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2025.4.7

Business

住友商事が「メディア・デジタル事業に強い」と言われるのはなぜ?ビジネスの歴史と変遷を解説

住友商事(以下、住商)における強みの一つであるメディア・デジタル事業。従来トレードビジネスが主流だった総合商社が、なぜメディア・デジタル事業に力を入れてきたのでしょうか? 住商がメディア・デジタル事業を始めたきっかけ、事業拡大の背景などを追いながら、その理由を探ります。また、未来を見据えてまさに今注力している事業もご紹介。住商のメディア・デジタル事業の過去・現在・未来を見ていきましょう。

住商のメディア・デジタルが強い理由は創業から続く「進取の精神」?

住商におけるデジタル事業の始まりは1969年、メディア事業は83年。当時日本ではデジタルやメディア領域の技術やノウハウがいずれも確立されておらず、その必要性が広く知られる前にスタートしているのが特徴です。ともに先進的な米国の状況を鑑みた上で、必ずや日本でも市場が開けるはずだと早くから確信。ほとんど知見がない中、手探りながらも粘り強く事業開発にまい進してきました。住商グループのビジネスの根底には、400年にわたって受け継がれてきた「住友の事業精神」があります。「進取の精神」を持って変化を先取りしていくというまさにその姿勢が、各時代のニーズを満たす事業を生み出したとも言えます。

事業会社設立や合併を経て、多様なニーズに対応し続けてきたデジタル事業の歴史

まだコンピューターが主に会計事務処理を担うツールだった1960年代後半、住商は社内の会計事務処理の機械化を進めていました。69年には、コンピューター産業の実態調査のために当時最先端の米国へ社員を派遣し、そこでの提言を受けて、コンピューターのプロが集う新会社の設立が急務と判断。その結果、同年に発足した「住商コンピューターサービス(SCS)」が住商におけるデジタル事業の礎となります。

その後、本社の電子電機部門が提供していたコンピューターの保守関連サービスを拡大する形で、75年に「住商エレクトロニクス(SSE)」が誕生。社名変更や合併などを経て、現在まで続く「SCSK」に。今ではビジネスに必要なITサービスをフルラインアップで提供する企業へと進化を遂げています。

その間、時代の流れや技術革新に合わせて、ネットワーク・セキュリティー、半導体設計といった派生事業を担う事業会社も次々と設立。また、米国や香港などでCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を立ち上げ、現地で得た情報や新しい技術を各事業会社で活用してきました。2018年にはグループ全体のDX推進を目的に「DXセンター」を発足。前後して、データマーケティングやAI・DX開発を担う事業会社も生まれ、幅広く・深くデジタル領域をカバーするグループ群が構築されています。

手探り状態から国内最大シェアのCATV会社をつくりあげたメディア事業の歴史

1983年に発足した「情報産業企画開発室」が、住商におけるメディア事業の原点です。当時は、パソコン通信や衛星放送、ケーブルテレビ(CATV)といったいわゆる「ニューメディア」ブーム。すでに米国では、CATV事業が大きな利益を上げ始めており、住商はこのビジネスモデルに着目し、84年にCATV事業へと参入しました。背景には、急速に進んだ円高の影響も。従来の外需型ビジネスに替わる、内需型ビジネスの開発が進められていきました。

まずは首都圏・近畿のCATV局への出資参画を通じて局運営の経験を重ねていき、その後エリアを全国各地に拡大。95年には日本初の本格的なCATV統括運営会社となるジュピターテレコム(J-COM)を設立しました。

96年には住商と米国ケーブルテレビ最大手のTCIと、米国ショッピングチャンネル最大手のHSNとの合弁により、ジュピターショップチャンネルを設立。JCOMの一つのコンテンツとしてTV通販事業もスタートしました。JCOMは徐々に番組数を増やし、放送コンテンツの製作・調達から配信までをカバーする総合メディア事業者に。また、映画製作・配給会社のアスミック・エースも住商グループに加わり、映像関連ビジネスも強化していきました。

その後は、固定電話と高速インターネット接続のサービスとのパッケージ販売などで加入者数を大きく伸長。事業開始から8年間は赤字が続いたものの、加入者数568万世帯(2024年3月時点)を誇る業界トップのCATV会社へと成長しました。

メディア・デジタル事業は、住商ならではの多様なビジネス領域との連携が強み

総合商社の現場力を生かし、広く深くバリューチェーンを構築するデジタル事業

時代の潮流に合わせて、各分野の専門技術を担う会社を設立してきたからこそ、住商のデジタル事業は価値を提供できるフィールドが多彩。グループ会社同士でタッグを組んで開発に取り組めることに加え、総合商社ならではの多岐にわたる事業との連携が大きな強みです。データを用いたマーケティングや販売促進、インターネット広告、AIの活用や顧客管理、DX推進など、ビジネスのあらゆる場面においてデジタルが不可欠なものになってきている中、求められている要件をシステムに落とし込み、さまざまなソリューションを開発しています。

