2025年07月08日
住友商事株式会社
英国のセメント・石灰産業の脱炭素化に向けCO2輸送パイプライン開発事業へ出資~国内生産量の4割を占める英国最大の工場群から年間約300万トンのCO2を輸送~
住友商事(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:上野 真吾、以下「住友商事」)は、在英国の完全子会社であるSummit Energy Evolution Limited(以下、「SEEL」)を通じて、「Peak Cluster炭素回収プロジェクト」を支えるCO2輸送パイプライン開発事業(以下「本案件」)へ出資しました。英国のセメントおよび石灰の約4割を生産するPeak地域周辺の4つの工場で回収されたCO2をパイプラインで輸送し、CCS(注1)バリューチェーンを構築することで、建設、製造、環境保護を含む経済の主要な分野にとって不可欠な産業の脱炭素化に寄与します。住友商事は、本案件を通じ、今中期経営計画における成長分野であるエネルギートランスフォーメーションを推進します。

プロジェクト概要
本案件は、英国の低炭素エネルギー開発企業Progressive Energyとセメント製造事業者であるTarmac、Breedon、SigmaRoc、Holcimが2022年から共同で概念設計(Pre-FEED)を進めてきたものです。今回新たにSEELは、合弁会社であるProgressive Energy Peak Limited(以下「PEPL」)を通じて、CO2輸送パイプライン開発における特別目的会社Peak Cluster Limited(以下「PCL」)へ出資することに合意しました。なお、英国政府の主要な投資機関かつ政策銀行であるNational Wealth Fundも新たにPCLへの出資を行っています。

本案件では、2028年の最終投資決定(FID)を目指して、基本設計(FEED)や、規制当局の承認に必要な調査を進めます。FID迄の開発費用は総額5960万ポンドを見込んでいます。
セメントや石灰の製造過程で排出されるCO2は、低炭素燃料への移行などによる削減が困難とされています。そのため、これらの産業の脱炭素化に不可欠なCCSを進めていく必要があります。
英国はCCS分野において世界をリードする国であり、政府は2035年までに年間5,000万トンのCO2を回収することを目指しています。本案件では、英国最大のセメント・石灰工場群の脱炭素化に向け、年間300万トンのCO2を輸送し、英国政府の目標実現に貢献していきます。
2031年に完成予定のパイプラインは、CCSバリューチェーンのうち「輸送」の役割を担い、生産現場で回収されたCO2を沿岸部まで陸上で運びます。輸送されたCO2は、英エネルギー会社のSpirit Energyが開発するMorecambe Net Zero(MNZ)プロジェクト(注2)によって東アイリッシュ海の海底に貯蔵されます。「Peak Cluster炭素回収プロジェクト」を通じて、CO2排出量削減が難しい産業の脱炭素化を促進し、上記Spirit Energyの設備を含めて13,000件の雇用創出に貢献していきます。

住友商事の二酸化炭素貯留事業戦略
住友商事は、1970年代より蓄積してきた石油・ガス上流事業の経験に加え、多様な事業領域およびサプライチェーンの知見を生かし、「CO2分離・回収」「輸送・貯留」「利活用」の事業開発に取り組んできました。2023年に英国で取得した2件の二酸化炭素貯留権益に加え、今回のCO2輸送事業で英国におけるCO2の輸送・貯留事業の実績をさらに積み重ねていきます。特にCO2輸送事業は技術的課題が多く、商業化を達成するためには豊富な経験と高度な技術が求められます。住友商事は、グローバルに展開するCCS事業と鋼管供給事業から得たノウハウを生かして本案件を進め、ここで得た知見を用いて米州やアジア大洋州地域への事業拡大を図ります。
会社概要
会社名 | Summit Energy Evolution Limited (SEEL) |
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本社所在地 | イギリス ロンドン |
代表 | ポール・ラファティ |
設立年 | 2021 |
事業内容 | 低炭素エネルギー事業(CCUS(注3)、低炭素水素製造など) |
CO2輸送パイプライン開発事業の概要
特別目的会社 | Peak Cluster Limited |
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事業内容 | CO2集積および輸送のパイプライン開発 |
株主 |
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開発決定(FID) | 2028年 |
CO2回収量 | 年間約300万トン |
(注1)CCS:Carbon dioxide Capture and Storageの略で、産業活動から排出されるCO2を回収・貯留すること
(注2)Morecambe Net Zeroプロジェクト:枯渇した東アイリッシュ海のガス田を炭素貯留に再利用する取り組み。Peak Cluster炭素回収プロジェクトと連携して進められており、他産業から排出されたCO2を、安全かつ将来的にも拡張可能な形で貯留する
(注3)CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storageの略で、産業活動から排出されるCO2を回収・貯留・利用すること
関連トピックス
英領北海にてCarbon Storage(二酸化炭素貯留)権益を取得
英国Bactonガスターミナル周辺地域における低炭素水素製造に関する共同開発契約締結について
バイオガスからのCO2除去(CDR)のパイオニアであるInheritに出資
米国・アラスカにおけるCCS事業性調査に向けた共同調査契約を締結