特集:収益力の徹底強化

自動車事業のさらなる拡大・深化 ~「収益の柱」をさらに太く~
  住友商事グループでは、中期経営計画「Be the Best, Be the One 2014」を通じて収益力の徹底強化に取り組んでいます。ここでは当社グループの大きな「収益の柱」の一つである自動車事業における、さらなる成長に向けた取り組みをご紹介します。

01 拡大が見込まれる世界の自動車産業

成長を続ける世界の自動車市場

自動車世界販売台数の推移

世界の自動車市場は今後も拡大が見込まれています。

アジアを中心とした新興国において、人口増加や所得増加に伴い需要が大幅に増加することに加え、先進国においても買替えを中心に需要は安定して推移すると見られます。

自動車販売台数は2013年の約8,500万台から、2030年には新興国の需要増が牽引して約1億4,000万台にまで増加し、全世界の自動車販売の70%を新興国市場が占めると見込まれており、自動車市場の中心は先進国から新興国へのシフトが進んでいます。

自動車産業の適地生産化

新興国における自動車販売は、モータリゼーションが本格化する中、低価格を基本としながらも充実した機能を備えた車が中心となることから、自動車メーカー各社には需要増加への対応のみならず、収益の確保のために一層の低コスト・高効率の生産が求められています。

特に日系自動車メーカーは国内生産比率が高く、為替に左右されやすい体質の改善が必要であり、販売する地域に近く、生産コストの低い地域での適地生産化を進めてきました。

アジア向けの拠点としては部品メーカーなどの集積が進むタイ、欧米向けの拠点としては多くの国とFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)を締結し、輸出に対するメリットが大きいメキシコといった国々への展開が進んでいます。

地域別自動車生産台数(2013年)

02 住友商事の自動車事業 –成長の軌跡–

ビジネスモデルの進化

自動車ビジネスモデルの変遷と「3つの柱」

住友商事の自動車事業は、1950年代に開始したミャンマー向けバス輸出事業に始まり、現在に至るまで約60年間、事業を継続してきました。原点となるトレードビジネスに取り組む中で、国内外のマーケット情報や自動車メーカーのニーズを読み取り、事業環境の変化に対応しながら、裾野の広い自動車産業において川上(製造事業)から川下(リース・ファイナンス事業)にかけて幅広い分野で事業を展開しています。

川上分野では、日系自動車メーカーの海外生産へのシフトが本格化した1980年代以降、欧米系自動車メーカー向けも含めた自動車製造用設備・機材や自動車部品のトレードビジネスを行う中で、製造工程周辺の関連ビジネスにも携わる機会が増えてきたことから、自動車の“ものづくり”そのものをバックアップすべく、製造事業に進出してきました。現在では、部品製造から完成車製造まで色々な地域で数多くの事業に取り組んでおり、幅広く製造事業を手掛けていることが当社の特徴です。

川中分野では、海外市場の開拓を目指す日系自動車メーカーの海外進出をサポートすべく、1970年代に米国において自動車メーカーと合弁で販売会社を設立し、現地でのディストリビューター事業に進出してきました。トレードビジネスを含めた販売流通事業は、現在でも自動車事業の大きな収益の柱の一つとなっています。

川下分野では、よりユーザーに近い小売事業に取り組む中で、客先に対するサービスの一環として、自動車販売金融事業にも進出し、日系自動車メーカーが強みを持つタイやインドネシアといったアジアを中心に事業を展開してきました。1980年から取り組んでいる国内におけるオートリース事業とともに、現在、大きな収益の柱となっています。

03 「3つの柱」を拡大・深耕する

当社はこれまで事業環境の変化に対応し、幅広い自動車産業において、さまざまな機能を拡大してきました。今後は、3つの大きな柱である「製造事業」「販売流通事業」「リース・ファイナンス事業」それぞれにおいて、成長が見込まれる事業に集中的に経営資源を投入し、拡大・深耕を図っていきます。

BBBO2014における3つの柱の重点施策と足元の取り組み

1)製造事業分野

〜自動車需要の増加に応じて、海外における製造事業を強化。

製造拠点の海外展開に合わせて、製造事業における収益の柱の一つである、ブレーキディスク・ドラム専門メーカーの(株)キリウでは、アジアでの需要増加を捉えるべく、2012年のインドに続き、2013年にはタイで生産能力を増強しました。さらに、2014年には北米向けの旺盛な需要を受け、メキシコでの生産能力の増強を予定するなど、海外基盤の拡大に取り組んでいます。

