2025年04月01日
住友商事株式会社

マダガスカルとモザンビークにて、マングローブ植林由来のカーボンクレジット事業に参入~アフリカ最大級となる計3,400万トンのブルーカーボンクレジット創出を目指す~

住友商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:上野 真吾、以下「住友商事」)は、アフリカ地域において2件のマングローブ植林由来のカーボンクレジット事業に参入しました。マダガスカルでは、カーボンクレジット事業を世界中で展開するシンガポールのValue Network Ventures(以下「VNV」)と現地で植林事業を行うBondyの合弁会社が開発するマングローブ植林への資金拠出を通じ、ブルーカーボンクレジットを調達します。モザンビークでは、カーボンクレジットの開発・投資・販売を行うフランスのRemovallと合弁会社Summit Removallを設立し、ブルーカーボンクレジット事業に投資します。2案件ともに、マングローブの成長に応じてカーボンクレジットを21年以上の長期で創出し、欧州、米州および日本を含むアジア企業に向けて販売します。将来的には、アフリカで最大級となる計3,400万トン(注1)のカーボンクレジット創出を目指し、脱炭素化に向けた世界的な需要に応えていきます。

マングローブ植林の様子(マダガスカル案件)
マングローブ植林とコミュニティの様子(モザンビーク案件)

世界におけるカーボンクレジット市場

カーボンクレジットは、温室効果ガスの削減・吸収量を売買できるようにする仕組みです。2024年には、世界で年間2.9億トンものカーボンクレジットが創出され、アフリカではそのうち20パーセントにあたる5,900万トンが創出されました。アフリカでは、2030年には年間24億トン(注2)のカーボンクレジットが創出される見込みがあり、市場拡大が期待されています。

事業概要

住友商事は、経済成長が期待され、マングローブ林を保有するアフリカ地域でマングローブ植林由来のカーボンクレジット創出事業に参入し、事業拡大を進めます。

マダガスカル案件
住友商事とVNVは2023年10月にグローバルでのカーボンクレジット事業の共同検討に関する覚書を締結しており、今回の案件は本覚書に基づくVNVとの連携事業の一つとして実施されます。本案件はVNVとBondyの合弁会社を通じてマダガスカルでマングローブ植林を行うものです。Bondyは、植林やエコシステムの回復、現地地域住民との協業において中心的な役割を果たします。住友商事は、VNVおよびBondyと協力して、地域に根ざすと同時に、国際基準を満たす活動を行っていきます。住友商事は、本マングローブ植林への資金拠出を通じて、ブルーカーボンクレジットを調達します。第一段階として21年間にわたって累計約80万トンのカーボンクレジットを創出するもので、住友商事が日系企業を中心とした需要家への販売を担います。
パートナー Value Network Ventures、Bondy
クレジット期間 21年間(2024年~2044年)
実施地域 マダガスカル(北東部)
カーボンクレジット総量 約80万トン
モザンビーク案件
住友商事とRemovallは、カーボンクレジット事業への投資を目的とした合弁会社を設立し、モザンビーク案件に投資します。本案件では、第一段階として、現地地域住民の理解と協力を得ながら40年間にわたり累計約250万トンのブルーカーボンクレジットを創出します。住友商事とRemovallは、創出したカーボンクレジットの一部を共同で各地域の需要家向けに販売します。
パートナー Removall
クレジット期間 40年間(2024年~2064年)
実施地域 モザンビーク(ザンベジア州)
カーボンクレジット総量 約250万トン

将来的には、マダガスカル案件とモザンビーク案件の植林面積をそれぞれ4万ヘクタールまで拡張させ、アフリカ最大規模となる計3,400万トン(マダガスカル案件: 1,400万トン、モザンビーク案件: 2,000万トン)のカーボンクレジット創出を目指す計画です。

