社長メッセージ:全てのステークホルダーの皆様へ

We Will Achieve Our Goals / 住友商事グループの安定的・継続的な成長を目指して創立100周年(2019年度)の先、50年、100年、そして永遠に成長を続けるための基盤を築き上げていきます。

01 安定的・継続的な成長を目指して

既存の枠組みにとらわれず、新たなビジネスモデルを創出し、安定的・継続的な成長を目指す。

中長期的なスパンで世界情勢を俯瞰すると、アジアやアフリカの新興国が牽引する形で世界の人口が増加し、エネルギー、食糧、水資源などの急激な需要増加が見込まれます。また、アジアにおいて、経済発展により所得水準が押し上げられ、中間所得層が大きく拡大するなど、新興国の市場規模が拡大を続けることで、世界経済における新興国のウエイトが大きくなり、世界の経済環境は大きく変化していくものと思われます。

総合商社のビジネスモデルはこの20年で大きく変わりましたが、このような環境下、安定的・継続的な成長を続けるには、中長期的な視点で世界情勢・事業環境の変化を見据え、既存の枠組みにとらわれず、新たなビジネスモデルを自ら創り出していくことが必要だと考えています。

住友商事グループは2019年度に創立100周年を迎えます。

さらにその先50年、100年と続く会社にするために、2019年度をマイルストーンに据え、中長期的な視点での当社グループが「目指す姿」を掲げました。この「目指す姿」を実現することで、永遠に続く会社となるための揺るぎない基盤を築き上げていきます。

創立100周年(2019年度)に向けて目指す姿
  • ※本書における「連結純利益」「当期利益」は、国際会計基準(IFRS)の「当期利益(親会社の所有者に帰属)」と同じ内容です。

02 BBBO2014の位置づけ及びBBBO2014における取り組み

「目指す姿」に掲げる一段高い利益成長に必要な土台を築き上げる。

現在取り組む中期経営計画「Be the Best, Be the One 2014」(BBBO2014)では、2013–2014年度の2年間を「目指す姿」に掲げる一段高いレベルの利益成長に必要な土台を築くステージと位置づけ、「中長期視点に立ったビジネスの新陳代謝の促進」、「強み・機能の追求と結集」による「収益力の徹底強化」に取り組んでいます。

「中長期視点に立ったビジネスの新陳代謝の促進」では、

  • 現在の収益の柱のさらなる強化
  • 将来の収益の柱の育成
  • 既存投資案件の着実なバリューアップ

に経営資源を集中的に投下することで収益力の強化を図ります。

同時に、必要な経営資源を確保するために、収益性・成長性の乏しいビジネスの縮小・撤退や戦略的パートナーとの提携を通じた資産の売却・削減を継続していきます。

「強み・機能の追求と結集」では、当社グループの強みと機能を徹底的に追求していくと同時に、社内外でこれらを結集し、総合力を最大限に発揮していきます。

具体的な取り組みの一つとして、「非在来型エネルギー周辺ビジネス」を「全社育成分野」として指定し、全社横断的なワーキンググループで戦略・ビジネスモデルの策定、ビジネスの遂行に取り組んでいます。

当社グループは2009年にアジア企業で初めて参画したシェールガス開発事業や、油井管・ラインパイプといった鋼管事業など、非在来型エネルギー関連のさまざまなビジネスに参画しています。この分野には、水処理事業や建設機械レンタル事業など、さまざまなビジネスチャンスが広がっており、これまでのビジネスを通じて蓄積された知見を結集して、新たなビジネスの創出に取り組んでいます。

中長期視点に立ったビジネスの新陳代謝

03 BBBO2014の1年目(2013年度)を終えて

「目指す姿」に向けた収益力の強化は着実に進捗している。

BBBO2014の1年目となる2013年度の連結純利益は2,231億円となり、期初計画の2,400億円を下回る結果となりました。金属、輸送機・建機などの非資源ビジネスは堅調に推移しましたが、資源ビジネスにおいて、資源価格下落の影響を受けたことに加え、年度末に豪州石炭事業で減損損失を計上したことが主な要因です。

