グローバル事例

激動の自動車業界で、
匠の技術による最高の品質を提供し続ける

グローバル

2社の思いが一致して実現したM&A

1,500度に達する高温で溶かした鉄を砂で作った鋳型に流し込み、冷やし固めて、さらに機械加工で高精度な製品に仕上げていく。住友商事がキリウと共に、自動車部品の鋳造・加工事業に本格的に関わるようになったのは、2004年のことでした。

住友商事は同年7月、栃木県足利市のキリウをグループに迎えました。同社は1906年に創業し、織物準備機械の製造を経て、60年代から自動車部品の製造事業を行ってきた老舗メーカーです。製造の特定プロセスに特化する自動車部品メーカーが多い中、キリウは製品の開発・設計、鋳造、加工に加え、機械加工設備まで自社内製で対応する数少ないメーカーです。加えて「一気生産」(※1)というキリウ独自の生産モデルによって、高品質で高精度なブレーキディスク・ブレーキドラムを中心とする部品を高効率で製造し、数多くの自動車メーカーに提供しています。現在、全世界で自動車10台に1台の割合で、キリウ製の部品が使用されています。

トレードビジネスに加え、事業投資という新たなビジネスモデルへのチャレンジを始めていた住友商事と、海外展開によってビジネスの拡張を目指していたキリウ。2004年に行われたM&Aは、その2社の思いが一致したことにより実現しました。以来14年間、100パーセント株主として、住友商事はキリウの事業を支え続けています。

鋳型に鉄を流し込んでいる様子(自動注湯)

※1 一気生産:金型・設備の内製を含め、開発・設計から生産、出荷まで、工程内の無駄を徹底排除した効率的な一貫生産システム

経験とノウハウをもとにした提案力

キリウの最大の強みは、自動車メーカーに対する、業界屈指の独自の設計・開発力を生かした提案力です。各国で電気自動車(EV)の開発が進み、エンジンとガソリンによって駆動する従来型の自動車のシェアは徐々に下がっていくと見られています。しかし、「走る」「曲がる」「止まる」の3つが自動車の機能の柱であることに変わりはありません。

中でも「止まる」機能を担い、人々の安全を確保するブレーキは、今後も自動車の欠かせないパーツであり続けます。激動のさなかにある自動車業界で安全なモビリティ社会を実現するためにも、自動車メーカーがブレーキに求める品質水準は非常に高いものです。

キリウは最先端のシミュレーション技術、3Dモデリング、CFD(数値流体力学)手法などの実験技術を活用し、独自に設計・開発した高度な鋳造・加工技術により、その高い品質要求水準を長年にわたりクリアし続けてきました。特に、ブレーキを掛ける際に発生する音や車体の揺れを抑える他社にはない技術を武器に、高品質な部品を長年にわたって製造し続けてきました。

その経験と技術力をもとに、自動車メーカーに対して開発力を生かした的確な提案を行うことで顧客信頼を勝ち取り、キリウは競合他社を凌駕(りょうが)してきました。変わり続ける自動車製造業界に対し、キリウは常に高度な提案力とハイレベルな技術品質で応え続けます。

冷えて固まった鉄製品を機械で削り、加工することで製品となる
自動車を「止める」という重要な役割を担うブレーキディスク。キリウ製品の6割を占めている
業界屈指の実験・解析技術で高品質な製品を提供し続ける

文化や言語の壁を越え、最高品質の製品で市場ニーズに対応

いかに高い技術力をもっていても、海外で力を発揮するには、ノウハウの標準化や海外人材育成が必須となります。2004年当初、キリウの拠点は国内3カ所、海外3カ所でしたが、その後、国内4カ所、海外9カ所に広げ、売上を14年間でほぼ倍に伸長させました。

グローバル展開にあたっては、文化や言語の壁を越えて「キリウ品質」を保ち続けることが最大の課題でした。また、各進出国で異なる政治経済事情、法制度、慣習、需要動向対応など、課題が満載でした。キリウの高い技術力・製造ノウハウに、海外ビジネスの知見が豊富な住友商事の総合力を掛け合わせることにより、多種多様な人材が存分に能力を発揮できる環境を整え、キリウは海外展開を順調に推進させてきました。

さらに、顧客の多様化も進めており、日系自動車メーカーに加え、外資系自動車メーカーとの取引拡大も住友商事と共に進めています。近年では、住友商事が45パーセント株式を保有する同業の中国の富士和機械との連携も進みつつあります。

キリウグループ最初の海外拠点であるキリウインドネシア
キリウグループ最大の生産拠点であるキリウメヒカーナ

本社工場の鋳造設備を刷新し、環境負荷低減へ

2020年3月、本社工場の鋳造設備を刷新することを決断しました。設備故障に伴う部品供給リスクを最小化するだけでなく、材料計量や運搬工程などの自動化による生産性向上、コスト競争力強化も目指します。さらに、コークスを燃やして鉄を熔解する溶鉱炉を電炉に変更することで、CO2排出量を従来比30パーセント減(当社グループの年間CO2排出量の約0.6パーセントに相当する約10,000トンの削減)を実現し、気候変動や大気汚染といった社会課題の解決に貢献していきます。

将来的な電気自動車市場の拡大が予想されるなか、バッテリーの搭載により車両が重くなる電気自動車は、ガソリン車よりも厳しい燃費要求に晒されます。高まる軽量化ニーズにもしっかりと応える製品を開発・供給することで、地球にやさしいクルマ社会の実現にも貢献したいと考えています。

また今回の最新鋭化では、騒音や粉じんといった現場の作業環境を向上。重筋作業や重大事故の発生率を減らすなど、働くヒトにも優しい職場環境の創出を目指します。

ものづくりを進化させ、住友商事グループの未来を創造する

総合商社である住友商事にとって、製造事業会社をグループ内に有していることは、とても大きな意味を持ちます。ものづくりのフロントラインで得られた知見や技術力を他の分野に応用していくことができるからです。

住友商事グループでは、全社をあげてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り組んでいます。IoT、データ管理、AIなどのデジタル技術を活用し、キリウの製造現場のさらなる効率化を図ると同時に、キリウでのDXの経験をもとに次代を担う新たな事業を創出することが狙いです。キリウのものづくりの進化が、他の製造現場のDX推進において一つの武器となることは間違いありません。

住友商事はキリウとともに、「いつでも、どこでも、だれにでも」高品質な製品を供給し続け、安全で快適な自動車社会に貢献していきます。


関連情報

2019年03月掲載

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