そして、そのソリューションを活用して、事業部の垣根を越えて新たな事業を創造していこうという機運が、18年に社内の横串組織DXセンターを設立したことによって高まっています。本社の44のSBU(事業本部/※)、グループ会社が連携して、大きなバリューチェーンを構築していることが住商のデジタル事業の優位点の一つと言えるでしょう。

※ Strategic Business Unitの略。戦略的事業単位。住商では、戦略を一とする事業群をグループ化したものを指す。

映像関連や5Gも。JCOMを起点に多角的なサービスを展開するメディア事業

国内トップシェアを誇るJCOMを中心に、住商のメディア事業はさまざまなサービスを提供しています。例えば、コンテンツ制作事業における、映画などの配給や映像作品の制作・販売を手掛けるアスミック・エース、TV通販事業のショップチャンネル、スポーツ専門チャンネルのJ SPORTSなど。特にショップチャンネルは、CATVの普及に伴って視聴者数を伸ばし、07年度には日本のTV通販番組で初めて売上高1千億円を突破。現在はショッピング専門チャンネルとして、日本最大の売上高を誇っています。

また、JCOMや各事業会社に、住商の社員が出向などの形で参画し、現場で培った知見やノウハウを生かし、本社に戻って新たなビジネスを開発するなど好循環が数多く生まれているのも特筆すべき点です。

近年では、「ローカル5G」事業にも取り組んでいます。地域や産業の多様なニーズに応じて、自治体や企業などが「限定された地域」において「自前」で5Gの通信網を構築・運用できる「ローカル5G」。実証実験においては、CATV業界や住商グループと連携するなど、これまで培ってきたネットワークやノウハウを生かした事業を展開しています。

時代の先を見据えたメディア・デジタル事業。商社視点の特異性が生きる、新規ビジネスは?

脱炭素のビジネス課題をデジタル×高度なコンサル力で解決する「GXコンシェルジュ」

化石エネルギーをクリーンエネルギーへと転換し、社会や産業の構造を再構築しようとする、今注目のGX(グリーントランスフォーメーション)。24年3月、住商は日本発のグローバルコンサルティングファームであるアビームコンサルティングと共同で、事業会社「GXコンシェルジュ」を設立。デジタルとコンサル力の掛け合わせにより、顧客の脱炭素経営をサポートしています。

特徴の一つが、住商の既存アセットを活用したソリューション。ヒアリングの場に、現場の事情をよく知る住商の各営業担当者が同席することもあれば、顧客の課題に応じて、適切な住商グループのソリューションを提供することも可能です。また、消費エネルギーを監視するシステムの開発をSCSKが担うなど、幅広い領域をカバーする住商のデジタル事業の強みを生かしたサービスも武器になっています。

  • GXコンシェルジュ 戦略企画部

    小林明日香

    「住商とアビームコンサルティングの強みを掛け合わせ、現状把握・分析・戦略の策定から削減ソリューションの提供まで、一気通貫でお任せいただけるのがGXコンシェルジュの特長です。顧客に寄り添ってカーボンニュートラル実現等のGXをサポートしつつ、新たな価値提供につながる事業の創出にも挑戦していきます」

総合商社のネットワークを生かし、日本アニメを世界に広める「REMOW」

日本アニメの市場規模は、近年の動画配信の普及を背景に10年前の約2倍に、中でも海外市場は6倍と急拡大しています。住商は、アニメを中心とする日本の映像コンテンツのグローバル展開を手掛けるREMOW(リモウ)社に出資。25年より集英社とともにREMOW社の共同経営を通じて、映像コンテンツの流通網や、グッズ・イベント・体験型施設など映像以外のコンテンツを届ける仕組みの整備・拡充に取り組みます。

強みとなるのは、住商が築いてきた国内外のネットワーク。集英社が持つコンテンツのグローバル展開のノウハウと掛け合わせ、REMOW社を通じて各出版社の原作を映像作品として展開します。総合商社として映画・アニメ製作・配給などの映像コンテンツ事業を30年以上展開してきた知見、そして確固たる経営能力・コーポレート機能も武器に、日本コンテンツの魅力を世界に発信します。

  • メディアコンテンツユニット

    吉田奈津美

    「日本の大切な資産であるアニメ。私自身も、幼少期から触れてきた漫画・アニメには並々ならぬ情熱を抱いています。そんな日本コンテンツをもっと世界中の人に楽しんでもらうために、映像からグッズ、イベントまで、さまざまな領域での事業開発を推進中です。トレンドが目まぐるしく変化する時代においても、アニメが消費者に選ばれ続けるコンテンツとなることを目指します」

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