2022年11月02日

冷却原子方式を用いた量子技術の日本向け代理店パートナーシップについて

住友商事は、ColdQuanta, Inc.(以下、ColdQuanta)と、ColdQuantaが開発する量子センサーならびに量子コンピューター関連製品およびサービスの日本向け代理店権に関するパートナーシップ契約を締結しました。今後、ColdQuantaの量子技術を活用したソリューションの日本向けマーケティングおよび販売活動を実施していきます。

近年、世界各国で量子技術の研究・開発が加速しています。量子技術には超電導方式、イオン・トラップ方式などさまざまな方式が存在しますが、ColdQuantaは量子技術の中でも「冷却原子方式」を用いて量子コンピューターや量子センサーを開発しています。同社の冷却原子方式は、真空状態のガラス容器の中に中性原子を抽出し、レーザーを照射することで原子の動きを止め冷却し、原子1つ単位での操作を可能とするものです。大型の冷却装置を必要としないため、量子デバイスの小型化を可能とするほか、安定した状態を保ちます。

量子コンピューターが既存の古典コンピューターをはるかに凌駕する計算速度を達成することで注目される中、量子センサーも既存のセンサー技術の100倍から1,000倍ほど上回る感度・精度を実現できるものとして、実用化が期待されています。量子センサーを活用することで、より高精度な慣性航法装置の開発や、GPS信号を受信できない環境下においても高精度の位置測位が可能となり、より高度で安定した自動運転などのモビリティの進化や効率的な資源探査などが実現できます。

ColdQuantaは、2007年に設立された米国コロラド大学発の量子関連スタートアップです。ノーベル物理学賞を受賞した技術など、冷却原子方式に関する複数の特許を保有もしくは独占使用し、米国国防総省やNASA、英国国防省などさまざまな政府系機関との契約実績を有します。2022年10月に完了したSeries Bの資金調達ラウンドでは、In-Q-TelやBOKAグループホールディングスなどと共に米州住友商事も出資しました。

住友商事は2021年3月に量子技術による社会変革を目指す「Quantum Transformation(QX)プロジェクト」を立ち上げ、広範な事業領域を持つ総合商社として、量子技術による社会変革のリーディングカンパニーを目指しています。量子コンピューター関連企業への出資、実証実験のほか、量子暗号分野においてもパートナーシップを締結しています。今回のパートナーシップにより、日本国内におけるColdQuantaの量子センサー、量子コンピューターなどのマーケティング活動を行うほか、官公庁やメーカーなどとの研究開発や共同事業も検討していきます。

住友商事は、ColdQuantaと、冷却原子方式を用いた量子関連製品・サービスの日本での普及を通じて、量子を活用した社会変革に貢献していきます。

参考情報

■ColdQuanta概要

■ColdQuanta概要

会社名 ColdQuanta, Inc.
代表 Scott Faris(CEO)
所在地 米国コロラド州ボルダー
設立年月日 2007年

■住友商事の量子関連の取り組み

時期 出資先/パートナー 取り組み内容
2020 ベルメゾンロジスコ 物流センター「ベルメゾンロジスコ」にて、量子コンピューターを活用した勤務シフトの作成実証を実施
2020 Classiq 量子ソフトウェアの開発支援環境を構築するイスラエルのClassiqに出資。2021年には追加出資
2021 Arqit 量子暗号技術を持つ英国Arqitへ出資。量子暗号製品の日本向け代理店権を獲得
2021 OneSky、東北大学 ドローンの無人機管制システムを開発する米国OneSkyと東北大学と共同で、量子コンピューターを活用した航路設計実証を実施
2022 Nord Quantique 誤り訂正技術の開発に強みを持つカナダのゲート型超伝導量子コンピュータハードウェアスタートアップNord Quantiqueに出資


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