社員の語学力を生かして
外国ルーツの子どもを
支援する - コミュニティ通訳
JAPAN
住友商事では、業務や海外経験で培った
社員の語学力を生かして、日本で暮らす外国人の子どもたちを
支える「コミュニティ通訳」活動に取り組んでいます。

「コミュニティ通訳」とは
住友商事は、2023年より、外国語を習得している社員を、通訳を必要とする教育現場に派遣する活動を開始しました。少数言語通訳者派遣コーディネートを手がける、NPO法人国際活動市民中心(CINGA)との連携による取り組みです。
「日本の学校での生活や勉強についていけず、不登校気味になっている息子を助けてほしい」。2022年12月、ウクライナから避難してきた親子の母親からCINGAに相談があったことがきっかけとなり、CINGAとの連携を模索していた住友商事は、100SEEDの一環として、そのお子さんが通う小学校に、通算4ヶ月、7人の社員を派遣しました。
自分たちだからこそ出来る支援を
ロシア語を母語とする小学3年生(当時)の男の子の支援に手を挙げた社員は、コミュニティ通訳が果たす役割や留意点に関する研修を受講した後、いよいよサポートを開始。平日の午前中に交代で学校を訪問し、授業の通訳はもちろん、休み時間中の子どもたちの遊びにも加わり、円滑なコミュニケーションが図れるよう努めました。
活動を進めるにつれ、日本語が上手になり、クラスメイトとの関わりも深くなり、学校生活を生き生きと楽しめるようになった彼の姿は、関わったメンバーに大きな感銘を与えました。今回の活動のゴールは、彼が自立し、学校に一人で通えるようになること。その目標は十分に達成することができたと言えるでしょう。ウクライナとロシアの戦争に胸を痛めていた多くの社員たちにとって、自分たちだからこそ出来る社会貢献活動の一つの形となりました。
早期支援実現のための仕組みづくりも
お子さんやご家族のサポートができたことはもちろん、この活動を通じて、CINGAのみならず、自治体や学校現場から信頼をいただけたことも、次につながる大きな成果です。
困りごとを抱えている外国ルーツのお子さんを早期に把握し、必要な支援につなげていく仕組みづくりにおいて、住友商事として協力できることはないか。今後、CINGAとの議論を重ね、きっかけを探っていきます。
2023年秋からは、中国語による支援活動が始まっています。さまざまな言語を話せる社員が多くいる住友商事にとって、「コミュニティ通訳」は、自分たちの持つスキルを生かせる、まさに商社らしい支援活動となりつつあります。
活動に関わった社員から
活動の中で、特に忘れられない場面が3つあります。1つは、最初の訪問を終えた後。社内メンバーの情報交換で「彼は学校を拒否しているわけじゃない。ただ、どうやって頑張ればいいのか、その場で何をすればいいのか分からず不安なだけ」という認識を全員で共有し、自分たちの役割を明確にできたこと。これが活動のスタートラインになりました。
2つ目は子どもの変化。ロシア語には「あなた」の呼び方が二つあります。目上の人に対する「ヴィ」と、親しい人に対する「トゥイ」。最初は私のことヴィと呼んでいたのが、1ヶ月ほどしてトゥイと呼んでくれるようになったんです。それから、自分から積極的に質問をしてくれるようになり、体に飛びついてきたり。心を開いてくれたと感じました。わがままもきちんとたしなめるようになって、互いに本音で話せるようになりました。
そして3つ目は、小学校の運動会に招待された時のこと。一緒にサポートにあたった社員や地域ボランティアの方々、ロシア駐在時代の知人も娘さんが同じ小学校にいる偶然もあって、みんなでお子さんを一緒に応援しました。あの瞬間は、本当の家族のような気持ちで、あの日こそが、私たちにとっても彼にとっても「コミュニティ通訳」の集大成だったと思います。
100SEEDという仕組みのおかげで、業務時間内に社会貢献活動に取り組むことができ、自らが学んだ語学を業務以外で活かすことができました。こうした場を提供してくれた会社に感謝しています。また機会があればぜひ参画したいと思います。

アグリサイエンス事業部 松本 直毅

運動会の練習にも参加していた通訳メンバー

教室では椅子を並べて一緒に座り、子どもたちと次第に仲良くなった
関わる全ての人にプラスの
活動であるために
CINGAでは2004年の発足以来、寄付に頼らない活動を続けてきたため、これまで企業と関わる機会がほとんどありませんでした。今回、ご縁があって、住友商事の社員の方々をコミュニティ通訳に派遣することができ、社会貢献活動の領域において、企業との連携の有用性を実感しています。特に、少数言語に堪能で異文化理解など国際感覚にも優れ、かつ平日の昼間に継続的に学校訪問することができ、さらに交通費も自己負担でOKという方を自分たちで探すことは極めて困難です。加えて、教育を支え、社会に貢献する情熱を持って参画してくれる住友商事の皆さんと協力できることは、我々にとってもまさに画期的な出来事でした。
支援を受ける子どもにも、私たちNPOにも、そして活動に関わった住友商事の皆さんにとってもWin-Win-Winの活動であり続けるために、そして一つ一つのケースワークからソーシャルワークへとつなげていくために何ができるか、今後も一緒に議論を重ねていければと考えています。
CINGA Webサイト: https://www.cinga.or.jp/

NPO法人国際活動市民中心(CINGA)コーディネーター 新居 みどりさん
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