2021年06月11日

当社の量子コンピューター活用の取り組み~日加量子技術イノベーションピッチの実施~

量子技術による社会変革を目指す、住友商事のQuantum Transformation(QX、クオンタム・トランスフォーメーション)プロジェクトは、6月1日に駐日カナダ大使館が主催する「日加量子技術イノベーションピッチ」セミナーの開催に協力し、QXプロジェクトを手掛ける代表寺部雅能と蓮村俊彰が登壇しました。

同セミナーではデンソーや京セラ、KDDI総合研究所、三菱UFJフィナンシャルグループ、JSR、三菱ケミカルといった量子技術活用分野で先進的な取り組みを行う6社の企業担当者による事例の紹介や、世界初の商用量子コンピューターを世に送り出したディーウエーブシステムズ(D-Wave Systems)を始めとするカナダの量子テクノロジー関連のベンチャー企業9社(※1)によるピッチが行われました。
カナダ大使館と当社のコラボレーションにより、 “QX”に向けたグローバルなエコシステムの形成につながることを期待します。

※1 Adaptive Finance Technologies/Anyon Systems/Cogniframe/D-Wave Systems/NetraMark/Solid State AI/Xanadu/Zapata computing/1Qbit

量子コンピューターとは?

従来のコンピューターは、電気信号のオン・オフによって0と1のどちらかの状態を選択する“ビット”で計算するのに対し、量子コンピューターは0と1の状態を同時にとることができる“量子ビット”で計算します。量子は原子やそれを形作る電子や原子核などの総称です。この量子を応用した量子ビットを使用すると、従来のコンピューターでは処理能力を超えてしまうような無数の組み合わせの中から最適解を超高速で見つけ出すことができると期待されています。この技術で多くの社会課題が解決できる可能性があり、社会実装に向けた取り組みが世界中で行われています。量子コンピューターの概要については、解説アニメーションもご参照ください。

量子コンピューター解説アニメーション
量子コンピューターの将来的なユースケース

住友商事が手掛けるQXプロジェクト

住友商事は2018年から量子技術の将来性を確信し、社内研究会を発足させ、さまざまな取り組みを検討してきました。19年には住友商事グループのベルメゾンロジスコの倉庫内で人員配置の最適化を目指した量子コンピューターによる実証実験を行いました。そして、20年に量子コンピューティングの社会実装分野をリードしてきた寺部が入社した後、21年3月には、量子コンピューターによる社会変革を目指す概念であるQXを寺部が提唱し、プロジェクトを開始しました。
寺部はモビリティや工場分野で量子コンピューティングによる世界初の実証実験を主導してきました。世界最大級のテクノロジー見本市であるCESや国際会議で発表した「量子コンピューターによって超高速で最適化が実現できるようになったとき、工場やモビリティ、果てはそれらを含めた社会全体が変わっていく」とのコンセプトは反響を呼び、数々の仲間が国内外から集まることで複数の共創プロジェクトにつながりました。

QXプロジェクトを推進する寺部(左)と蓮村

量子技術で社会を変えるエコシステムを創る住友商事

QXプロジェクトの発足以降、住友商事は量子コンピューティングの活用に不可欠なソフトウェアを開発するイスラエルのクラシックに出資したほか、ドローンなどのエアモビリティの航空管制システムを構築するワンスカイシステムズ(OneSky Systems)、東北大学と共に量子コンピューターを用いた航路設計の実証実験を行っています。
また、住友商事では量子コンピューターに関するQXプロジェクトに加えて、量子コンピューターの普及に伴うサイバーセキュリティの脆弱化に対応するべく、量子暗号技術(※2)を手掛ける英国のアーキット(Arqit)に出資し、日本市場向けの量子暗号技術の普及にも取り組んでいます。
今後も、住友商事はQXプロジェクトを通じ、世界中のさまざまなパートナーと共に量子技術で描く、新しい未来を切り拓いていきます。QXプロジェクトのパートナーも随時募集中です。

※2 量子暗号技術:物理学の量子力学理論を応用した暗号化技術



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