グローバル事例
ボーダーレスな合金鉄プロジェクトで産業と生活を支える
マレーシア
硬度・強度を高める役割を持ち、鋼の製造に不可欠な添加剤であるマンガン資源。住友商事は1960年代から極東向けにマンガン鉱石の輸入ビジネスを始めました。その後、南アフリカのマンガン鉱山への出資、マレーシアではマンガン鉱石を原料としたマンガン合金鉄の製造事業にも参画しており、その製品を全世界に販売しています。資源を安定的に供給することで、産業や人々の生活を支え、「地域社会・経済の発展」に取り組んでいます。
鉄鋼を強靭にする「鉄の素」マンガン
私たちの身の回りにある鉄には、希少金属の一種であるマンガンが添加されています。マンガンがしばしば「鉄の素」と呼ばれるのは、1トンの鉄鋼に対してわずか10キログラムのマンガンを加えるだけで、強度や耐摩耗性が格段に向上するからです。業界の一部では、豪華客船タイタニック号の船体が氷山に衝突してもろくも破損したのは、船体の鉄にマンガンが含まれていなかったためともいわれています。
世界における高品位マンガン鉱石の総埋蔵量の実に80パーセントを南アフリカ共和国一国で占めています。住友商事が、マンガン鉱石の採掘事業を行う最大手の一社であるアソマンとの取引を開始したのは1960年代のことでした。その後もアソマンとの関係は続き、アパルトヘイト撤廃後の97年には、南アフリカ国内で合金鉄を生産する事業投資会社を設立しています。
3社のパートナーシップによって新たな事業をスタート
台湾の製鉄会社であるチャイナスティールは、住友商事金属事業部門と長年のビジネスパートナーでした。資源のない台湾で製鉄事業を手掛けるチャイナスティールと、資源の生産者であるアソマン。この2つのプレーヤーを結びつけることによって、マンガン系合金鉄の生産事業を新たに取り進めようと開始したのは、2008年のことです。
3社合弁で合金鉄工場をマレーシアのサラワク州に設立することを決定したのは、マレーシアで当社の金属事業部門がアルミ製錬ビジネスを行っており、知見があったことに加え、新設された水力発電ダムから安価でクリーンな電力を長期に使えるめどが立ったからでした。13年、アソマンが54.36パーセント、当社が26.64パーセント、チャイナスティールが19パーセントという出資比率で、サクラ・フェロアロイズを設立。工場建設に着手しました。
「つなげて、新たな価値を生み出す」総合商社の力
アソマンが採掘したマンガン鉱石をマレーシアへ運び、サクラ・フェロアロイズの工場で精錬し、生産した合金鉄を世界に向けてアソマン、住友商事が販売し、一部チャイナスティールが消費する。このビジネスモデルにおいて住友商事が果たしているのが、ファシリテーターの役割です。
南アフリカ、台湾、マレーシアというこれまでつながりのなかった地域、プレーヤー、ビジネスをつなげ、新しい価値を生み出す。そこに、当社の力があります。「つなげる力」がなければ、はるか離れた場所で活動するアソマンとチャイナスティールが共にビジネスを行うこともなく、マレーシアでマンガン系合金鉄工場が建設されることもなかったでしょう。また、現地行政当局との交渉などに総合商社としてのノウハウを生かしたことも、ファシリテーターとしての役割の一面です。
金属原料を安定的に供給し続ける
サクラ・フェロアロイズの1号炉は2016年4月に、2号炉は同年9月にそれぞれ完工し、順調な立上げを経て2017年3月に両炉共にフル生産を達成しました。
現在も年間25万トンのフル生産を継続しております。また、安全面、環境面への改善投資は継続しており、安全で環境に配慮した操業を今後も維持していきます。
アジア地域の経済発展が順調に続いていくに従って、合金鉄の需要も高まっていきます。今後もバリューチェーンの最上流に当たる資源の確保から、精錬から販売までをワンストップで展開するこのビジネスによって、金属原料を安定的に供給し、産業の発展と人々の生活を力強く支えていきます。
2023年05月掲載
キーワード
- アジア・大洋州
- 鉱物資源
- 資源グループ