グローバル事例
「かかりつけ薬局」トモズが
自動調剤の先に見据えるものとは
広報パーソン探訪記
2019年04月掲載
報道チーム糠谷 治香
2018年入社。生活・不動産部門と欧州の報道案件、メディアからのアンケートを担当。高校まではピアノやお茶などお稽古に明け暮れ、大学では2 年間ドイツ留学を経験した。社会人生活も1年が経ち、明らかな運動不足により変貌を遂げた身体と向き合うことを決意。一念発起し、3歳から習っていたクラシックバレエを再開した。目まぐるしく変わる周りの環境についていくべく、三半規管を鍛えることが当面の目標。
住友商事は、2019年2月1日から調剤併設型ドラックストア「トモズ」の松戸新田店にて、調剤オペレーション自動化の実証実験を開始した。この実験では、7種類計9台の機械の導入により、薬剤師が行う医薬品の秤量、混合、分割、収集といった業務の約9割で自動化・半自動化を試みる。薬局への大規模な複数機械の導入は国内初であり、薬剤師の業務効率化によって、患者との対面業務(服薬指導など)の一層の充実や、待ち時間短縮といったサービスの質の向上を狙う。今回、実証実験を行っているトモズ松戸新田店で、メディア向け見学会を実施した。
機械導入により薬剤師の業務効率化を図る
調剤室での従来のオペレーションはこうだ。薬剤師が処方箋を受け取ると、数百種類の薬が並ぶ調剤棚から薬を探し出す。錠剤であれば、箱からシートを取り出し、適量に切った上で一束にまとめる。粉末やシロップであれば、専用のビーカーで量り、混ぜ合わせる。軟こうであれば、ヘラで適量をすくい取り、力を入れて15分程度混ぜ合わせる。
それが機械導入でどう自動化されるのか。特に注目した機械を紹介する。
自動化の一例として、粉末の調合機械がある。トモズ松戸新田店では、併設している医院の処方箋に記載されているバーコードを読み込むと、瞬時にモニターに処方が表示され、調剤が開始される。下写真のオレンジ色のボックスには各々1種類の粉末が収められ、6種類まで調合可能だ。必要量を自動で量り取り、他の粉末と混ぜ、1回ずつの服用量に分けた状態に仕上がる。
人的ミスを起こさないよう、薬剤師の精神的な負担も大きかったと言う。速さと正確さを持つ機械に向いている作業だと感じた。
次に紹介するのは、朝・昼・晩など服薬のタイミング毎に服用する複数の錠剤をパックする一包化の機械と、処方箋通りに一包化されたかをチェックする機械だ。トモズでは、提供頻度の高い約136種類の錠剤・カプセルを常備しており、高齢者や認知症患者などの飲み忘れ、服用漏れを防ぐために欠かせないサービスである。「多いときには2カ月分(180包)を一包化することもあり、1種類ずつプチプチと出すと指を切ることもある。細かい作業部分を機械が行ってくれるのは大変助かる」と現場の薬剤師マネージャー、福井陽子さんは歓迎する。
最後に、半自動化の例として自動払い出し棚を紹介する。これは、処方箋のバーコードを読み込みモニターを操作すると、処方する薬の引き出しが棚から自動で飛び出すため、薬を探し出すひと手間が省けるものだ。この棚には、提供頻度の低い薬剤や季節要因の薬剤、目薬や軟膏等が配置されており、収集した薬剤を必要な分量に分ける手作業は必要だが、煩雑な棚から薬剤を探す時間が短縮され効率がアップする。
筆者も薬剤収集のデモンストレーションを体験したが、初めてでも迷うことなく、スピード感を持って作業ができた。作業の効率化により、薬剤師が患者への服薬指導にもより注力できるというのもうなずける。
「かかりつけ薬局」の先駆けとして、より医療の一端を担う存在へ~
今から25年前「かかりつけ薬局」の企業理念を掲げ誕生したトモズ。かつては赤い看板で内装も花柄にしていたが、性別や年齢に関係なくそれまで以上に幅広い層が来店しやすいよう、青い看板のトモズへとイメージチェンジを果たした。対象層を拡大し、より医療の一端を担う存在に、との強い思いの下、首都圏を中心に172店舗(2019年2月末)を展開している。
