従業員から集めた絵本・児童書の寄贈プロジェクト
(中東・アフリカ住友商事グループ)
IRAQ & SOUTH AFRICA
中東・アフリカ住友商事グループは、
域内の団体への絵本・児童書の寄贈活動を通じて、
地域の子どもたちの教育支援に取り組んでいます。
絵本・児童書寄贈プロジェクトとは
従業員から集めた絵本・児童書を地域の子どもたちへ
中東・アフリカ住友商事グループの域内全体で進める100SEED活動。もともと進めていたトルコでのSDGsに関するオンライン教育活動の終了にともない、新たな活動を検討していました。そこで、大阪・生野区で進められていた外国ルーツの子どもたちに向けた多言語児童書の寄贈活動(※)を参考に、従業員の使わなくなった絵本・児童書を寄贈する社会貢献活動を企画しました。中東・アフリカ住友商事グループの従業員約330人に、2つのオフィスに設けられた回収ボックスへの寄贈を呼びかけたところ、1ヶ月間で520冊が集まりました。集めた本を地域の子どもたちに届けるために、中東地域では国際機関の「UN-HABITAT」、アフリカ地域ではNPO団体「SAPESI(サペシ)」に寄贈しました。
※ 多文化共生のまちづくり拠点立ち上げを支援し、目指す姿に寄り添う
イラク・モスル
破壊された街の復興の一助に
イラク第三の都市・モスルは、長年にわたるISILとの戦闘で破壊された街の復興が進められています。都市と居住に関する問題に取り組む国連機関のUN-HABITAT(国連人間居住計画)は、その復興支援として帰還民用の公共アパートの建設に取り組んでいます。中東・アフリカ住友商事グループもこの取り組みに賛同し、グループ内で集めた本と住友商事バグダッド事務所・エルビル事務所で集めた本、さらには現地企業のSardarグループとToyota Iraq(※)が集めた本の合計1000冊を超える絵本・児童書を寄贈しました。寄贈先は、日本政府支援により2022年に運用を開始したBab Sinjar Housing Complex内の図書室と、第二期として同じく日本政府の資金援助を受けて現在建設が進行中の「Japan Village」内に建設した図書館です。従業員から寄せられた絵本・児童書は、日本語、英語、アラビア語など言語は多様ですが、いずれもカラフルで、中には音が出たり絵が飛び出したりする仕掛け絵本もあり、言葉はわからなくても子どもたちは目を輝かせて楽しんでいました。
100SEEDの枠組み以外でも、現地の学校の図書室やがん病棟の小児図書室への絵本・児童書寄贈プロジェクトも並行して進められています。また、Toyota IraqがJapan Village内に多目的運動場及び太陽光発電を活用した街灯を建設・設置するなど、とかく「危険」というイメージが付きまとうイラクで、住友商事グループは、未来に目を向けた支援をさまざまな形で推進しています。
※ Sardarグループはイラク最大手の自動車関連企業。住友商事は、SardarグループとともにToyota Iraqという事業会社を立ち上げ、イラクにおけるトヨタ自動車・日野自動車の正規代理店事業を展開しています。
UN-HABITAT 寺岡さんから
イラクでは識字率が依然として低く、書店の数も限られています。まず生きるためのインフラや住宅の整備が最優先で、本の寄贈のようなソフト面に投資する余力がなかなかないのが現状です。
そうした中で、住友商事さんがその部分を補い、子どもたちに日本語、英語、アラビア語の絵本を届けてくださったことは、子どもたちの未来にも大きな影響を与えてくれる出来事となっていると思います。
美しい絵や写真、飛び出す絵本の仕掛けに触れた子どもたちの目が輝き、笑顔が広がる光景を目の当たりにしました。その“ワクワク”は、住友商事の皆さんが笑顔で自発的に活動される姿から自然に伝わっていったのだと思っています。
こうした民間企業との連携は世界でも非常に稀で、現地政府からも高く評価されています。この住友商事グループとの連携をベストプラクティスと位置付けており、今後も連携を広げていけることを期待しています。
UN-HABITAT(国連人間居住計画) イラク・クルディスタン地域事務所長 寺岡亮輔さん
ジャパン・ビレッジ・プロジェクトサイトの図書館にて同僚の皆さんと
南アフリカ
本に触れる機会を提供し、貧困の連鎖を止める
一方、アフリカ住友商事では、車両に本を積んで各地を巡る移動図書館プロジェクトを南アフリカ政府と共に推進するNPO団体「SAPESI(サペシ)」の活動に共感し、2009年から寄付を続けています。この移動図書館を通じて、本に触れる機会の少ない貧困地域の子どもたちに絵本に親しんでもらおうと、2025年10月に絵本・児童書の寄贈が実現しました。
SAPESIの担当者からは「絵本のニーズは常にあります。今回寄贈された230冊のうち大半が英語の本。南アフリカには12言語の公用語があり、小学3年生までは現地語で4年生から英語に切り替えられます。英語の習得は子どもたちにとって大きなハードルになっているため、絵本があることで楽しみながら英語を学ぶ機会を提供できます」と、感謝の声をいただいています。絵本の寄贈が、教育への支援となり、貧困の連鎖を止める活動へと繋がっていきます。
活動に関わった社員の声
従業員の気持ちを、行動に繋げる後押しを
絵本や児童書の寄贈そのものは困難を伴うものでありませんが、中東とアフリカ全体で本を回収し、社会情勢が不安定で教育インフラも整備されていないエリアにどう届けていくか、その仕組みづくりに苦労しました。
活動を通して特に印象に残っているのは、予想以上に多くの本が集まったこと。そして集まった本の目録作成や本の補修などを進める際に、社内ボランティアを募ったところ、現地雇用のドライバー含めた多くの社員が「自分たちも何か手伝いたい」と申し出てくれたことです。わいわいと賑やかに、寄贈用のステッカーを本に貼っていく姿に、従業員の気持ちを、実際の社会貢献活動に結びつけていく、この取り組みの意義を改めて実感しました。
今後も、絵本・児童書の寄贈プロジェクトのように、従業員にとって手触り感のある社会貢献活動を検討していきます。現地のニーズを踏まえ、一つの形式に縛られることなく、従業員の「貢献したい」という気持ちにサステナブルに応える活動のあり方を探っていきます。
イラク・エルビル駐在
城谷 浩司(住友商事 バグダッド事務所・エルビル事務所)
UAE・ドバイ駐在
橋本 夏、金澤 洋子、荒谷 公太(中東住友商事 業務企画)
南アフリカ・ヨハネスブルグ駐在
有田 俊貴(アフリカ住友商事 コーポレート部)
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