収益力を支える経営基盤

財務健全性の維持と事業投資マネジメント力の強化

当社では、従来からバランスのとれた事業ポートフォリオの維持・強化やリスクアセットとリスクバッファーの均衡の維持を基本方針としています。2019年度に向けて目指す姿である一段高いレベルの利益成長を実現するために、BBBO2014では収益力の徹底強化に加え、収益力を支える経営基盤の強化として財務健全性の維持や事業投資マネジメント力の強化に取り組んでいます。

財務健全性の維持

リーマンショックを発端とした金融危機や欧州債務危機など、近年は不安定な金融環境が常態化する中、金融機関への規制も強化されています。このような金融環境の下では、有利子負債に過度に依存しない水準でバランスシートをコントロールすることが非常に重要となっています。

有利子負債に過度に依存しない健全な財務体質を維持しつつ、一段高いレベルの利益成長を実現するためには、資産効率の向上による収益基盤の強化とキャッシュ創出力の向上による投資余力の確保が不可欠です。

財務健全性の維持

1. 収益基盤の強化(ビジネスの新陳代謝の促進)

BBBO2014では、ROAを定量目標に追加し、有限な経営資源を有効活用しながら収益力を徹底強化するために、「中長期視点に立ったビジネスの新陳代謝の促進」に取り組んでいます。

収益性・成長性の低いビジネスから、当社が強みを持ち将来にわたり収益の柱とするビジネスや今後の成長が見込まれる将来の収益の柱として育成するビジネスへの継続的な資産入れ替えを行うとともに、投資した事業の着実なバリューアップを図っています。

また、当社単独で事業を行うよりも、他社の知見やノウハウを活用することでさらなる成長が見込まれる場合には、戦略的パートナーとの提携により、バランスシートを適切にマネジしながら事業の拡大を図っています。2013年度には、当社が100%保有していた英国水事業において、大阪ガス(株)をパートナーとして迎え、持分の半分を売却しました。同社が都市ガス事業で培った顧客サービスや維持管理などのノウハウと当社が持つ上下水処理事業の経験を融合させ、事業基盤のさらなる強化に取り組んでいます。

2. 投資余力の確保

BBBO2014では、キャッシュ創出力の向上のために基礎収益キャッシュ・フロー*のモニタリングを開始し、利益のキャッシュによる回収を促進しています。また、一部資産のバリュー実現や低採算・低成長ビジネスの売却・撤退を通じたキャッシュの回収にも継続的に取り組むことで投資余力を確保し、成長のための投資を続けていきます。

  • * 基礎収益キャッシュ・フロー=基礎収益-持分法による投資利益+持分法適用会社からの配当

このように収益基盤の強化と投資余力の確保を通じた財務健全性の維持に取り組んだ結果、2014年3月末時点のDebt-Equity Ratio(ネット)は1.3倍まで低下しており、また、株主資本比率も27.7%となっています。

基礎収益キャッシュ・フローの推移
DER(ネット)と株主資本比率の推移

事業投資マネジメント力の強化

当社はさまざまな分野で事業投資を行っており、その中には投資規模が大きい案件や製造業、資源・エネルギー権益への投資のように比較的リスクの高い案件も含まれています。このような投資案件を確実にバリューアップし利益貢献させるために、事業投資マネジメント力の強化が重要な課題となっています。

BBBO2014では、従来からの投資リスク管理*に加え、大型事業投資について営業組織とコーポレート組織が共同してフォローする体制を強化しました。案件毎にプロジェクトチームを組成し、出資検討段階から投資実行後の事業の立ち上げまでを一貫してサポートする体制や、事業環境変化により何らかの対応が必要な案件などを、投融資委員会の下で重点的にモニターし、必要な対策を検討する制度を整えています。

また、過去の事業投資における経験を踏まえ、事業投資に関わる一連のプロセスにおけるさまざまな課題や解決策を体系化し、事業投資プロセス全体の質を高め、全社的な投資パフォーマンスを向上するよう取り組んでいます。

経営の安定に資する従来からの取り組み

バランスのとれた事業ポートフォリオの維持・強化

特定の分野・地域にアセットを集中させると、事業環境の変化や投資先国のカントリーリスクの顕在化などによって、多大な損失を被るリスクがあります。

当社は有限な経営資源の効率的配分を進める一方で、事業ポートフォリオの過度な集中を避けることが経営の安定を保つ上で重要だと考え、さまざまな分野・地域でビジネスを展開しながら、バランスのとれた事業ポートフォリオの構築に努めてきました。分野別では、資源分野からの利益に過度に依存せず非資源分野をバランスよく強化し、地域別でも、国内・先進国・新興国の利益バランスを保つことで、多様な収益構造を構築しています。

BBBO2014においてもこの方針に変わりはなく、引き続きバランスのとれた事業ポートフォリオを維持しながら、収益基盤の拡大に取り組んでいます。

リスクアセットとリスクバッファーの均衡の維持

当社は1998年よりリスク・リターン経営*を導入し、最大損失可能性額であるリスクアセットとリスクバッファーである株主資本の均衡を維持することを経営の基本としています。これは、万が一全てのリスクが同時に顕在化した場合でも、その損失を株主資本で吸収することで会社を存続させるという考え方によるものです。

資源・エネルギー開発や製造業への参画などに代表されるビジネスモデルの高度化により、当社のリスクアセットは増加する傾向にありますが、これを適切にコントロールするとともに、当期利益の積み上げによるリスクバッファーの増強に取り組むことで、リスクアセットとリスクバッファーの均衡を維持しています。

リスクアセットとリスクバッファーの推移