本実証実験を行っているトモズ松戸新田店(千葉県松戸市)は、調剤室が比較的広く、通常店であれば月ごとの処方箋は2,000枚でも多い中で、約5,500枚を扱う店舗だ。インフルエンザや花粉症など季節要因の症状による処方箋の増減を平準化するため、約1年半の実験期間設け、有効性に応じて導入店を増やす見込みだ。
「薬剤師の職能を最大限に発揮出来る環境の実現を目指し、かかりつけ薬局としての機能強化につなげたい。また、薬剤師と患者さまの両方にメリットがあるような新しい仕組みを作り上げたい」とヘルスケア事業部の小室伊都子は語る。トモズに出向し店舗研修で店長を経験後、現場経験を生かして新しい取り組みに挑戦する姿に、熱い思いを感じた。
時代の変化に潜む大きな可能性を探り続ける
「団塊の世代」(※1)が75歳以上の後期高齢者となる2025年には、国民医療費は、17年度の42.2兆円から61兆円に拡大すると予測されている。社会保障の持続性を確保するため、政府が推進しているのが「地域包括ケアシステム」だ。重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を目指すものだ。全国どこにでもあり、薬剤師という医療の専門家が常駐する「かかりつけ薬局」は、地域包括ケアシステムの要となり得る。
当社から出向しているトモズ取締役の山口義之は「総合商社だからこそ提供できるさまざまな機能を発揮しながら、ヘルスケア・在宅・医療関連ビジネスの拡大を通して地域と産業の発展への貢献を目指していく」と意気込む。創業当初から時代を先駆けるトモズの勢いは、本実験終了予定の2020年夏、さらに加速していくだろう。
※1 団魂の世代:第一次ベビーブームと呼ばれる1947年から1949年に生まれた世代のこと
(おまけ①)若き商社パーソン
小室と共にトモズを担当するヘルスケア事業部の十場和幹は、入社2年目の時、スーパーマーケット「サミットストア」で4か月間店舗研修を経験した。スーツを脱いでサミットのユニフォームを身にまとい、商品の陳列やレジ打ち、お弁当の調理・加工など毎日ひたむきに励んだと言う。十場は当時を振り返り「現場を見て、人と触れ合い、実状と課題を把握することで、さまざまな角度の視点を持つことの大切さを学んだ。それはトモズを担当する上でも生きている」と語った。現場の大切さを知る彼らだからこそ、ヘルスケア業界の課題に対して真剣に向き合い、日本の医療の未来を切り開くべく奮闘する姿はまさに商社パーソンだと感じた。
本件は、筆者にとって初めて担当した報道案件であり、メディア向け見学会を通してビジネスの意義や担当者の思い・情熱に触れることができた。ビジネス・人を知り深く理解すると、会社がより好きになり、もっといろんな人に知ってほしい、伝えたいと思う、それを担うのが広報の役割の一つだと思うとワクワクしてきた。今後も初心を忘れずに広報業務にまい進したい。
(おまけ②)広報パーソングルメ探訪記
メディア向け見学会を開催した日、トモズ松戸新田店に隣接するサミットストア松戸新田店のイートインコーナー「サミCafe」で昼食をとった。
数あるお総菜の中から筆者が選んだのは「タルタル&トマトのあいがけチキン南蛮カレー」(2/13-17の「九州うまかもん市」の期間限定商品のため現在は品揃えがありません)。
具だくさんで、酸味のあるタルタルソースがカレーのルーとよく合う。チキン南蛮はサクッと揚げられており、味へのこだわりも感じられた。それもそのはず、サミットの総菜は「お弁当・お惣菜大賞2019」において、「寿司部門」、「サラダ部門」の2部門で最優秀賞を受賞するほどの実力だ。種類が豊富で美味しいサミットのお弁当を、ぜひお試しいただきたい。
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