グローバル事例
欧州における数々の洋上風力発電プロジェクトに参画
ドイツ/ベルギー/イギリス /フランス
欧州で急速に導入が進む洋上風力発電
EUは、2030年までに域内のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を少なくとも32パーセントにまで高めるという目標を掲げています。さらに、欧州委員会が21年7月に発表した政策パッケージでは、この比率を40パーセントまでに引き上げようという提案がありました。中でも欧州で急速に導入が進んでいるのが、海上に設置した巨大な風力タービン(風車)で電気を起こす洋上風力発電です。ノルウェー、デンマーク、ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、英国などに囲まれた北海を中心とした海域における風力発電所建設が、現在急ピッチで進められています。
洋上風力発電の最大のメリットは、風を遮る山や建物が一切ないことです。そのため、風の力を効率よく発電に結び付けられるだけでなく、発電量の予測も立てやすいという特長があります。
また、施設を建設できる広大なスペースがあることから、制約の多い陸上と異なり、大型風車の輸送が容易であることも洋上風力発電の大きなメリットです。特に北海は、沖合40キロメートル以上まで遠浅が続く、風力発電所建設に非常に適した地形を持ちます。
ベルギーで4つのプロジェクトに参画
住友商事が洋上風力発電事業に参入したのは2014年にさかのぼります。
ベルギーの洋上風力発電事業者であるパークウインドとの戦略パートナーシップの下、北海における稼働中・建設中・開発中の案件であった「ベルウインド」「ノースウインド」「ノーベルウインド」にそれぞれ事業参画しました。
そして18年8月、新たにパークウインド社との4件目の共同事業となる「ノースウェスター2」に事業参画し、20年5月に無事完工しました。近年、欧州洋上風力市場では、技術革新による風車の大型化が進んでおり、本事業では運転中のものでは世界最大級となる風車を使用しています。
これらの巨大な風車群を建設し運転するには、安定した資金力に加え、プロジェクトを確実に遂行するマネジメント力、オペレーション力が求められます。当社は、火力発電所の建設・運転の経験、さらに北米、中国、南アフリカにおける陸上風力発電事業のノウハウを生かして、ベルギーで洋上風力発電プロジェクトを成功させてきました。
欧州で拡大するプロジェクト参画 ベルギーから英国、そしてフランスへ
欧州における住友商事の洋上風力発電事業の拠点は、ドイツのデュッセルドルフを中心とし、ベルギーのルーベン、英国のロンドン、フランスのパリにあります。当社は、発電事業者として現地にしっかり根を下ろしながら、総合商社ならではのネットワークを駆使して情報を集め、常に新規事業の可能性を探ってきました。
2016年、17年と英国での洋上風力発電プロジェクト「ギャロパー」「レースバンク」に立て続けに参画できたのも、ベルギーでのプロジェクトが評価されたことに加えて、現地での地道な活動があったからです。ベルギーのプロジェクトを上回る大規模な英国の2つの風力発電案件は、「レースバンク」が18年3月、「ギャロパー」が9月に完工、その運転フェーズにおいても、ベルギーでの経験が生かされています。これに引き続き、当社は「ギャロパー」の拡張案件である「ファイブ・エスチュアリーズ」の開発に取り組んでいます。
18年にはベルギー、英国に引き続き、フランスでも洋上風力発電プロジェクト「ル・トレポール」「ノワールムーティエ」に事業参画しました。「ル・トレポール」は英仏海峡洋上沖合約15キロメートル、「ノワールムーティエ」はフランス・ビスケー湾沖合約12キロメートルの海域において開発予定で、現在ファイナンスクローズ(※)達成を目指しています。この両プロジェクトの総発電容量は合計992メガワットで、約164万人分に相当する電気を供給します。
このように欧州の洋上風力発電市場は年々拡大の基調にあります。今後、将来の普及が見込まれる浮体式洋上風力発電プロジェクトも含め、欧州各国でのプロジェクトに参画し、事業を拡大させていくことが当社の目標です。これまで各国政府からの補助金によって支えられてきた再生可能エネルギーのビジネスモデルが、昨今補助金なしで自立できるビジネスモデルに急激に変わりつつあり、発電の安定性を高めながら、コスト面での優位性を追求し、欧州市民に向けて電力を継続的に供給していくことを目指しています。
- 「ファイナンスクローズ」:プロジェクトへの融資契約を締結し、貸し出しに関する要件を満たすこと
アジア地域での展開の可能性も
欧州以外の地域では、アジア、オセアニア、北米も洋上風力発電の好適地として世界から注目されています。
アジアでは、風力資源の豊富な広い海洋があるという地形上の利点があり、政府が再生可能エネルギーを重視する姿勢を鮮明に打ち出している日本に加え、ベトナム等も注目を集めています。北海のように遠浅の地形ではないこと、台風が多いことなど課題はあるものの、欧州での洋上風力発電事業の経験が日本を含むアジアやオセアニア地域で生かされる機会が近い将来にやってくると当社は考えています。
再生可能エネルギー事業拡大に向けたファンドの設立
住友商事は、2018年4月より火力発電および再生可能エネルギーを統合し、電力事業にトータルで取り組む体制をグローバルに整備しました。未来に向けて地球環境と共生し、社会に貢献できるエネルギー事業を確立していくこと。それが当社の電力事業の目標です。
19年、住友商事、三井住友銀行および日本政策投資銀行は、共同で出資するファンド運営会社であるスプリング・インフラストラクチャー・キャピタル(SIC)を通じて、1号ファンドを設立しました。日本初の海外洋上風力発電事業投資ファンドであるこのファンドでは、当社が参画する英国の「レースバンク」ならびに「ギャロパー」洋上風力発電所をシードアセット(ファンドの投資対象資産)として組み入れました。また22年には2号ファンドを設立し、国内太陽光発電所をシードアセットとして組み入れています。
SICを通じて、機関投資家に対して国内外の再生可能エネルギー発電資産への投資機会を提供するとともに、再生可能エネルギーを中心とした世界のインフラ整備に貢献していきます。
環境との共生と、電力に支えられた快適で心躍る生活を両立させるために、当社は再生可能エネルギー事業を力強く推進していきます。
2022年10月掲載
キーワード
- 欧州
- 電力・エネルギー
- 環境
- エネルギートランスフォーメーショングループ