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2026.7.7
Business
鉄道の足元から、北米の貨物輸送を支える。住商の鉄道機材ビジネス
住友商事(以下、住商)において約80年もの歴史を持つ鉄道事業。特に北米地域(アメリカ・カナダ・メキシコ)では、部品・資機材の輸出に始まり、現地での製造・販売へと発展してきました。2026年からはグループ会社の住友商事グローバルメタルズ(以下SCGM)に事業を移管し、体制を強化。今や北米のインフラを支える事業に成長しました。近年、鉄道は脱炭素社会に貢献する輸送手段として再び注目を集めています。今回は、同事業を長年支える高野と、黒川の二人に話を聞きました。
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住友商事グローバルメタルズ 輸送機材事業部
事業企画チーム チームリーダー高野恭平
2007年入社。鉄道車両品の輸出業務に携わった後、2度にわたり米国Standard Steelに出向。シカゴの米州住友商事に勤務後、21年よりSCGM兼務出向の上、鉄道車両品、軌道資機材の米国事業会社の主管業務、新規事業投資や事業開発を担当。
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住友商事グローバルメタルズ 輸送機材事業部
事業企画チーム ※取材当時黒川友紀子
2009年入社。7年間、自動車用鋼板の輸出業務に携わり、15年からシカゴの米州住友商事に勤務。16年より現在の部署に配属され、米国事業会社の主管業務、新規事業開発を担当。
圧倒的スケール感。北米の貨物鉄道輸送
北米の鉄道事業は、日本と比べてどのような違いがあるのでしょうか?
高野 日本で鉄道事業というと、旅客ビジネスをイメージする人が多いと思います。しかしアメリカの鉄道事業は貨物がメイン。国土が広いので、州をまたぐような移動は飛行機を利用することが多いためです。日本の貨物輸送における鉄道の割合が0.9%なのに対し、アメリカでは28%を鉄道が占めています。貨物路線はカナダ、メキシコともつながっており、北米全体で6社の貨物鉄道会社が存在します。
黒川 初めてアメリカで貨物列車を見た時は、スケールの大きさに圧倒されましたね。人が住まない砂漠や荒野に敷かれたレールを、100両近く連なった貨物列車が、どこまでも途切れることなく走っているんです。また、船が運んできたコンテナを港で列車に載せ、そのまま運ぶケースも多くあります。日本人がイメージする鉄道の概念をはるかに超えていますね。
高野 運ぶものも、石油や石炭、木材、穀物や自動車などさまざまですが、一両に100トンもの貨物を乗せて大量に運ぶので、レールへの負荷も大きくかかります。そのため鉄道の資機材にも、高い耐久性や耐摩耗性が求められます。石油を運ぶことも多いので、万が一列車が脱線すれば、街一つ焼失するほどの大火災となってしまう可能性もあるでしょう。そんな大事故を起こさないために、高品質で安全な製品が求められます。また、現場では労働者の高齢化が進んでおり、線路保守の効率化も大きな課題となっています。
住商が積み重ねてきた、北米での確かな「信頼」
住商が北米でどういった鉄道事業を行ってきたか、教えてください。
高野 住商では1940年代から、国内メーカーが製造した列車の車輪・車軸の輸出を通じて、海外鉄道市場への展開を始めました。その後、レールやレールを締結するためのタイプレート(※)などの輸出を始め、1989年にはアメリカでArkansas Steel Associates(ASA)を設立し、現地でのタイプレート製造に着手しました。さらに2011年には、アメリカで200年の歴史をもつ車輪・車軸メーカー・Standard Steel社を住友金属工業(当時)と共同買収し、現地製造を始めました。
※レールと枕木の間に敷設される鉄製の板で、レールにかかる荷重を分散させて枕木への摩耗を防ぐ役割を果たす
黒川 アメリカは先進国で唯一、人口が増加しており、鉄道貨物輸送量は年率2〜3%での成長が予測されています。そこで住商は、2019年にStandard Steel社への追加出資を行い、出資比率を35%に引き上げました。経営方針への関与度を高めることで、長期的な視点での成長投資や、製品の品質向上を進め、コロナ禍や世界的なサプライチェーン混乱の中でも資機材を安定供給することができました。現地のお客さまやパートナーとお話ししていると、北米の鉄道業界で長い歴史をもつ住商グループへの厚い信頼を感じます。
北米における住商グループの鉄道資機材ビジネスの強みはどこにありますか?
高野 私たちの主な競合はアメリカの国内メーカーです。鉄道は国の基幹インフラですから、鉄道会社も国内サプライヤーを重視する傾向があります。そんな熾烈な受注競争の中で住商グループが選ばれる理由は、扱っている製品の信頼性が何より大きいと思います。
また商社として、多様な製品を一人の担当者が窓口となって扱えること、環境変化に対して柔軟に、多様な解決策を提示できることも住商グループの強みです。車輪や車軸は、輸送需要や新車両の供給量によって需給バランスが大きく変動しますが、われわれは国内外のメーカーとのネットワークを駆使して、そのような変化に迅速に対応することができます。
黒川 お客さまにとことん寄り添い、お困りごとを必ず解決する。そんなやり切る力が、信頼につながっている面も大きいと思います。例えば、かつて北米の鉄道事業者にとっては、レールが折れた際、交換のために運航がストップするロスをいかに減らすかが大きな課題でした。それに対して、住商は耐荷重性や耐久性に優れ、摩耗しにくい日本の鉄鋼メーカーのレールを収めることで解決してきました。また、Standard Steel社を買収した際にも、住友金属の高度な技術を移転し、同社の品質と技術を強化したことで、事故や補修の頻度を大幅に減らし、鉄道会社の負担軽減にも貢献しています。
高野 レールとASAが「線路(軌道)」を支え、Standard Steelが「車両(車輪・車軸)」を支える。それぞれの得意領域で北米鉄道の安全性と持続可能性を支えているというのが、私たちの自負ですね。信頼というのは一朝一夕に築けるものではありませんが、こうした地道な現地化・品質向上の積み重ねが、住商グループが選ばれ続ける理由だと思っています。
グループ内での連携で、鉄道事業にさらなる価値を
最後に、お二人の今後の抱負を教えていただけますか。
黒川 2026年からSCGMへの事業移管を行い、専門性と機動力を一層高めていきたいと考えています。北米の鉄道事業は今後も成長を続けていくと見ており、住商グループがこれまで培ってきた顧客、取引先からの信頼と専門性を軸に、鉄道業界の成長に貢献して行きたいです。
高野 今後も鉄道事業者のペインポイントを解消するために、パートナー企業や住商の他グループとともに新しい事業を展開していきたいと思います。住商グループには鉄道や物流を扱っているセクションは他にもあり、車両や運用面など、私たちとは異なる視点で鉄道ビジネスを見ています。部署間を超えて、鉄道事業の付加価値をさらに高めていきたいですね。