グローバル事例
畜産向け動物薬ビジネスで食の安全・安心を守る
中国
住友商事が動物薬ビジネスに参入したのは、1990年代のこと。2010年代からは、畜産が盛んな中国の動物薬メーカーに出資し、事業を拡大してきました。食料の安定供給によって人々の健康を支え、「生活水準の向上」を目指しているのが住友商事の畜産向け動物薬ビジネスです。
世界最大規模の畜産国中国で動物薬を手掛ける
動物薬によって家畜の疫病予防や治療を行うことは、飼養水準を向上させ、動物性タンパク質を効率よく生産し、人々の健康的な生活を支えることに直結します。住友商事は2016年3月、世界最大規模の養鶏および養豚国である中国の動物薬メーカー、シンダーに出資し、畜産市場向けの動物薬の製造・販売事業に乗り出しました。
住友商事の動物薬ビジネスのスタートは、1990年代のペット用ノミダニ駆除剤原料の輸出にさかのぼります。それ以前から農薬ビジネスを手掛けていた当社が、原料の共通する新しい製品分野にチャレンジする形で始まりました。その後、世界最大のペット市場である米国のペット用品メーカー、ハーツ・マウンテンを買収し、米国における動物薬販売事業に本格的に踏み出しました。さらに、獣医ルート向け専門のノミダニ駆除薬の販売などにもビジネスを拡大したのち、新たな事業領域である畜産用動物薬市場への展開を模索し始めたのが2013年頃でした。
中国動物薬メーカー、シンダーとのシナジーで世界の食の安全・安心に貢献する
当社は、長年医薬および農薬ビジネスに携わってきており、同分野での事業会社のマネジメント知見をもっています。動物薬は、ヒト用医薬品との共通点があり、かつ農薬同様、食に関わるビジネスのため、これまでの事業経験を生かせる可能性が高いと考え、今般、世界最大の飼養規模を誇る中国における理想的なパートナーとしてシンダーを選択しました。
シンダーは、非上場民間企業でありながら、中国政府から鳥インフルエンザワクチンの製造・販売が認められている数少ない動物薬メーカーで、中国国内における動物薬の幅広い販売ネットワークももっています。中長期的にも、所得水準の向上に伴ってさらに高まる食の安全・安心を求める消費者のニーズに応えるため、残留のないワクチンの製造・販売拡大を目指しています。一方、当社には、事業会社をマネジメントするノウハウと、グローバルなネットワークがあります。シンダーと当社のシナジーによって、中国をはじめとする世界各国の畜産市場を支え、食の安全・安心を確保することがこのパートナーシップの狙いなのです。
グローバルネットワークを駆使した販路の拡大
シンダーとは2016年から共同事業を本格化させ、経営管理の現地化と海外販路の拡張という「守り」と「攻め」を織り交ぜて、さらなる成長を模索しています。すでにケニアの企業との販売契約が実現したほか、当社のグローバルネットワークをフルに活用し、東南アジア、南米、中東各国の企業とも契約交渉を進めています。
人口の増加や所得の向上に伴い、食肉嗜好は高まる傾向にあり、家畜の病気を防ぐ動物薬のニーズも高まっています。今後、ますます動物薬を必要とするであろう新興国市場に向けて、高品質で安価な動物薬を届けることも目標の一つです。
疫病のまん延を防ぐ
日本の畜産物自給率は61パーセント(生産額ベース)。将来的には、輸入関税率低減による日本向けの輸入食肉増加の観点からも、海外での安全・安心な食肉生産に対応できる動物薬製品ラインナップの拡充も着々と進めています。シンダーが製造していない製品や生産工程を日本のワクチンメーカーから導入する、あるいは、ライセンスを取得して新たに製造するといったことを今後は実現していく計画です。日本と中国、さらには世界をつなぐ総合商社としての力が発揮されることになります。
中国での家畜伝染病の伝播対策は、日本を含む近隣諸国、引いては世界への疫病まん延を防ぐことにつながります。まさに、シンダーとの共同事業は、東アジアのみならず、世界の食肉と人々の健康に資する意義もあります。そして、当社は、これまでのビジネスの蓄積にシンダーとのシナジーをプラスすることにより、食の安全・安心にグローバルで貢献していきます。
2017年04月掲載
キーワード
- 東アジア
- 化学品
- 化学品・エレクトロニクス・農業グループ