グローバル事例
カンボジアで展開する、電子機器製造事業
広報パーソン探訪記
2017年12月掲載
報道チーム光原 克
2011年入社。現在、広報部報道チームで金属、輸送機・建機、食料、生活資材・不動産を担当。17年6月、シンガポール駐在を終え、帰任した先が広報部であることに驚く。全社視点で勉強できることが今は楽しい。住商バスケットボール部に所属ながら幽霊部員。最近は育児が趣味に。
タイから国境を越え、現地へ
タイの首都バンコクからカンボジアとの国境までは車で東へ約4時間。サトウキビ畑、牛の放牧(野生?)といったのどかな風景を横目に、比較的安定した道路を進む。途中で南部経済回廊に入った。南部経済回廊は、南北経済回廊、東西経済回廊と並ぶ東南アジアの国際幹線道路で、タイのバンコク、カンボジアのプノンペン、ベトナムのホーチミンと人口200万人超の大都市を結び、経済効果が最も高いことで知られる。ASEAN域内の関税撤廃に合わせ、輸送インフラの整備で各国が協力したプロジェクトであり、日本のODAも活用されている。国境を超える大型トラックがひっきりなしに通行し、ASEAN南部経済の大動脈を肌で感じた。
イミグレーションを通過しカンボジアに入国すると、アスファルトの道路はなくなる(南部経済回廊ではない)。ポイペト市だ。土の地面を走る大型トラックやバスに混じり、リヤカーを用いて物資を運搬する男性、物売りの子供が出現し、「アジア最貧国」の言葉も頭をよぎる。日本人が13人しか住んでいないポイペト市内で数少ない、温水シャワーが利用できるホテルに宿泊し、翌日に備えた。
工場を訪問
SMCはサンコーポイペト経済特別区内のレンタル工場を貸借し、1,000平方メートルの工場を構える。工場は昨年9月に完成したばかりで、外観はきれいだ。午前8時、SMCの青いユニフォームを着用した従業員が次々に出社してきた。あいさつをすると皆笑顔で返してくれる。カンボジアではユニフォームのない会社が大半のため、ユニフォームを着用することは一種のステータスのようだ。SMCのユニフォームは、デザインがクールだと従業員の評判も良い。出社後の朝礼では、月間目標数量の再確認、組立手順の確認、歩留まり目標の確認などを行う。従業員の平均年齢は20.5歳と若く、まだあどけなさの残る従業員も見られるが、全員が整然と列をなし、眼差しは真剣だ。
電子部品を加工している。従業員は、タイ工場から転籍したタイ人マネージャーと、採用後すぐにタイ工場で2ヶ月間教育されたリーダークラスのスタッフ数名を教育係とし、OJTで技術を身に付けている。片手に持ったコネクターに種類の異なる10本程度のワイヤーを取り付ける作業や、ワイヤーをひねって束ねる作業は単純に見えるが、実はかなり高度な技術を必要とする。組み立てた製品は品質検査を受ける。納品先はタイの日系メーカーだ。品質に対する要求は非常に高い。最初から品質検査をパスする製品を作れるケースは少なく、従業員は皆、日々努力を重ねているようだ。
トラックが到着!
ASEAN域内の経済発展を担う
東南アジアでは、2015年末のASEAN経済共同体発足の影響で域内経済の発展が見込まれている。カンボジアはタイよりも廉価で豊富な若年層労働力を有するため、SMCはスミトロニクス・タイの一部工程を移管して操業した。これにより、タイ工場は高付加価値品に注力することができる。既存製品の製造はカンボジアへ移し、タイ工場はハイエンドへシフト。このすみ分けにより、両国で製品ラインナップに応じた効率的な製造を実現していく予定だ。SMCではいずれ、現在タイ工場で製造する車載向け製品を手掛けることを長期的な目標に掲げている。
SMCの工場従業員は現在25人であるが、採用時は20人の募集に対してなんと一晩で60人の応募があったと聞く。「日本が好きだから日系企業で働きたかった」と口にする従業員は少なくない。現地では中国企業、タイ企業が多いが、日系企業に対するイメージが良いのだ。狭き採用の門を通り抜けた従業員は皆真面目で、朝の遅刻は皆無という。東南アジア駐在を経験した者として、工場従業員の遅刻が問題とならない点は大いに驚きであった。さらには、手先も器用とのことで、これらが安定的な生産体制の一因となっている。
工場内には、製造業の職場環境改善に用いられるスローガンである5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の大きな看板が掲げられている。従業員からは「職場環境が清潔」「十分な休日が約束される」といったコメントも出ており、雇用創出機会の観点から現地のSMC事業に対する受け止めは良好だ。SMCは今後、事業拡大のため、建設中のポイペト・プノンペン経済特別区に自社工場を構える予定としている。国を跨る製造オペレーション、雇用の創出。SMCがASEAN経済発展を担っている。
(おまけ)広報パーソンポイペト市内探訪記
後日、ポイペト市内のカジノ村を訪れた。法が整っていなかった時代に、タイ資本が導入したものだ。巨大な建物、ネオンなど圧倒的な存在感を放つ。夕方にはカジノで働く従業員の出勤風景を目撃した(カジノ村の中に従業員専用のアパートがある)。建設に際し地元住民は立ち退きを強いられたかもしれないが、今では立派な雇用の場となっている。
タイ-カンボジア間鉄道の建設現場を訪れると、タイ側はほとんどレール敷設が完了していると聞く。終点となるカンボジア側のポイペトでは、まさにレール敷設中だ。完成すれば、車、バイクを持たない人も国境の道路渋滞に遭わず移動できるようになる。完成が楽しみだ。
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