかし、コロナ禍により、21年にいったんプロジェクトは白紙に。最終選考を通ってからは、専用のInstagramアカウントを開設して情報を発信していたので、国内外のフォロワーからの熱心な応援もあったのですが、残念ながら終了せざるを得ませんでした。

その後、どのようにプロジェクトを復活させたのですか?

「Any Wear, Anywhere」でレンタルされる衣服は、アパレルの余剰在庫や古着を活用している

絶対に復活させようとチャンスを狙っていたところ、22年に新規事業を手掛ける「Beyond Mobility事業部」への異動が決まりました。しかし、異動した時点では、「Any Wear, Anywhere」が実現できる保証はどこにもありませんでした。私自身、10年以上にわたって経理に従事してきて、そのまま経理でキャリアを重ねることにも魅力を感じていた中で、迷う部分もありましたが、「夢に近づける」と覚悟を決めました。そこでまた1から提案したところ、「訪日観光客が増加した今のタイミングなら」ということで、23年7月の実証実験までこぎ着けました。

世界中から反響、「エコな旅」の実現を目指す

リリース後の反響は、どうですか?

運営は、守谷を中心に森田杏花(左)、中野友博(右)の3人で担当。倉庫の棚の組み立てから服のアイロン掛け、パッキング、写真撮影まで自ら汗をかいて行っている

特にこちらからプロモーションを仕掛けたわけではないものの、200以上の海外メディアで紹介されました。ホームページには北米・豪州を中心に、欧州・アジアまで150カ国以上からアクセスがあります。

私たちが掲げる「サステナブル・トラベル」に対して全体的に好反応ですが、中にはよりその厳密さを追求する声もあります。例えば、「飛行機の搭載重量の削減だけでなく、衣服の洗濯や輸送も含めてトータルでサステナブルであるべきだ」など。こういった意見に誠実に応えていくことは、幅広い領域でビジネスを手掛ける総合商社にとってやりがいのあるチャレンジでありチャンスだと思っています。また、現状の利用者数もまだまだ満足できるものではなく、コンバージョン率(※)の向上も課題です。

(※) Webサイトで設定した目標や成果(サービスの購入や申込み、問合せ等)の達成割合を示す指標

現状の課題に対して、どう向き合っていますか?

すぐに改善できることとして、衣服のサイズ展開を増やしたり、子ども用を追加したりしています。近年、あらゆる人々が旅行に参加できるようにすることを目的とした「インクルーシブツーリズム」といった言葉が聞かれますが、そのような観点からも、より多くの人に使ってもらえるサービスにアップデートしていきたいです。

実証実験は24年8月末までとなりますが、事業化への意気込みを聞かせてください。

現状は、JALの運航便を使って訪日する方のみと限られていますが、ゆくゆくは利用できるエアラインの拡充や海外進出なども実現し、「Any Wear, Anywhere」を世界中の人に使ってもらえるインフラにしたいですね。世界中どこへ行っても現地に用意された服を着られる。そんな世界を創っていきたいです。

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