メキシコでは、他にも、2014年にエンジン部品など大型アルミ製鋳造部品に強みを持つ広島アルミニウム工業(株)のメキシコ事業に参画し、同国における生産体制を強化しています。

また、完成車製造事業においても、マツダ(株)との合弁会社Mazda de Mexico Vehicle Operation(MMVO社)において、2014年1月に北米向けの量産を開始、本格稼働を始めました。今後、中南米・欧州向けに製品輸出を拡げるとともに、トヨタ自動車(株)向け小型車を含む取扱車種も拡充していきます。

MMVO社における完成車製造の過程では、キリウや広島アルミニウム工業のメキシコ拠点で製造する部品や、当社と(株)ヒロテックとの合弁会社であるHIROTEC MEXICO社の製造する自動車用外板・排気系部品、さらには当社のスチールサービスセンターであるSERVILAMINA SUMMIT MEXICANA社が取り扱う鋼材が使用されるなど、メキシコにおける自動車関連事業全体のシナジー効果を発揮しています。

2)販売流通事業分野

〜アフリカや中東周辺国などの成長市場を中心に事業を拡大。

リビアでの人材育成プログラムの様子
リビアでの人材育成プログラムの様子

新興国における自動車販売流通事業は、政情不安、為替変動などの経済環境が不安定であることから、オペレーションの難しい市場が多い中で、当社は、トルコ、ウクライナ、ナイジェリアといった国々で事業を行い、各国に応じたリスク管理を行うなどさまざまな経験を積んできました。これら新興国で長年培ってきた販売流通事業の知見、ノウハウやリスク管理能力を活かして、今後さらなる成長が見込まれる新興国での事業を拡大していきます。2013年には、イラクとミャンマーで自動車整備、修理などを行うサービスステーションを設立し、販売とともにサービス事業の充実に取り組んでいます。

また、当社はこれらの国々に対して、単にビジネスという観点からだけではなく、積極的に社会貢献していきたいと考えています。例えばリビアでは、2010年よりディストリビューター事業を開始し、事業を通じてリビアの若者を対象にした、整備工場での人材育成プログラムを行っています。人材育成の枠を超えて、将来の国づくりを担う若い人材を育成したいという思いを込め、リビアの国づくりに貢献していきます。

3)リース・ファイナンス事業分野

〜オートリース事業の海外展開及びファイナンス事業の多角化により収益基盤を拡大。

OTO/SOFの広告及びコールセンター
OTO/SOFの広告及びコールセンター

オートリース事業では住友三井オートサービス(株)が、保有管理台数約57万台を有する業界トップクラスの企業となっています。しかしながら、国内のオートリース市場は成熟期を迎えていることから、同社では海外への事業展開を進め、収益基盤の拡大を図っています。2003年にタイ、2013年にはオーストラリアに進出しており、グローバルなニーズにさらに応えるべく、今後もアジア大洋州など、成長が期待される有望な海外市場での事業展開を推進していきます。

ファイナンス事業の牽引役となっているのが、インドネシアにおいて自動車・二輪ファイナンス事業を展開するP.T. Oto Multiartha(OTO)とP.T. Summit Oto Finance(SOF)です。インドネシア全土に支店を持ち、幅広いネットワークや資金力を発揮することで契約台数を伸ばし、現在では当社の自動車事業の大きな収益の柱へと成長しています。当社はアジア通貨危機以前の1996年から事業に参画し、その後何度か経済危機に見舞われる中でも安定したサービスの提供を続けたことで、販売ディーラーとの強固な信頼関係を築き、これが大きな強みとなっています。今後は、成長著しいインドネシアの顧客ニーズに合わせたローンの提供やサービスの充実を図ることで、事業の拡大を目指していきます。

04 おわりに

自動車産業は、先進国の底堅い需要と新興国の新規需要の拡大により、今後もさらなる成長が見込まれます。

約60年間にわたるビジネスを通じて得てきた知見や信頼をもとに、2019年に「圧倒的な収益の柱」となるという「目指す姿」の実現に向けて、さらなる成長を図っていきます。