2023年09月13日
住友商事株式会社
「EVバッテリー・ステーション千歳」の稼働開始 ~ エネルギーインフラの新時代を切り開く系統蓄電事業の幕開け ~
再生可能エネルギーの普及・拡大に貢献する系統用蓄電池
日本政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の普及・拡大が期待されていますが、現在の再エネ導入率は約20%程度と、他国と比較しても進んでいません。電力系統を維持するためには需給バランスを確保する必要がありますが、再エネは日照や風などの自然条件によって発電量が大きく変化するため、需給バランスが崩れ、電力系統が電力を安定的に供給できない場合があります。そのような状況の中、再エネの普及・拡大の鍵を握るソリューションとして、電力系統の需給バランスを調整する蓄電池の役割が重要になっています。
図 1 火力発電所等の調整機能を代替する脱炭素時代の新エネルギーインフラ
再エネ適地の北海道で系統用蓄電事業の一歩を踏み出す
住友商事は「でんきをためる」という新しいエネルギーインフラの社会実装を目指し、2015年に鹿児島県薩摩川内市甑島(こしきしま)で国内初の系統用蓄電池実証を立ち上げて以降、国内の複数地域で実証を行うとともに、系統用蓄電事業の制度化や安全ルール作りについて、国や関連当局と協議を進めてきました。
北海道は、風力発電や太陽光発電などの再エネ導入ポテンシャルは全国1位(注3)という再エネ適地である一方で、他の地域と比較して送電線に接続するにあたっての制約が大きく、再エネ普及拡大のボトルネックになっています。そのため、住友商事は系統用蓄電事業の第一歩を北海道で踏み出しました。
蓄電事業にとどまらないエコシステムの構築を目指す
本設備は、約2,500世帯が一日に使用する電力に相当する出力6メガワット、容量23メガワット時の系統用蓄電システムで、日産自動車株式会社との合弁会社であるフォーアールエナジー株式会社が提供するEVバッテリーを定置用(電力事業用)としても活用できるように、経済的価値の高い設計でシステム化した「EVバッテリー・ステーション」を採用しています。本設備を最適運用するために実装した制御システム(エネルギーマネジメントシステム)は、福島県浪江町にて実用化に向けて開発してきたものです。
また、設備の主要部分にEVバッテリーを活用することで、EVリユースバッテリーの用途拡大・需要増による再生コスト低減に寄与するだけでなく、蓄電池に含まれる希少金属などの資源を最大限利用し、蓄電池製造時に排出されるCO2をも削減できるという特徴があります。
今後は、北海道や九州などの電力系統の安定化が必要とされる地域を中心として、26年度末までに累計で100メガワットの蓄電事業の開発を目指します。住友商事は、「再エネ導入拡大」と「使用済みEVバッテリーの価値最大化」の実現によって脱炭素化を加速するとともに、EVバッテリーの再利用を通じて、持続可能な社会の実現にも貢献していきます。
図 2 全国で累計100メガワット規模の蓄電事業開発を進めていく
図 3 「EVバッテリー・ステーション千歳」外観
(奥に写る送電鉄塔を通じて電力系統へ直接接続される)
図 4「EVバッテリー・ステーション千歳」内観
(EVバッテリーが専用ラックに並ぶ)
図 5 当社が描くEVバッテリー・エコシステムのイメージ
(注1)需給調整市場
周波数制御や電力需給バランス調整を行うために必要な「調整力」を、一般送配電事業者(以下「TSO」)が管理するエリアを超えて広域的に調達する市場。
従来はエリア毎にTSOが調整力の調達を担っていた。
送配電網協議会/需給調整市場とは
(注2)容量市場
電力量(kWh)ではなく将来にわたる日本の電気の「供給力」(kW)を確保する市場。
電力広域的運営推進機関/容量市場かいせつスペシャルサイト
(注3)
北海道/北海道における新エネルギー導入拡大の取組(PDF/812KB)
■事業概要
事業地 | 北海道千歳市流通2丁目3番3号 |
設備設置者 | 住友商事株式会社 |
定格出力 | 6メガワット |
実効容量 | 23メガワット時 |
システム概要 | 事業所名:「千歳第一蓄電所」 6メガワット/23メガワット時(EVバッテリー約700台分を収納) ・スケールアップ(高出力・大容量化)のための制御技術 ・電池交換式 ・短工期、安全設計を実現する筐体構造 |
事業目的 | ① 大規模蓄電事業のためのスケールアップ技術開発・検証 ② 電力需給バランスの改善・電力系統の混雑緩和の実現による再エネ導入拡大 ③ EVエコシステムの構築やEVバッテリーの価値最大化を通じたEVの普及への貢献 |
住友商事のマテリアリティ(重要課題)
住友商事グループは『社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)』を、事業戦略の策定や個々のビジネスの意思決定プロセスにおける重要な要素と位置付け、事業活動を通じて課題を解決することで持続的な成長を図っていきます。本事業は、特に以下のマテリアリティに資する事業です。
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