また、資源の大型案件など、一部の投資案件では当初計画と比べて収益化が遅れており、これらの案件を着実にバリューアップすることが、今後の大きな課題と考えています。

一方で、減損などの特殊損益を除いた収益力を表す「基礎収益」は、非資源ビジネスが牽引して、期初計画を上回る2,450億円まで伸びており、「目指す姿」に向けた収益力の強化は着実に進んでいると評価しています。

非資源ビジネスは、収益の柱が着実に成長した結果、基礎収益は2,084億円に達しました。これは収益の柱への経営資源のシフトや、戦略的パートナーとの提携といった施策に取り組んできた成果と言えます。

また、投融資については、2年合計7,500億円の計画に対して、「重点分野」や「育成分野/地域」を中心に2,900億円の投融資を行いました。

資産売却・削減についても、2年合計7,700億円の計画に対し、2,500億円の資産売却・削減を実施しており、「ビジネスの新陳代謝」は順調に進捗しています。

基礎収益の推移(億円)
  • ※基礎収益=(売上総利益+販売費及び一般管理費(貸倒引当金繰入額を除く)+利息収支+受取配当金)×(1–税率)+持分法による投資利益

04 「目指す姿」を見据えたBBBO2014の2年目(2014年度)の取り組み

よりスピード感をもって「ビジネスの新陳代謝」を 進める。

取締役社長 中村 邦晴

BBBO2014の2年目となる2014年度は、連結純利益の目標を2,500億円としています。

資源ビジネスでは、市況価格が低調に推移し、厳しい事業環境が継続すると見込まれますが、非資源ビジネスでは、収益の柱となっているビジネスの利益成長に加えて、近年投資した事業の収益貢献を見込んでいます。

2014年度は「中長期視点に立ったビジネスの新陳代謝の促進」に、さらにスピード感をもって取り組み、この計画を達成することで、「目指す姿」の実現に向けたしっかりとした土台づくりを進めていきます。

「現在の収益の柱のさらなる強化」への取り組みとして、鋼管事業において2013年11月にエネルギー産業向け鋼管・鋼材のグローバルディストリビューターであるエジェン・グループを買収しました。2014年度は、当社の強みである鋼管バリューチェーンとのシナジーを追求し、さらなる収益力の強化を図っていきます。また、自動車事業では、メキシコでのマツダとの完成車製造事業が本格稼働するほか、自動車製造部品事業の拡張などに取り組み、収益基盤を拡大していきます。

また、「将来の収益の柱の育成」における取り組みでは、「非在来型エネルギー分野」で、昨年、米国有数のエネルギー研究機関であるGas Technology Institute社と包括的な業務提携を行いました。同社が長年蓄積してきたシェール関連技術などのノウハウと、日系企業の技術を結びつけることで、日系企業のシェール関連産業への進出を支援しながら、当社の業界ネットワークと蓄積された知見を活用し、多面的なビジネス機会を追求していきます。既に日系企業からの引き合いが出てきており、新たなビジネスの展開ができると期待しています。

「アジアのリテール分野」では、拡大する新興国の中間所得層の旺盛な消費需要を取り込むため、国内で成功した事業の海外展開などに取り組んでいきます。例えばインドネシアでは、1994年より自動車・二輪車向け金融事業に取り組んでおり、他社にはない膨大な顧客データを有しています。近年、ビッグデータの時代を迎え、顧客データはリテールビジネスを展開する上で非常に貴重な経営資源となります。金融事業のさらなる拡大とともに、この顧客データを基にリテール事業の幅広い展開を検討していきます。

昨年からの課題である「既存投資案件のバリューアップ」についても、スピード感をもって取り組みます。マダガスカルにおけるニッケル鉱山「アンバトビー・プロジェクト」が2014年1月に商業生産を開始しました。足元の操業率は60〜70%(ニッケル生産量ベース)まで進捗していますが、2014年度は2015年3月の完工達成に向けて全力で取り組んでいきます。

05 株主還元について

中長期的な利益成長による1株当たりの配当額増加を目指す。

株主の皆様に対しては、「企業価値の向上」と「配当の充実」を両立させることで利益還元を行う考えです。

当社グループはグローバルに多くの投資機会に恵まれています。「目指す姿」の実現に向け、BBBO2014で掲げる新規投融資を着実に進めることなどにより、中長期的な利益成長を実現し、1株当たりの配当額の増加を目指していきます。

