グローバル事例

西豪州の農業を支える総合商社としての力

オーストラリア

肥料は食料生産に欠かせない栄養素です。住友商事が農業国オーストラリアにおける肥料事業を本格化したのは、1980年代末のことでした。現在もグループ企業を通じて大規模な農業資材ビジネスを展開しています。農作物の安定生産を支え、「循環経済」の実現と、人々の「生活水準の向上」に貢献しているのが住友商事の農業資材事業です。


農作物の栄養士としての肥料事業者

肥料は「農作物の栄養素」、肥料を販売する事業者は「栄養士」としばしば表現されます。作物の種類や畑の土壌、気候などに合わせて成分を配合し、最適な栄養素をつくり、それを農家が必要とするタイミングで届けること。それが肥料事業者の役割です。

当社の肥料ビジネスが拡大を始めたのは1970年代。当初は日本のメーカーが生産した肥料を海外に輸出するモデルでしたが、円高が進んでからは、逆に海外の肥料を日本に輸入するビジネスが主流になりました。その後、海外に進出し、自ら現地で肥料を生産・販売するケースも増えてきました。

肥料倉庫内部。農家の需要に合わせて供給する

肥料原料の輸入・販売のノウハウを提供する

現在、海外における肥料ビジネスで成功を収めている事業会社の一つが、西オーストラリアにおけるサミットルーラルウエスタンオーストラリア(SRWA)です。小麦をはじめとする穀物の世界有数の産地である同地域の肥料市場では、長い間一社による独占状態が続いていました。その市場に当社が乗り出したのは、肥料のユーザーである農家のニーズを受けてのものでした。

2,000~3,000ヘクタールの農地を持つ大規模農家が多いのが西オーストラリアの特徴です。そのような大規模農家には、自ら肥料を輸入したいというニーズがありました。しかし、農業を専業としてきた人たちが輸入事業を手掛けることは簡単ではありません。そこで、豪州住友商事が輸入・販売に関するノウハウを提供することになったのです。

大型農機で広大な敷地に適切な量・タイミングで肥料をまく

ビジネスモデルを確立し、最高益を達成

肥料の原料を輸入し、配合して販売する、という住友商事と大規模農家による共同事業がスタートしたのは、1989年のことでした。当初は年間5,000トン程度だった販売量は、その後順調に伸び、30万トンを超えました。これは、西オーストラリアにおける肥料市場のほぼ4分の1、シェア第2位となる量です。この事業拡大を受けて、2006年、当社は西オーストラリアの肥料事業をSRWAとして再編、持分比率100パーセントの事業としました。現在は、年間販売数量約50万トン、販売シェアを約30パーセントまで伸ばし、当社が営む国内・海外肥料ビジネスの中核をなす事業に成長しています。

肥料ビジネスにおいて重要なのは、世界中から原料を調達できるネットワーク力だけでなく、市況を見ながら最適なタイミングで原料を調達し、適切な在庫管理を行い、農家の需要に合わせて商品を提供するマネジメントのノウハウです。SRWAは、08年のリーマンショックによる損失を受けて、仕入れ、在庫管理、販売のあり方を徹底的に見直し、市況に大きく左右されないビジネスモデルを確立しました。その結果11年から業績が回復、その後も順調に拡大しています。

SRWA本社全景

質の高いコンサルティングサービスを

作物に最適な栄養を提供するには、緻密な土壌分析と、それに対応した成分配合のノウハウが欠かせません。また、継続的に農業を行うためには、土地を傷めない施肥を施す必要もあります。さらに、干ばつや異常気象などによる市場の変化があっても赤字にならない筋肉質な経営も求められます。

質の高い肥料の販売とコンサルティングサービスを提供し、農家と長期的な関係を結びながら、西オーストラリアの農業をさらに発展させていくこと。そして、事業基盤をさらに盤石なものとし、この地域における肥料ビジネスのシェアを着実に伸ばしていくこと。その目標達成のために、当社は今後も総合商社としての力を発揮していきます。

農家と共に小麦畑で生育調査を行う

2020年04月掲載

キーワード

  • アジア・大洋州
  • 食料品
  • 化学品
  • 化学品・エレクトロニクス・農業グループ

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