マングローブ植林由来のカーボンクレジット創出事業が果たす役割

マングローブは熱帯林などほかの森林よりもCO2を多く吸収することができ気候変動緩和に貢献します。また生物多様性保全の観点からも、住民をはじめとした地域社会にとって重要です。しかし、主要カーボンクレジット制度(注3)に登録されているプロジェクト約5,400件のうち、生物多様性保全などのコベネフィット(共通便益)価値(注4)も有するマングローブ由来の炭素除去プロジェクトはわずか十数件に留まります。住友商事がアフリカで取り組む初めてのカーボンクレジット事業となる本2案件はともにコベネフィット価値を有します。住友商事は、脱炭素化に向けた市場成長を促進するとともに、マングローブの育成管理などを行う地域住民の就業機会拡大・生計向上への寄与、また樹木による多様な生き物の生息場提供・水質浄化などのネイチャーポジティブへ貢献していきます。

住友商事のカーボンクレジット分野での取り組み

住友商事は、国内では岩手県洋野町での海洋生態系を活用したCO2の吸収・固定事業や、三井住友ファイナンス&リースとともにJ-クレジット(注5)を活用した排出権付リースサービスなどに取り組んでいます。東京証券取引所が実施する「マーケットメイカー制度」では、市場形成に貢献したベスト・マーケットメイカーとして2024年より2年連続で表彰されています。海外では、インドネシアでマングローブ植林プロジェクトを進めており、マダガスカル、モザンビーク案件と合わせて将来的に計4,000万トンのカーボンクレジット創出を目指しています。これは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の家庭(約1500万世帯)が1年間に排出する温室効果ガスの総量(注5)に相当します。住友商事は、国内外で培った経験を生かし、今後さらにグローバルで事業の拡大を目指していきます。

(注1)二酸化炭素(CO2)換算トン。カーボンクレジットはCO2を1トン削減・除去するごとに1クレジットが発行される。
(注2)Africa Carbon Market Initiative Roadmap 2022 Novの公表データより
seforall.org/system/files/2022-11/acmi_roadmap_report_2022.pdf(PDF/21000KB)
(注3)Verified Carbon Standard、Gold Standard、American Carbon Registry、Climate Action Reserve、Architecture for REDD+ Transactions、Plan Vivo、Global Carbon Council、Eco Registry、Puro Earthなどのカーボンクレジット制度
(注4)一つの政策、戦略、または行動計画の成果から生まれる、複数の分野における複数のベネフィットのこと
(注5)国が運用する「J-クレジット制度」により認証した、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量、適切な森林管理によるCO2などの吸収量をクレジットにしたもの
(注6)以下の公表データより
部門別CO2排出量の現況推計|環境省 地方公共団体実行計画策定・実施支援サイト

VNV

会社名 : Value Network Ventures
所在地 : シンガポール
設立年 : 2010年
事業内容 : 南アジアおよび東アフリカなどにおける気候変動対策活動を先導し、コミュニティ主導の取り組みを開発する。自然を活用した気候変動緩和策・適応策のうち特に土地利用や森林事業を進めており、これまでに700万以上の農村世帯で、300万ヘクタール以上の土地を活用。グローバルサウスにおける、コミュニティの所有権や尊厳の回復、生活水準の向上、対応するコミュニティのレジリエンスの向上に貢献。

Removall

会社名 : Removall
所在地 : フランス
設立年 : 2021年
事業内容 : カーボン事業開発会社。企業や組織の気候目標達成に向け、カーボン事業の資金提供や投資を支援する。フランスに本社を置き、ブラジル(リオ)とケニア(ナイロビ)にオフィスを構える。自然生態系の保護と再生のための事業開発や資金提供を行い、地球規模で二酸化炭素吸収源を増やし、気候変動対策を推進する。人々と生態系にポジティブな影響を与える事業に資金提供している。

関連トピックス:
CO2の新たな吸収源、ブルーエコノミー事業の推進
CO2排出量をJ-クレジットで相殺する「排出権付リース」のサービス開始
東京証券取引所が実施した「マーケットメイカー制度」にてベスト・マーケットメイカーとして表彰
インドネシアにおけるマングローブ植林由来のカーボンクレジット調達契約およびグローバルでのカーボンクレジット事業の共同検討に関する覚書を締結


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