配当については、BBBO2014の計画に基づき、経済環境や投資計画等を勘案し、連結配当性向を25%としています。2014年度の年間配当金については、連結純利益が予定通り2,500億円となった場合、1株当たり50円となる予定です。

06 企業の社会的責任(CSR)について

住友商事グループにとってCSRとは、経営理念を実践することにほかならない。

住友400年の事業精神を表す言葉の一つに、「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」(住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、社会を利するほどの事業でなければならないという意味)があります。この精神はCSRそのものであり、「常に変化を先取りして新たな価値を創造し、広く社会に貢献する」、「健全な事業活動を通じて豊かさと夢を実現する」という当社グループの経営理念に受け継がれています。つまり、当社グループにとってCSRとは、経営理念を実践することにほかならず、それは事業活動を通じて社会的課題に向き合い、企業の立場から何をすべきか、どうすればできるかを考え、事業戦略として立案し、実行するものと捉えています。

世界中の国・地域、幅広い産業分野に関わっている当社グループは、事業活動において、ステークホルダーとの対話を通じて社会的課題の本質を把握し、課題から新たなニーズを見つけ、特有の強みと機能を結集して解決策を提供する力、すなわち、社会に役立つより大きな価値を創造する力を有しています。こうした当社グループならではの力を存分に発揮することにより、事業活動を行う国・地域の人々の生活水準向上、経済・産業・社会の発展に貢献して収益を拡大し、信頼関係を礎としてさらなる事業活動につなげる、というサイクルを回していきたいと考えています。

なお、当社グループは、2009年3月に国連グローバル・コンパクトに署名し、人権、労働基準、環境、腐敗防止に関わる10原則の支持を表明しています。社員一人一人が、経営理念と価値観を共有するこれら10原則を尊重し、高い志と高潔な倫理観を持って仕事に取り組むことが、「さすが住友商事グループ」と社会に認められることにつながると考えています。

07 住友商事グループの成長を支える人材の育成

「人材」は最大の経営資源。成長を支える「人材」の育成が重要。

総合商社にとって「人材」は最大の経営資源であり、当社グループが成長を続けていくには、それを支える「人材」の育成が欠かせません。

今後は、アジア・アフリカといった新興国でのビジネスの機会が増えて行くと予想されています。こういった地域でビジネスを展開していくには、人種・性別・年齢・国籍を越えて、現地の人々の視点に立ったコミュニケーションにより、国・地域に応じたニーズを引き出し、新たなビジネスモデルを創出していく人材が必要だと考えています。

同時に「住友の事業精神」を理解し、事業を通じてその地域の社会の発展や生活向上に貢献するという強い思いを持って仕事に取り組むことのできる「人材」が重要であり、こういった「人材」の育成に注力していきます。

08 50年、100年続く会社となるために

「住友の事業精神」を持つことが大きな強み。これを継承、堅持し、実践することが、安定的・継続的な成長につながる。

取締役社長 中村 邦晴

50年、100年と安定的・継続的に成長していくために、どのような経営をすべきかに思いを馳せていくと、「住友の事業精神」に行きつきます。

住友グループは400年間続く企業集団です。その間「住友の事業精神」を継承、堅持し、実践してきたことが、広く社会から必要とされる存在で有り続けることを支えてきたと考えています。

その「住友の事業精神」を持つことは当社グループの大きな強みです。

社員一人ひとりが、「住友の事業精神」、「当社グループの経営理念」を実践し、「情熱」と「貪欲さ」と「粘り強さ」をもって仕事に取り組むことが「目指す姿」の実現、そして安定的・継続的な成長へとつながると考えています。

そのためには、まず足元のBBBO2014での取り組みが非常に大事だと考えています。

BBBO2014の最終年度となる2014年度は、よりスピード感を持って「収益力の徹底強化」を進め、「目指す姿」実現のための土台となる「強固な収益基盤」の構築に全社一丸となって取り組んでいきます。

住友商事グループの取り組みに、今後もどうぞご期待ください。